2018.08.16 | イベント

毎年この時期の恒例となりましたルグランのカンヌセミナー。今年も8/1(水)に「カンヌライオンズ報告会:新生カンヌはどう変わったのか?総合的な分析をどこよりも早く」を開催いたしました。開催前にチケットは完売となり、セミナーには80名以上の方にご参加いただきました。

今年も、多摩美術大学教授で元カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員の佐藤達郎さん、株式会社ワントゥーテンデザイン最高経営責任者の小川丈人さんに、弊社共同代表の泉浩人を加えた3名の登壇者による講演ならびにトークセッションを行わせていただきましたが、まずは、佐藤達郎さんのセッション内容から、ご紹介します。

まず冒頭、佐藤さんからは、今年のカンヌライオンズで起きた大きな変化についてお話がありました。今年のカンヌライオンズでは1つの施策・作品について応募は6部門までという制限が設けられたことで、複数部門での受賞はこれまでよりも難しくなりました。また、会期は短縮されましたが、セミナーや贈賞式などの総数はあまり変わっていないため、その分、スケジュールがタイトになり、参加者の方々は、会期中、常に忙しく動き回ることになったようです。

本セミナーで、佐藤さんからは、毎年「定点観測から見えてくるカンヌライオンズの傾向」という視点で解説をいただいていますが、今年のカンヌライオンズからは、以下の「3つの志向」が見てとれた、というお話をいただきました。

1.チェンジ志向

2.軽妙志向

3.極上表現志向


1.チェンジ志向

カンヌライオンズにおいて、数年前から「ソーシャルグッド」ということが言われ始めましたが、今年も、この流れは衰えなかったようです。ただ、世界では、引き続き、災害やテロなど、世の中が「揺れている」状況が続く中、広告コミュニケーションに、そうした世相が反映されていくのは、ある意味、自然な流れなのでは、といいます。ただ、今年の受賞作からは、「Make Change Happen(変化を起こせ)」や「Change for Better(世の中を良くするための変革を)」など、広告やマーケティングにより、私達が生きるこの世界を、より良い方向に”チェンジ”することが大事である、という能動的なメッセージが強く感じられたようです。

事例:1 「Palau Pledge

概要:世界的なリゾート地であるパラオでは、観光客による環境破壊が深刻な問題となっていました。そこで、入国スタンプを、環境保護を誓う文章が入ったデザインへ変更。パラオを訪問する人達は、そこにサインすることで入国が許可されるという仕組みは、世界中で話題となりました。

事例:2 「The Trash Isles

概要:イギリスの環境保護団体Plastic Oceansが中心となって行ったキャンペーン。海に捨てられたゴミが、海流に流されてできあがった「島」を、The Trash Isles(ゴミ島)と名付け、国連へ国として認めてもらおうとした活動です。紙幣や国旗などを作った上、環境破壊に抗議するという署名として20万人の「国民登録」もあったとのことです。


2.軽妙志向

社会貢献を軸とした、いわゆる「社会派」的な施策が評価・注目を集める一方で、引き続き、ユーモアや遊び心がある広告コミュニケーションも、受賞作には名を連ねています。

事例:「It’s Tide Ad

概要:軽妙志向の最たるものが、アメリカで有名な洗剤ブランドTideの広告コミュニケーション。30秒で4億円ともいわれるアメリカのスーパボウルでTideが行ったのは一種のパロディ的なCM。内容はビールや車など、一見、「他社」の広告に見えるCMが流れますが、どの登場人物も妙に綺麗な服を着ています。CMでは「服が綺麗なのは、それがTideの広告だから」と伝えており、そうすると、他のCMを見たときもつい、「Tide」を想起してしまう、というコミュニケーションでした。


3.極上表現志向

小細工はなく、とにかく極上の表現を行う広告のこと。事例をご参照ください。

事例: 「Welcome Home

概要:極上表現志向で代表的なのは、フィルムで金賞を獲得したAppleのHome PodのCM「Welcome Home」とのこと。本作品は、映画監督のスパイク・ジョーンズが手がけ、ネットでも当初から大きな話題となり、かなり期待値も高い作品であったが、見事金賞を受賞しました。

最後に、佐藤さんからは、ブランドが存在する目的(ブランドパーパス)という視点を重視している事例についてもご紹介いただきました。

事例: 「Selfie STIX

概要:Pedigreeがモバイル部門で金賞をとった、Selfie STIXをご紹介。飼い主が犬と一緒に写真を撮ろうと思っても、犬はなかなかカメラの方を見てくれません。そこで、STIXというドッグフードをスマホにつけられるクリップを開発したという施策。犬はエサ欲しさにカメラをじっと見るので、無事に飼い主と撮影できるのです。

ブランドパーパスは商品がいかに優れているかではなく、ブランドは何を目的としているか、という視点から発想するもの。このPedigreeの事例も、「愛犬家が飼い犬と楽しい時間を過ごす」という所から発想した秀逸な施策と言えそうです。

次回は、小川丈人さんの講演レポートとなります。ぜひお楽しみに!     



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