2016.04.22 | UX
みなさんは、日々のお食事で「おいしい!」「楽しい!」などポジティブな感情を抱いているでしょうか? 食事をする状況はさまざまです。
ひとりでの食事、友達、家族、仕事の仲間など複数人での食事、
また、仕事や家事の合間の急ぎの食事、休日にゆっくりと時間をかけての食事・・・
人数や状況など、さまざまな食事が考えられます。
「おいしいものを食べたい」というのは、どんな人、いかなる状況でも共通して求められる気持ちではないでしょうか。

私は、5歳の子供を育てながらルグランで働いています。
今回は、食物アレルギーのある子供の話を通して、UI、UXについて考えてみました。

平成27年5月に発表された東京都 福祉保健局によると、以下の結果がわかりました。
調査対象:
 平成26年10月の3歳児健康診査受診者とその保護者

調査結果:
 ・3歳までに何らかのアレルギーの症状が有り、かつ診断されている児は約4割であった
 ・食物アレルギーは15年前の調査開始時から一貫して増加していた
 ・食物アレルギーと診断された児で出現した症状のうち、ショック症状※を経験した児も約1割であった
 ・食物アレルギー疾患を診断された児のうち、4人に1人が誤食により症状が出たことがあった
※ショック症状:本調査では、意識がない、意識もうろう、ぐったり、尿や便を漏らす、脈が触れにくい、唇やつめが青白い、のいずれかの症状を指す。

私の子供には、卵のアレルギーがあります。
完全に加熱した卵黄は食べられるようになりましたが、卵白は食べることができません。
原材料に「卵」と書かれている食品は、卵黄と卵白が含まれているため、食べることはできません。

アレルギー症状には個人差があり、皮膚に少し発疹が出てしまうような軽い症状から、命にかかわるようなショック症状まであります。
アレルギーの子供を持つ親は、外食をする時や、加工品を食べる際には、アレルギー物質が含まれていないか原材料を1つ1つチェックしています。

企業はさまざまなUIで、原材料表示を行っています。
いくつか例を挙げて、原材料表示のUIについて、説明します。

こちらは、あるお菓子の原材料表示です。
原材料名が、文字で書かれています。
さらに、原材料表示とは別に、27品目中のアレルギー物質について、まとめて書かれています(画像下部)。
原材料が多く、アレルギー物質が入っていないか、ひとつひとつチェックするのは大変な作業ですが、このようにまとめて書かれていると、間違えることもほぼなく、見やすい優れたUIだと思います。
アレルギーを持つ子供が多くなってきたせいか、このように表示されている食品も多く見かけます。


こちらも、お菓子の原材料表示です。


アレルゲンがイラストと文字で書かれており、文字が読める大人にとっては、わかりやすいUIです。
しかし、文字が読めない子供にとっては、イラストのみで判断することになり、正しく理解することができない可能性があります。
実際に、私の子供は、このイラストの大豆が卵に見えたようで、
「このお菓子は、卵が入っているから食べられない」と言っていました。
優れたUIでなかったことにより誤解が発生してしまいました。

ここで一番怖いのは、
「食べられないものを、食べられる」と判断して、食べてしまった場合(誤食)です。
冒頭でもお話しましたが、アレルギーは命にかかわるほどの重大な症状が出てしまうこともあります。

「食べられるものを食べられない」と判断した場合も、からだに症状こそ出ないものの、
「楽しい!」「おいしい!」という良いUXを得ることができず、とても残念な思いをします。
子供にとって、友達と一緒に、おやつの時間を過ごすことは、最高のUXのひとつです。

他にも、様々なUIで原材料表示がされています。
以下のように、表形式になっているものは、読み間違えることもほぼなく、とてもわかりやすい良いUIです。


現状は、原材料が、文字の羅列のみで表示されているものが多く、読み間違え、読み落としによる誤食を防ぐため、2回3回と繰り返しチェックしています。
上述した東京都福祉保健局の調査では、「4人に1人が誤食により症状が出たことがある」との結果が出ています。
アレルギー表示のUIが、UXの視点で考えられていないことがよくわかる結果であると思います。

アレルギーのある人も、安心して外食したり、加工品を食べたりできる世の中になることを願っています。
そのためには、アレルギーへの理解が深まり、食品の原材料表示に対する優れたUIが不可欠だと考えます。

「おいしい!」「楽しい!」という良いUX体験をすべての人に!

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2016.04.07 | UX
桜舞う季節、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

<オフィスビルエントランスの桜>

さて、ルグランにいらした方はご存じかと思いますが、ルグランでは来賓のおもてなしに夏は冷茶、肌寒い時期はコーヒーをお出ししています。
いらした方の中には、席についてほっと一息つかれる事もあるのではないでしょうか。
今回は、そんな美味しいコーヒーを淹れてくれるルグランのスタッフの方をご紹介します。
ルグランの主婦スタッフの方々は経歴も様々。

Mさんは、元大手企業のシステムエンジニア。5歳のお子さんを育てながら、データの解析や調査など幅広く活躍されています。

Yさんは、テレビの制作現場で活躍された後、今は子育てを本業にしながらもその知識や経験からルグラン主催のイベント等でスタッフを支えてくれています。

Mさんは、大手鉄道グループ会社の元アテンダント。
お二人のお子さんを育てられながら、その接客能力をルグランのセミナーや来賓時の対応に生かされています。

なぜ、勤務時間が限られている主婦スタッフと社員が見事にひとつのチームとなり仕事を成立させる事ができるのか?

それは、それぞれの事情に合わせる事ができるルグランの勤務体制の柔軟性に秘訣があります。
ルグランでは各自のワークスタイルに合わせ、メールや社内共有ツール、テレビ会議で密にコミュニケーションをとり、在宅勤務をメインとするスタッフや週の半々を出社と在宅を組み合わせた勤務体系を選択する等、柔軟なワークスタイルを確立し、ライフスタイルにあわせた就業体制を整え、働きやすい環境を提供すべく力を注いでいます。つまりは、主婦がパートで働くためのUX(ユーザーエクスペリエンス)を考え、それを実現するための環境を整えているからなのです。

待機児童問題に対して、政府がいろいろと対策を考えているようですが、子育てと仕事を両立したいと考えている人達の事情を把握し、より良いエクスペリエンスを実現するための仕組みが作れなければ、問題の解決にはならないような気がします。

ルグランでは、スタッフ一同、クライアントの企業価値を高める事を目的として最良のサービスを提供すべく日々邁進しています。また、一緒に働いてくれるスタッフを常時募集しています。仕事も子育ても両方頑張りたいと思っている方、ぜひ、ご応募ください。

http://www.shufu-job.jp/kyujin/71353/

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2016.03.24 | UX
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックは世界的な祭典ということもあり、世界中から多くの観光客が日本に来ることが予測されています。


北米旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー誌」の読者アンケートでは、京都がフローレンスやローマを抑え、人気観光地ランキング1位に選ばれ、また、2014年には年間観光客数が過去最高の5,564万人を記録(京都観光総合調査)するなど、京都人気の勢いは止まらない様子です。この背景には京都が世界で影響力の強いトラベル・アンド・レジャー誌に2年連続で掲載されたことはもちろんのこと、京都が海外から訪れた旅行者等の期待通り、あるいは、期待以上の場所であったと言えるのではないでしょうか。

京都人気に拍車がかかる中、京都以外にも日本には素晴らしい場所が沢山あるが、実際に人気観光地として取り上げられないのは何故でしょうか。

その一つには、海外向けに作成された観光動画のコンテンツの多くは京都、大阪、東京などの主要な観光地をメインにしたものばかりであること。また、海外の人達が何を求めて日本を訪れているのか充分に理解せずに、誤った情報を発信しているのではないでしょうか?
日本政府観光局のデータによると、中国などアジアを中心に訪日ブームが続いていることから、2015年の訪日外客数は前の年から大幅に増加しているとのこと。一見すると日本のインバウンドには明るいように見えますが、中国からの海外旅行者に占める日本のシェアは4%前後。ベイン・カンパニー・ジャパンがまとめた記事によると(日経MJ3月9日付)
海外へ旅行に出掛ける中国人の9割以上は日本以外の国や地域を選んでいて、必ずしも海外の旅行者にとって日本は魅力的に映っていないことがわかります。

また、トラベル・アンド・レジャーのブログ記事には、世界各国を旅行しているトラベラーの多くは、訪れる場所に受け継がれている歴史を理解し、まだあまり知られていないその土地の良さを発見したいという気持ちを強くもっていると書かれています。日本に来る観光客の多くは、ありのままの日本を知り、新たな発見をしたいと思いを持っているといった内容の記事もあり、アニメやエンターテーメントを求めに日本に来るといった内容のブログは見当りません。

今、海外観光客の中で日本人でもあまり行かなくなった「銭湯」が密かに人気のスポットになっているそうです。その理由としては、銭湯は、素朴な日本の良さ、リアルな日本を感じられる場所だからだと思います。

実際に「augment5 Inc」が作成した動画の海外からの反応はというと、「Delightful. Well done!」、「Beautiful...amazing Japan.」といった称賛するコメントが多く、外国人観光客がありのままの日本を知りたがっていることがわかります。

 
2015.07.23 | UX
最近は、日本でも、ウェブサイトやアプリのデザイン・機能を考える際に『UX(User Experience)が大事』といったことが(少しずつですが)言われるようになってきました。

とはいえ、多くの日本企業では、まだまだ、UXがビジネス戦略上の主要課題とは位置付けられていないのが現実です。ちなみに、弊社LAデザインセンターでUX戦略を統括する堀内が、現在LAで携わっているプロジェクトでは、サービス・アプリの開発にあたって、10数名のUXデザイナーが採用されています。

このため、UXという言葉自体に、まだ馴染みが薄いという方も多いと思いますが、ご参考までに、様々な国際規格を定めるISOによるUXの定義をご紹介します。

“a person’s perceptions and responses that result from the use of a product, system or service”

日本語にすると、

「製品やシステム・サービスの利用に伴って得られる一連の体験」

といった感じでしょうか。

つまり、見方を変えると、みなさんがUXを考えるヒントは町中にいくらでも転がっていると言えます。ここで、1枚の写真をご覧下さい。

<デリー国際空港のトイレ>

この写真は、インドに旅行した私の友人がFacebookに上げていたものを拝借したものですが、この友人は、実際、このトイレの入口に立った瞬間、どちらが女性用トイレなのかが分からず、無意識に「よくある男女のマーク」を探してしまった、とコメントをしていました。

そう、この『無意識に』というところが、UXを考える上では非常に重要なポイントなのです。

特にウェブサイトやアプリの世界では、ちょっとでもユーザーを迷わせたり、考えさせたりすると、本来の重要なタスク(製品の購入や資料請求など)に集中できず、ストレスを感じたユーザーはあっという間に離脱してしまいます。

時にデザイナーは、誰もやったことのない斬新なアイディアを試したくなる誘惑にかられますが、せっかくのアイディアも、多くのユーザーの経験にもとづく期待や予測から大きくずれてしまうと、それは「わかりにくさ」というストレスの原因になってしまいます。

ここで、トイレの事例をもう一つ。これは、先日入った原宿にあるカフェのトイレです。

<あるカフェのトイレ>

洗面台と鏡。その横にある白い扉。多くの来店客は、それまでの経験から、無意識のうちに、ここがトイレだと思うのでしょう。ところが、この扉の向こうはなんと厨房なのです。

でも、トイレと勘違いして厨房の扉を開けようとする人が多いのでしょう。たまりかねたお店の人は「ここはトイレではありません。」というメッセージを貼ったのだと思いますが、それくらい、この内装には、多くの人に無意識のうちに、ここがトイレだと錯覚させる力がある、ということなのでしょう。

さて、みなさんのウェブサイトやアプリは、ユーザーを迷わせたり、考えさせたりしていませんか?気になる方は、ぜひ、ルグランが診断のお手伝いをしますので、お気軽にご相談下さい。

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メール:info@LeGrand.jp
電話:0120-066-898(フリーダイヤル)

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2015.05.28 | UX
なんて疑問、いまだに持っている人も少なくないのではないでしょうか?

「UX」という言葉は、特にここ数年ではいわゆるバズワード(業界専門的流行語)みたいになってるのかも知れません。実際に、デザイナーの肩書きの前に「UX」と付けただけの、自称UXデザイナーという人は、こちらでも多くいます。

確かにデザインシンキングの過程において、どこからどこまでがUXであるとか、その明確なラインは見えにくいのかも知れません。従って、デジタルデザインに関わるデザイナーは、UXも”できます”的になるのかもしれませんね。言い換えれば、シニアレベルのデザイナーであれば、誰でもUXを視野に入れてデザイン作業していることは間違いありません。

それでは、そもそも何故この「UX」は、バズワードになったのでしょうか?

もちろん、その理由は一様ではないと思いますが、下のイラストに、その背景、つまり「UX」が台頭してきたひとつの理由があるのではないかと考えます。このイラスト、実はかれこれもう10年ほど前に作られたもので、ひとつの典型的なプロジェクトをそれぞれ担当者の視点から面白可笑しく捉えてみたコミックです。もう少し新しいバージョンのモノもあるのですが、ここではオリジナルの簡素版を例に挙げて説明してみたいと思います。


 各イラストを上・下段、それぞれ左から説明すると:

1:どのようにお客様が説明したか。
2:どのようにプロジェクトリーダーが理解したか。
3:どのようにアナリストがデザインしたか。
4:どのようにプログラマーがコーディングしたか。
5:どのようにビジネスコンサルタントが説明したか。
6:どのようにプロジェクトがドキュメントされたか。
7:どのオペレーションがインストールされたか。
8:どのようにお客様が請求されたか。
9:どのようにサポートがなされたか。
10:実際、どのようなモノをお客様が望んでいたか。

と、なってます。

デジタルデザイン業界に携わっている人であれば、ちょっと苦笑いしてしまうのではないでしょうか。

確かに10年以上前には、クライアント、プロデューサー、ディレクター、デザイナー、プログラマー、コンサルタントが集まり、その叡智を結集させてプロジェクトを進行させ、ようやくプロダクトローンチまで辿り着いたにもかかわらず、その数ヶ月後には、もうすでにリデザインの新規プロジェクトの話が立ち上がっている…といったようなプロジェクトが、こちらでもかなり沢山あったようです。

そこで、いわゆるUXデザイナーが携わる様々なワークフローと、そこから造られる仕様書が重宝され始めたのです。競合分析などのリサーチから始まり、コンテンツモデル、エクスペリエンスマップ、メンタルモデル、ペルソナ、プロセスダイアグラム、シナリオマップ、タスクフロー、サイトマップ、ユーザビリティーテスト&レポート、ワイヤーフレーム、スタイルガイド、ユーザージャーニー、そしてプロトタイプ等々。

まずは何を実現したいのかという情報収集をしっかりとして、それに基づいたUXプロセスを着実に取り入れてプロダクトのゴールを定める。そして、各担当者の共通理解を得ながらそのゴールに向ってプロジェクトを進行させれば、そう、こんなイラストの結果にはならないハズですよね。

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