2016.02.18 | ビッグデータ
宿敵・韓国を相手に劇的な逆転勝利を収め、リオ五輪・アジア代表最終予選を制した23 歳以下のサッカー日本代表。先日行われた深夜の熱戦を、固唾を飲んで見守った方も多いのではないでしょうか。

サッカーへの関心を高め、選手層の拡大という点でも、日本のサッカーのレベルアップに貢献したと言われるJリーグの発足から14年目を迎える今年。子供達の間では、野球よりもサッカーの人気が高く、少年野球チームのメンバーが集まらなくて困っている、といった話も聞かれます。

一方、プロに目を向けると、ここ数年、1試合あたりの観客動員数を順調に伸ばしているプロ野球に比べ、Jリーグは、興行的にはやや苦戦しているように思えます。

<Jリーグとプロ野球の1試合観客動員数の推移>

ちなみに、年間の総試合数は、Jリーグの306試合に対し、プロ野球は858試合(いずれも2015年)と2倍以上の開きがありますが、Jリーグ・プロ野球、それぞれについて、1試合あたりのブログやTwitter への書き込みの回数を見ると、ブログは232回 vs.229回、Twitterは、399回 vs.313回と、いずれもJリーグがプロ野球を若干ですが上回っています。(ホットリンククチコミ@係長のデータから。なお、Twitterについては、1/10のサンプリング調査。)

こうしたクチコミデータを見る限り、Jリーグへの関心が、プロ野球に比べて著しく低いとは思えないのですが、誰が、どこでブログの書き込みをしたのかをもう少し詳細に調べてみると、両者の差が少しずつ見えてきます。

<地域別ブログ書込数の比較>

Jリーグは、地域密着を掲げ、プロ野球よりも広く全国に根を張っているイメージがありますが、一方で、ブログの書込数を地域別に見てみると、Jリーグについては、関東地方からの書込が全体の約47%を占めており、プロ野球(約42%)よりも、Jリーグの方が、都市への集中傾向が高いという結果が出ています。

また、一見すると、Jリーグの方が選手のファッションや髪型も自由・多彩で、女性からの人気も高そうな気がしますが、実際には、下図の通り、プロ野球の方が、女性による書き込みの割合は高くなっています。

<男女別ブログ書込数の比較>

これらの結果は何を意味するのでしょうか?

確かにJリーグのチームは、プロ野球チームのない府県にも、多数本拠を構えていますが、プロ野球でも、球団買収を機に、本拠地を福岡に移した当時のダイエーホークスが、地域に根を張るため、様々な営業努力を重ねたと言われています。

また、楽天や日本ハムも、それまでプロ野球チームの無かった東北や北海道に本拠地を構えましたが、それだけではなく、メジャーリーグでも活躍できるような有力選手を獲得し、ついにはリーグ優勝も果たすなど、人気・実力を兼ね備えた球団への成長する中で、地域球団としても存在感を増していきました。

また、プロ野球観戦といえば、おじさんの専売特許というイメージがありますが、一昨年は「カープ女子」という言葉も流行るなど、球場に足を運ぶ女性も増えているようです。これも、積極的なグッズの販売や、広島への観戦ツアーを企画するなど、球団側の努力と工夫の結果と考えられています。

こうしてみると、Jリーグ活性化のヒントも『地方化』と『女性』にあると言えそうですが、その実現には、チームの人気・実力を高めるための、いわば「商品開発」と、チームへの関心や注目を高めるための「プロモーション」という、マーケティングの努力が不可欠だと言えそうです。

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2016.02.12 | UX
UX ランキング(航空会社編)の個別ランキング解説。1位のジェットスタージャパンに続いて、2位にランクインしたのは日本航空(JAL)。

JAL のウェブサイトは、昨年、ビジュアルを重視したデザインにリニューアルされ、従来に比べ、洗練された印象を与える作りになっています。

<JAL ウェブサイトのトップページ(PC・モバイル)>

ただ、特にPC サイトにおいては、フライトを選択する情報画面の表示が小さい など、システム上の制約などもあるかもしれませんが、フライトの選択~予約に関連する画面に入ると、引き続き、「古さ」を感じさせるデザイン・レイアウトが残っています。

<JAL国際線・国内線のフライト選択画面>

比較のために、航空会社のウェブサイトの中では、高いユーザーエクスペリエンスを提供しているという評価を得ている、キャセイパシフィック航空やシンガポール航空のウェブサイトを見てみましょう。

<キャセイパシフィック・シンガポール航空の場合>

たとえば、キャセイパシフィック航空のウェブサイトでは、出発日と帰国日の 組合せを示し、どの日程なら最安値の運賃で利用できるかを分かりやすく表示 しています。一方、シンガポール航空のウェブサイトでは、スマートフォンや タブレット端末での閲覧を意識し、縦長にスクロールされる画面構成になっていますが、それによって情報の視認性が損なわれないよう、PC で閲覧すると、 選択されているフライトがポップアップで表示された状態で、画面下部にスク ロールできるようにしているといった工夫も見られます。

一方、JALのウェブサイトも、モバイル端末での閲覧に対しては、適度に最適 化されており、今回調査対象とした航空会社8社においては、全体的にモバイル対応が遅れていた航空会社が多かったという事情もありますが、ジェットスター同様、相対的に高い評価を獲得する一因となりました。

また、JALでは、モバイルアプリもリニューアルされており、羽田空港の国内線ターミナルでは、保安検査場の空いているレーンを確認したり、飛行中に富 士山がどちらの方向に見えるかといった機能が搭載されたりと、空港でのチェックインから飛行中まで、旅行全体を通じて、「JALを選んで良かった」と思わせるようなユーザーエクスペリエンスを提供しようという姿勢が見て取れます。

<新装されたJAL のモバイルアプリ>

ただ、モバイルアプリで紹介されている機能の中には、クリックするとスマホ サイトのページに誘導されるものも含まれていたり、また、複数の「公式」ア プリが乱立していて、Apple Watch と連携して搭乗時刻の通知を受け取るには 別のアプリのインストールが必要だったりという分かりにくさもあります。

今後、モバイルサイト+複数の「公式」アプリを使って、利用者にどのようなユーザーエクスペリエンスを提供するのかという点についは、今後、整理・統合が必要になるかもしれません。


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2016.02.12 | ソーシャル
Pinterestという言葉を聞いたことがあるだろうか。ルグランでは3年程前にセミナーで取り上げた、このアプリケーションは、自分の気に入った写真やデザインなど、興味ある画像をブックマークし、ジャンル別に分かれているボードに「ピン」をしていくサービスである。同じようなアプリである、InstagramやFacebookとこのアプリの異なるところは、前者が自分の行ったところ、食べたもの、あった出来事など過去の出来事を軸にして投稿しているのに対し、後者は興味のあること、行ってみたい場所、食べたい場所、のように未来を軸にしてそのために必要な要素を取り入れていく、言うならば「未来のための資料集め」として使われるサービスである。

(画像参照:Pinterest


2015年9月の時点で、Pinterest利用者は1億人を超えたことが発表された。さらに2015年度の総利益は1億7000万ドルであり、2018年度までに2億8000万ドルにまで伸びると予測されている。アプリの特徴としてユーザーの多くは女性であり、アメリカでは18-54歳までの50%以上の女性がPinterestに登録、その中でも特に高学歴、高収入の女性が使っているとされる。さらに多くの新規ユーザーを獲得しようとPinterestはアメリカ国外にも目を向けイギリス、日本、フランス、ドイツ、ブラジルなどに期待を寄せている。

このPinterest、ユーザーを増やしているのと同様に、企業側からの広告利用も高まっている。昨年、企業側が「ピン」をプロモートできる「Promoted Pins」を打ち出して以来、多くの企業がこれを利用しアドバタイジングをしている。ユーザーが「ピン」する画像は、最終的にはユーザーが本当に買いたいものに繋がり、企業側はPinterestを通して、ユーザーのデータを集めることもでき、マーケティングツールとしてこのアプリが使われているのである。

(画像参照:Pinterest 広告

さらに新機能がこのサービスに追い風を吹かせている。例えば「Cinematic Pins.」 これは、ビデオベースの広告だが、利用者がスクロールしている時だけそのビデオが再生されるというものだ。そして2015年6月以降、更に画像をピンするだけではなく、「Buyable Pins」と呼ばれる、ユーザーがPinterestから直接買い物ができるサービスが追加され、ネットショッピングに興味のある女性ユーザーの利用率が今後高まっていくことが予想される。また、その売り上げ利益は100%メーカー側へと流れるという仕組みになっていることから、Pinterestを利用していく企業は増えていくと言われている。

(画像参照:Buyable Pins

では日本におけるPinterestの状況はどうだろうか。Pinterest Japanは2013年11月に日本語のサービスをスタートさせている。Pinterest Japan社長によると、この1年での利用者は順調に増えており、「立ち上げフェーズとしては十分満足できる結果」とコメントしている。
しかし、周りを見てみるとPinterestの認知度はまだまだ低いように感じる。私が通う青山学院の友人達に、Pinterestを知っているかと聞いても、名前は聞いたことがあるがそれ以上はよく分からないという意見が圧倒的に多い。18-54歳までの50%以上の女性がPinterestに登録しているアメリカと比較すると、日本ではこのようなソーシャルメディアに敏感な若年層からの支持が低い。学生の使っているソーシャルメディアの種類と比率を見ると、アカウントを保有しているSNSのうち最も多いものが「Line」で90%その次に多いものが「Twitter」で73%。そして次に「Facebook」は58%と続く。しかしPinterestの名前は確認することが出来ない。
ではなぜ若年層の使用度が低いのだろうか。日本市場における認知度の低さもあるが、Pinterestが保有している情報量の多さが障害となっているのではないだろうか。TwitterやFacebookなどは、友人や知人、また特定のアカウントをフォローしその近況を知るだけであり、情報量は限定されている。一方Pinterestは、自分の興味のあるカテゴリーに無限に存在する情報を自分で抜き取っていく必要があり、多くの情報が氾濫している環境に恒常的にいる学生にとって、この情報の取捨選択は疲れを感じさせる。私自身、使い始めた時は、たくさんある画像にワクワクを感じることが出来たが、だんだんと画像の種類や似たような写真の多さに疲れを覚えてしまった。
さらに使いこなしてしまえばPinterestは簡単なのだが、登録から、写真を自分のボードに「ピン」し、また自分が写真を投稿することになれるまでに若干の複雑さを伴う。学生の利用者の高いSNSで「Twitter」が人気なのは、その手軽さに比重が置かれているからではないだろうか。
しかしPinterestを利用していると、多くのことに気づくことが出来る。たとえ自分の興味のある画像を集めていたとしても、そこからさらに派生して見つかる写真から、これって今まで興味なかったがよく見るとおもしろそうだな。世の中のサービスやプロダクトとしてこんなのもあるのだ!と気づきを得ることが出来き、ユーザーの興味の拡大と共に企業のサービス認知を向上させることが出来る。

使いこなせば、企業とユーザー、両方にメリットがあるこのアプリケーション。アメリカのように市場を拡大するためには、日本女性にPinterestの魅力を伝える戦略が今後必要になってくるのではないでしょうか?


「数値・データ引用元」
With 100M users, Pinterest’s ‘promoted pins’ just became a lot more attractive to advertisers
Leaked Pinterest Documents Show Revenue, Growth Forecasts
【大学生のSNS活用調査】

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2016.02.04 | UX
前回のブログでは、サービスデザイン・ジャパン・カンファレンス2016に登壇したAdaptive Path 社Jamie Hegeman 氏の基調講演の概要をご紹介しました。 Hegeman 氏は、社外のデザインエージェンシーという立場で、クライアントの サービスデザインをサポートしているのに対し、続いて登壇したKatrine Rau氏は、GE の工業用・産業用製品部門で、IoT 関連サービスを企画・設計すると いう立場から、サービスデザインという考え方を、社内で具現化し、定着させていくためのプロセスやチャレンジについて話をしました。

<GE でサービスデザインを担当するKatrine Rau 氏>

立場の違いこそあれ、Rau 氏も、GE に所属する様々なステークホルダーを相手に、サービスデザインの重要性を説き、必要なプロセスを実施・定着させてい くためには、「非デザイナー」である彼らをいかに巻き込むかが大切であると強調しました。

その上でRau 氏は、自身の経験から、サービスデザインを成功に導くために必 要なポイントを5 ヶ条にまとめて紹介をしました。

<サービスデザインを成功させるための5 ヶ条>
(Slideshare 公開資料より引用)


1. 現場で培われてきた文化や流儀を否定しない
2. 利用者・提供者双方の立場に立って考える
3. 人々が抱える問題を解決するのがデザインの役割
4. 常に「新参者」の視点を忘れない
5. 欲張らずにできるところから始める


詳しくは、Rau 氏のプレゼン資料がSlideshareに公開されていますので、そちらもぜひお読み下さい。
ユーザーエクスペリエンス(UX)が、エンドユーザーのエクスペリエンスに重点を置いているのに対し、利用者・提供者双方を満足させるエクスペリエンス の提供が求められるサービスデザインにおいては、”Co-Creation”のプロセス、つまり、「非デザイナーである、ステークホルダー達も、サービスデザインのプ ロセスに参加できるよう後押しをすること」が非常に大切であるとRau 氏は強調します。

ちなみに、Hegeman 氏は、”Embed”という言葉を使っていましたが、サービスデザインにおいて、「非デザイナー」であるステークホルダーをいかに巻き込む かが大切、という点では、二人とも、同じことを繰り返し強調していたのが大変印象的でした。

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2016.01.28 | UX
1月23日に慶應義塾大学・日吉キャンパスで、サービスデザイン・ジャパン・カンファレンス 2016というイベントが開催されました。

<Service Design Japan Conference 2016>

このイベントを主催している
サービスデザインネットワーク(SDN)という団体は、サービスデザインに関わるプロフェッショナルや研究者たちが集まるグローバルな組織で、日本においても2013年から、サービスデザイン・ジャパン・カンファレンスというイベントを開催しています。

冒頭の基調講演に登壇したのは、SDN本部の代表メンバーでもある、米国のサービスデザイン・エージェンシー Adaptive Path社のJamie Hegeman氏。

<Adaptive Path社のJamie Hegeman氏>

Hegeman氏は、サービスデザインの検討・設計にあたり、『利用者のエクスペリエンス(いわゆるカスタマーエクスペリエンス)』だけを考えるのでは不充分だと指摘します。

サービスが利用・提供されるためには、『利用者』に加えて、サービスを提供する側の『現場のスタッフ』さらには『経営層』の存在も不可欠であり、これら3つのステークホルダーが、全て満足するようなエクスペリエンスを提供できるかどうかが、サービスデザインを考える上で、大変重要だとHegeman氏は強調します。

一方で、これらのステークホルダーは、通常、エクスペリエンスデザイン(XD)の専門家ではないため、サービスデザインの現場では、常に、「デザイナー」と「非デザイナー」との間に生ずる様々なギャップや軋轢をどう解消するかが大きな課題となります。

このため、デザイナー側には、非デザイナーであるステークホルダーに対して、何かを「伝える」「教える」という姿勢よりも、かれらを「巻き込む」ための工夫が求められます。(Hegeman氏は、これを”Embed”という言葉で表現していました。)

その際に重要となるのは、「デザイナー」と「非デザイナー」がスムーズに会話できるための共通の言語を持つことです。

そこで役に立つのが”Experience Map” や”Blueprint”といったツールです。こうしたツールを使うことで、サービスの利用にまつわる利用者・提供者側の体験を、言葉や概念だけでなく、ビジュアルなイメージとしても共有できるようになるので、サービスデザインの専門家ではないステークホルダーの人たちも、積極的に議論に参加することができるようになります。

ルグランでも、ウェブサイトの制作・リニューアルや、モバイルアプリの開発にあたっては、”Experience Map”などのツールを使い、まずは、クライアントや利用者の方々と一緒に、利用者・提供者それぞれの立場からみたエクスペリエンスを、1つのストーリーとして視覚化していくというプロセスを大切にしています。

サービスの利用者や提供者が、どこで不満やストレスを感じているかが見えてくると、ウェブサイトやモバイルアプリのエクスペリエンスをどのようにデザインするべきかが、おのずと見えてきます。クライアントに対してエクスペリエンスデザインを支援するという、同じ立場で仕事をする今回のHegeman氏の講演は、多くの示唆に富むものでした。

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