2016.01.28 | UX
1月23日に慶應義塾大学・日吉キャンパスで、サービスデザイン・ジャパン・カンファレンス 2016というイベントが開催されました。

<Service Design Japan Conference 2016>

このイベントを主催している
サービスデザインネットワーク(SDN)という団体は、サービスデザインに関わるプロフェッショナルや研究者たちが集まるグローバルな組織で、日本においても2013年から、サービスデザイン・ジャパン・カンファレンスというイベントを開催しています。

冒頭の基調講演に登壇したのは、SDN本部の代表メンバーでもある、米国のサービスデザイン・エージェンシー Adaptive Path社のJamie Hegeman氏。

<Adaptive Path社のJamie Hegeman氏>

Hegeman氏は、サービスデザインの検討・設計にあたり、『利用者のエクスペリエンス(いわゆるカスタマーエクスペリエンス)』だけを考えるのでは不充分だと指摘します。

サービスが利用・提供されるためには、『利用者』に加えて、サービスを提供する側の『現場のスタッフ』さらには『経営層』の存在も不可欠であり、これら3つのステークホルダーが、全て満足するようなエクスペリエンスを提供できるかどうかが、サービスデザインを考える上で、大変重要だとHegeman氏は強調します。

一方で、これらのステークホルダーは、通常、エクスペリエンスデザイン(XD)の専門家ではないため、サービスデザインの現場では、常に、「デザイナー」と「非デザイナー」との間に生ずる様々なギャップや軋轢をどう解消するかが大きな課題となります。

このため、デザイナー側には、非デザイナーであるステークホルダーに対して、何かを「伝える」「教える」という姿勢よりも、かれらを「巻き込む」ための工夫が求められます。(Hegeman氏は、これを”Embed”という言葉で表現していました。)

その際に重要となるのは、「デザイナー」と「非デザイナー」がスムーズに会話できるための共通の言語を持つことです。

そこで役に立つのが”Experience Map” や”Blueprint”といったツールです。こうしたツールを使うことで、サービスの利用にまつわる利用者・提供者側の体験を、言葉や概念だけでなく、ビジュアルなイメージとしても共有できるようになるので、サービスデザインの専門家ではないステークホルダーの人たちも、積極的に議論に参加することができるようになります。

ルグランでも、ウェブサイトの制作・リニューアルや、モバイルアプリの開発にあたっては、”Experience Map”などのツールを使い、まずは、クライアントや利用者の方々と一緒に、利用者・提供者それぞれの立場からみたエクスペリエンスを、1つのストーリーとして視覚化していくというプロセスを大切にしています。

サービスの利用者や提供者が、どこで不満やストレスを感じているかが見えてくると、ウェブサイトやモバイルアプリのエクスペリエンスをどのようにデザインするべきかが、おのずと見えてきます。クライアントに対してエクスペリエンスデザインを支援するという、同じ立場で仕事をする今回のHegeman氏の講演は、多くの示唆に富むものでした。

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2016.01.14 | UX
さて、ここからはUXランキング(航空会社編)で評価対象となった航空会社8社について、それぞれ、ルグラン・LAデザインセンターのメンバーによる、評価のポイントや改善点について解説をしていきます。

まずは、8社の中で、最高の評価を獲得したジェットスタージャパンについて解説を始める前に、このランキングの評価基準と配点について、簡単にご説明をしておきます。

<UXランキングの評価基準と配点について>

ルグランでは、ウェブサイトの使い勝手を評価する上で、以下の5つの評価基準を設け、合計100点満点で、各社のサイトを採点・評価をしています。

(1) Accessibility: サイトの読込速度やテキストの読みやすさなど(9点)
(2) Identity: 会社やブランドロゴの使い方、サイトの概要や目的の分かりやすさ(15点)
(3) Navigation: ボタンやリンクの配置や動線設計の分かりやすさ(15点)
(4) Contents: 重要なコンテンツの配置やコピー・色合いの適切さ(18点)
(5) Task-Oriented: 設定された課題の解決をサポートする使いやすさ(43点 → 内、モバイル対応評価分が28点)

これらの基準をもとに、ジェットスタージャパンのサイトが、どのような理由で最高の評価を得たのか、そのポイントを見ていきましょう。

入力フォーム等のインフォメーションアーキテクチャー面には、多少の戸惑いを覚える部分がありましたが、ブランドメッセージの表示は明確で一貫性があり、更には、操作性の良い検索機能など、全体的なユーザビリティー面が高い評価につながりました。

例えば、LCCと呼ばれる格安航空会社の場合、利用する便の日時の選択によって料金が大きく変わることがありますが、ジェットスターのウェブサイトでは、選択した日だけでなく、その前後の旅程の運賃も一覧で見せることで、利用者が「賢い選択」をできるよう手助けをしています。

<おトクな運賃を簡単に選択できるようサポート>

更に、LCCでは、預入荷物の有無や変更の可否など、細かな条件によっても、料金が変わってきますが、ジェットスターのウェブサイトでは、「この料金では何ができる(できない)のか」を分かりやすく表示することで、利用者の誤解や混乱を最小限に留める工夫も見られます。

<料金プラン毎に含まれるサービスを分かりやすく表示>

一方で、サイトのデザインには、少し古くささも感じますが、他社にはないチャットサービスが用意され、また、モバイルサイトのUX/UIについては、全体的にレベルの低い日本の航空業界の中では、最もモバイルに最適化されている点も、相対的に高い評価を得る結果につながりました。

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2016.01.14 | UX
本ブログでも繰り返し書いている通り、本当の「おもてなし」を実現するには「どうすれば最良のユーザーエクスペリエンスを提供できるのか?」を考え続けることが大切です。

そのためには、普段から、みなさん自身が、自社のウェブやアプリ、あるいはサービスの使い勝手を、ユーザーの視点に立って考えてみるという能力、すなわち『ユーザーエクスペリエンス脳(UX脳)』を鍛えておくことが必要です。

といっても、そんなに難しいことではありません。UX脳を鍛えるための材料は、みなさんの身の回りにたくさん転がっています。

ルグランでは、2020年のオリンピックに向けて、日本を訪れる外国人旅行者に対し、最良のユーザーエクスペリエンスを提供するための手法や戦略を考える、というプロジェクトのお手伝いをする機会も増えていますが、そこで求められるのは、日本を知らない外国人旅行者の視点に立てるかどうか、ということです。

たとえば、この写真は、羽田空港の国際線到着ロビーで撮影したものですが、この写真を見て、みなさんは何を感じるでしょうか?

<羽田空港・国際線到着ロビー>

この先、左側にはモノレール、右側には京急線の改札があるのですが、東京近辺の鉄道事情に詳しい人なら、何の違和感も感じないかもしれません。しかし、初めて日本を訪れる外国人旅行客の立場になって考えてみたらどうでしょう?

確かに”Monorail”と、「英訳」はされていますが、羽田空港に降り立った外国人旅行客にとって、「一本のレールの上に乗って走る電車はこちら」という情報に、どんな意味があるのでしょうか?彼らが知りたいことは、自分の行きたい場所に向かうには、モノレールと京急線のどちらに乗れば良いの?ということでしょう。(実際、この看板の下には案内係の人が立っていて、聞いていると、多くの外国人が、○○に行くには、どの電車に乗れば良いのか?という質問をしていました。) 

このように、一見、当たり前と思えることでも、一歩下がって、ユーザー視点で見直してみると、より良いエクスペリエンスを考えるヒントが色々と見えてくるものです。

みなさんも、ぜひ、今日の帰り道から、ユーザーエクスペリエンスを考える「脳トレ」を始めてみて下さい。本ブログでは、これからも「UX脳トレ」のヒントを、随時、ご紹介していきたいと思います。

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2016.01.07 | UX
みなさん、あけましておめでとうございます。

昨年末に配信した「クリスマスニュースレター」では、「2016年はエクスペリエンスデザイン元年」というテーマで、ウェブサイトやモバイルアプリ、更にはサービスそのもののデザインを考える上で、「どうすればより良いユーザーエクスペリエンスが提供できるのか?」という視点、つまり「エクペリエンスデザイン(XD)」という考え方が、大変重要になってくる、というお話をしました。

ルグランでは、このXDの重要性を、多くの方に、できるだけ具体的に理解をしてもらうことを目的に、毎年、いくつかの業種・業界を選び、ユーザーエクスペリエンスという視点から、ウェブサイトを評価する「UXランキング」を発表しています。

アドテック東京のルグランルーム、およびアドテック関西のルグランブースにご来場頂いた方々には、既に先行して公開しておりますが、昨年は、航空業界とメガネ業界について、UXランキングを実施しました。

そこで、本ブログでは、これらのUXランキングの内容、および各社のウェブサイトに対する評価のポイントや改善点について、順次、ご案内していきます。今後、みなさんがユーザーエクスペリエンスを中心に据えたデザインを考えていく上で、何か参考にして頂ければ幸いです。(もちろん、最良のユーザーエクスペリエンスを実現するための方法を、ルグランも一緒に考えて欲しい、というご相談も大歓迎です!)

今回は、航空業界各社のウェブサイトに関するランキングを発表します。

<航空業界各社のUXランキング>

ちなみに、ユーザービリティ調査などを実施する場合にも言えることですが、ユーザーエクスペリエンスという切り口でウェブサイトを評価する場合、サイトの見た目にばかりに注目しても意味がありません。大切なことは、評価の基準となる「タスク」を明確に設定するということです。

つまり、「そのウェブサイトで来訪者に何をさせるのか?」というタスクを明確に設定した上で、個々のウェブサイトは、来訪者に対して、適切なユーザーエクスペリエンスを提供できているかどうか、という視点で評価を行います。

航空各社のウェブサイトの評価にあたっては、「特に利用頻度が高いと思われるビジネスユーザーを主たるターゲットと考え、PCもしくはモバイルサイトから、経路や運賃・運行状況といった情報を確認したり、実際にチケットの予約や購入を行ったりする」というタスクに対し、各社のウェブサイトが、どういったユーザーエクスペリエンスを提供できているか、という観点から評価を行いました。

なお、本評価は、ルグラン・LAデザインセンターのメンバーが中心となり、2015年9月に実施したものですが、その後、各社のウェブサイトには、改修・改良が加えられたものもありますので、その点は予めご了承下さい。

<ランキング(評点※)>
※100点満点
1. ジェットスタージャパン 76点
2. 日本航空(JAL) 73点
3. 全日本空輸(ANA) 65点
4. スカイマーク 57点
5. バニラ・エア 51点
6. エアアジアジャパン 50点
7. ピーチアビエーション 47点
8. 春秋航空日本 40点

次回からは、各社のウェブサイトに対する評価の内容について、個別にご紹介をしていきますので、どうぞお楽しみに。

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2015.12.24 | UX
日本でも、『ユーザーエクスペリエンス(UX)』という言葉を耳にする機会が増えてきました。

ウェブサイトやモバイルアプリなどを制作・開発する際に、ユーザー目線で考えようという流れが生まれつつあることは、決して悪いことではありません。

しかし、制作・開発の現場を見ていると、まだまだ、見た目のデザインなど、いわゆる『ユーザーインターフェイス(UI)』に関心が集中しており、『エクスペリエンスデザイン(XD)』という域には達していないケースが多いように感じています。

もちろん、使いやすいサイトやアプリを作るには、ユーザーとのタッチポイントをつかさどるUIの設計は非常に重要です。しかし、UXとは「そのサイトやアプリを使って、何かのタスクを行おうとする際の、一連の行為から得られる体験」を指します。従って、よく考えられたUIは、最良のUXを提供するための必要条件ではありますが、充分条件とは言えません。

最近、成田空港を利用する機会がありましたので、試しに空港が提供しているアプリの案内機能を使ってみました。

日本に来た観光客が、ちょっとお腹が空いたので、バゲージクレームで荷物を待つ間に、空港内で食事のできるレストランを探しているという想定で、行き先を指定し、ナビ機能を選択したところ、このような画面が。

<成田空港アプリのナビ画面>

この矢印に従って歩けば、目的のレストランに辿りつけるということなのですが、片手でスーツケースを乗せたカートを押しながら、もう一つの手で、税関で見せるパスポートと一緒に持ったスマートフォンをかざして歩くのは、力のある男性でもちょっと大変です。そもそも、混雑した空港の中での「ながらスマホ」は、かなり危なっかしい感じです。

しかも、現在地を特定するには、成田空港のFree WiFiに接続しないといけないのですが、接続するには、利用規約を読んで同意ボタンを押すというプロセスが必要です。そして、苦労の末に、ようやく行きついた「レストラン」は、実はスタンド形式の売店で、座って食事をすることはできないという有様です。

もうおわかりになったと思いますが、UIを工夫することで「ナビゲーションの画面をどう分かりやすく見せるか」という問題は解決できます。しかし、「成田に着いた外国人観光客が、食事のできるレストランを探し、そこまで簡単に行けるようにするためには何が必要か」という視点から、全体のエクスペリエンスをデザインしない限り、いくらUIばかりを考えても、このアプリで最良のUXを提供することはできないのです。

2020年の東京オリンピックをひかえ、ルグランにも、訪日旅行客をターゲットにしたウェブサイトやアプリ、サービスの設計に関するご相談が増えています。

ただ、お話を聞いていると、ウェブやアプリの表示を多言語化する、といった見た目にばかり関心が向いていることも少なくありません。ルグランでは、クライアントさんと一緒に「エクスペリエンスマップ」を作成し、まずは、文化も常識も違う人たちが、どういう状況で、何を期待して、ウェブやアプリを利用するのかを深く掘り下げてみる、という作業から始めることをお薦めしています。

年が明ければ、オリンピックまであと4年。ルグランでは、2016年を「エクスペリエンスデザイン(XD)元年」と位置付け、最良のエクスペリエンスを提供するウェブサイトやアプリ、サービスを、1つでも多く、世に送り出すお手伝いができるよう、来年も全速で走り続けたいと思います!

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