2015.09.17 | クリエイティブ
連日ニュースを賑わせていた佐野研二郎氏の2020年東京オリンピック・パラリンピックエンブレム盗作疑惑。今回の事件で思ったことは、結局、国民が佐野研二郎氏のエンブレムのデザインが好きじゃなかった、ということです。あのエンブレムを見た時の第一印象の”え?これが?”というネガティブな直感が全てだったのです。色の暗さ、バランスの悪さからくる不安感 、オリンピックというエネルギーあふれたスポーツの祭典をまったく表現しない自己満足のデザインに、美意識の高い日本国民が嫌悪感を持つのは当たり前です。やっと白紙撤回になり、 新デザインの再公募には大会組織委員会がオープンで公平な審査をしてくれることを心から期待します。

エンブレムやロゴはデザイナーにとって一番ハードルの高い仕事の一つだと思います。あんなに小さいくせに、意味があり、 一目でコミュニケーションできて、美しく魅力的で、飽きがこなくて、新鮮で、自然で、普遍的、大きなサイズでも小さいサイズでも、webでも印刷でもOK。。。つまり「完璧」でないとなりません。私はロゴを「小宇宙」と密かに呼んでいます。存在意味があり昔からそこにある完璧な小宇宙。これを締め切りまでに制作するのですから、そのプレッシャーたるや半端ないです。でも満足できるものが完成した時にはこれ以上の達成感はなく、 クライアントが喜んでくれてロゴが世に出た時は本当に嬉しいものです。デザイナーになって本当に良かったなと思う瞬間です。

ロゴ制作過程は、クライアントの打ち合わせ、リサーチ、ラフスケッチ、完成スケッチ、色選択とデジタルデータ制作が主な流れです。佐野研二郎氏が8月5日の釈明会見で「Pinterestを見た事はありません。」と言っていたがそれがまず嘘くさい。なぜなら商業デザイナーはロゴ制作前に必ずリサーチするからです。Pinterest以外にも、最近のロゴデザインのトレンド、クライアントの同業者のロゴ、過去の秀作、色合い、スタイル。。などありとあらゆるリサーチをする。 雑誌を見たり、とりあえず街に出てウィンドウを眺めたり。。それは模倣するものを探すためでなく、インスピレーションを得るためで、目の前にあるものを見ながら、頭の奥で自分のアイディアをまとめていく、みたいな感じだろうか。私が師と仰ぐOverture/Yahoo!時代のアートディレクター、Ken Loh氏(現 WW apple online store art director)が、「クリエイティビティーはすぐに現れるわけではなく、色々なものを見たり、聞いたり、作ったりしながら最後にやっと現れるもの。」と常々言っていた。色んな刺激を受けながら試行錯誤するのが大事なのです。

リサーチが終った後は ラフスケッチに入る。これが一番大事な過程でとにかく無心になるまで書きなぐる。佐野研二郎氏は釈明会見の時に何故これを出さなかったのだろう?ロゴ制作後に作ったアルファベット展開なんかじゃなく自筆のラフスケッチを見せるべきだった。ロゴがどんな過程を経て誕生したかの産みの苦しみを見せれば盗作疑惑も晴れるのに、とあの会見を見たデザイナー達はきっとそう考えたと思う。

ルグランのロゴは思い入れの深い大好きなロゴの一つです。イメージは、青、 大きな海原、自然、自由、波を次々と産み出す強さ、創造の源、またIT企業としてでなく 他分野のビジネスにもマッチするロゴにしようと話し合ってコンセプトを固めて行きました。こちらが漠然としたイメージからロゴが出来上がる過程です。


ラフスケッチの一部。オーガニックなライン使いにしようと決めてスケッチを始めました。何個も思うがままに描いて行きます。


ファイナルロゴ候補の一部。スケッチの段階でファイナルを選びます。

ロゴ決定

デジタルデータ製作用クリーンアップスケッチ

ファイナルロゴ

ロゴ制作は作れば作るほど奥が深く難しいです。うまく出来た時はずっと前から存在していたかのごとく自然で、見る人に好感を与えるから不思議です。

これから好きなロゴを見つけたら、なぜ良いロゴだと思うのかを考えながら見てみると面白いですよ。 オリンピックの新しいエンブレムも今度こそ素敵な作品が選ばれると良いですね。



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