人事異動や入社・転職などをきっかけに、最近(あるいはこれから)デジタルマーケティングに携わることになった方々に向けて、デジタルマーケティングの歴史や基本的なロジックなどを体系的に理解してもらうための情報を提供する『デジタルマーケティングのルールブック』シリーズ。今回は、広告の効果とその測定方法についてのお話です。
1. 広告の効果は本当に測定できるのか?
デジタルマーケティングの発展により、「広告の効果は測定できて当たり前」という考え方が広まっています。そのように考える人が増えてしまった原因の一つには、デジタル広告市場の成長を牽引してきた検索連動型広告の影響があると考えています。
検索連動型広告は、ユーザーが特定のキーワードを検索した際に表示される広告であり、広告のクリックから購入や申し込みといったアクションに至る確率が比較的高いことが特長です。当時、検索連動型広告市場の立ち上げに携わっていた私たちも、そうした特長を「広告の効果を可視化しやすい」という言葉で伝えていました。
しかし、本当にすべての広告の効果は明確に、正確に測定できると言えるのでしょうか?
2. 広告の目的と効果測定の違い
検索連動型広告は、AISAS(Attention, Interest, Search, Action, Share)という消費者行動モデルの中でも、購入や申し込みといったアクションに近いフェーズのユーザーに働きかけるものです。(このことは前回のブログ『いまさらAISAS?デジタルマーケ初心者が知っておきたい消費者行動モデルと活用法』に書きましたが、まだの方はぜひこちらも読んでみてくださいね。)
このため、検索連動型広告の効果は分かりやすいし、広告をクリックした人が商品やサービスの購入・申込を完了したかどうかなど、広告効果の測定も比較的容易です。
一方で、テレビや新聞、動画やソーシャルメディア広告などの「ディスプレイ型」の広告は、商品の存在を知らせたり、興味や関心を持ってもらったりすることを目的としています。このような広告は、広告を見たからといって即座に購買や申し込みにつながるわけではありません。そのため、検索連動型広告に比べて、直接的な効果を測定することは難しいのです。
3. 「刈り取り型」の広告だけでは限界がある
検索連動型広告は、広告のクリックから購入や申し込みといったアクションに至る確率が比較的高いことを背景に、一部の広告会社は「検索連動型広告の方がディスプレイ型広告よりも効果が高い」といった売り込みを行ってきました。
その結果、多くの企業やマーケターの間には「ディスプレイ広告は費用対効果が悪い」「検索連動型広告に予算を集中させるべきだ」という間違った理解が植え付けられてしまいました。
しかし、AISASのモデルで考えてみれば明らかな通り、知らない商品やサービスが検索されることはほとんどありません。にも関わらず、直接的な効果にばかり気を取られて、検索連動型広告のような「刈り取り型」の広告ばかりに頼るのは、魚が少ない川の中流で一生懸命網を張って待つようなもの。卵をふ化させ、上流から稚魚を放流するような努力もしなければ、いずれ魚は取り尽くされてしまうでしょう。
4. フジテレビ問題とディスプレイ型広告の役割
最近、フジテレビで起きた一連の問題により、多くの企業がフジテレビへの広告出稿を控えるようになりました。そうした動きを受けて「これまでテレビ広告を止める機会(あるいは勇気)が無かった企業にとっては、テレビ広告が無いと本当に売上が減るのかを検証する絶好の機会になるのでは?」という意見も出ています。
しかし、テレビのようなディスプレイ型の広告が力を発揮するのは、既に顕在化している需要の「刈り取り」よりも、自社の商品やサービスに対する認知や興味・関心を高めることを通じて、「需要そのものを創出する」点にあります。そのため、テレビ広告をやめたからといって、すぐに売上が減るとは限りませんし、だからといって、テレビ広告に意味が無かったとは言えません。広告が長期間にわたって潜在的な購買意欲を形成していた可能性も考慮することが必要です。
では、ディスプレイ型広告の効果はどのように測定すればよいのでしょうか?このテーマについては、次回の記事で詳しく解説します。
ルグランでは、デジタルマーケティングの様々な施策に応じて、最適な効果測定や目標設定の方法を、クライアント様と一緒に考え、提案をします。広告効果の測定や目標設定についてお悩み・お困り事がある場合には、お気軽にご相談ください。
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