2018.10.11 | ブランド

「っていうか、音楽ってだれのもんだっけ?」

YouTubeで音楽を聴いている時流れてきたインストリーム広告の最初の一言に気を引かれ、1分間の広告を思わず最後まで見てしまいました。

渋谷を中心とした都市型の音楽フェスである「Red Bull Music Festival Tokyo 2018」のCMであるこの動画は、出演アーティスト達が音楽の在り方についてのメッセージを短く、インパクトのあるフレーズで伝えていきます。名前からわかる通りこのイベントはレッドブルが自社の宣伝・ブランディングの一環として主催しているイベントですが、CMの中で言い放たれる「音楽はコンテンツじゃない」「音楽はマーケティングからうまれない」というメッセージは、レッドブルがマーケティングの一環としてイベントを主催したりスポンサーになる際の姿勢をよく表している部分だと思います。この記事では、レッドブルのマーケティング・ブランディング戦略の特徴とその効果について紹介します。

レッドブルの「スポーツマーケティング」の特徴

レッドブルの行っている取り組みの中でもよく取り上げられるのが「スポーツマーケティング」です。スポーツマーケティングとは、競技の大会や選手のスポンサーとなり自社のロゴや商品を露出させたり、自社のCMに選手を起用してブランディングを行う手法です。一般的には既に人気のあるスポーツや人気のある選手のスポンサーになることでより多くの人に認知してもらうのが目的ですが、レッドブルがスポンサーとなるスポーツはそこまで認知のないマイナーなスポーツが中心であり、最近ではeスポーツのスポンサーもしています。

既に人気のあるスポーツにあやかるのではなく、マイナーなスポーツのスポンサーとして選手やファンと一緒にシーン、コミュニティを盛り上げていく、というのがレッドブルの基本的な姿勢であり特徴です。選手やファンを含めたコミュニティにとってはありがたい話ですが、意外と触れられないのがこうした方針を取ることのレッドブルにとってのメリットです。

30年ほど前にレッドブルが創業した当時は、アジアと違い西洋ではエナジードリンクは一般的ではなく、市場を自分たちで作り上げる必要があったのと同時に、「飲料業界」というくくりで見ると新しい企業であり、自分たちの商品・ブランドを認知してもらう工夫が必要でした。スポーツを中心とした文化やエンターテイメントを盛り上げるのに一役買うことで、非日常的なイベントを楽しむためのエネルギーを提供する存在として自分たちをアピールするのと同時に、他にスポンサー企業の競合が少ないマイナーなシーンを選ぶことでより自分たちのブランドの印象を残すことを優先したのです。またRed Bull Music Festivalのように、自分たちがイベントそのものを主催し、自社の名前を冠したイベントを開催することも、よりファンや観客の印象に残る効果があります。

こうした「どれだけ多くの人に見てもらえるか」よりも、「リーチできる数を犠牲にしてでも印象に残るようにする」方針は、時折街中で見かけるレッドブルカーによるサンプルの配布にも見ることができます。

より印象に残るサンプル配布

街中で大きなレッドブルの缶の載せた車と、レッドブルの缶を模したバッグを背負った女性がレッドブルを配っているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。そうでなくとも車が走っているのを目にしたことならある、という方がほとんどだと思います。実際に「見た」方が多いのはもちろん、その特徴的な車を「見たことを覚えている」方が多いのではないかと思います。「より多くの人に知ってもらいたい」という考え方でサンプルを配布するのであれば、レッドブルカーは小さくサンプルを積み込めないので不向きです。またサンプルを配る際も、道行く人にどんどん渡していくのではなく、一人一人とコミュニケーションを図るやり方を取っており、配布する人数という意味では効率的ではありません。

そのかわり、無造作に配られては忘れられていくティッシュ配りの広告とは違って、一度遭遇すると忘れない体験になるようなサンプル配布になっています。「忘れない」というのは商品購入の検討につながりやすくなるだけではなく、「そういえばこんなことがあった」という話を友人やSNS上にシェアし口コミで拡げてもらうことにつながります。そうすると、上手くいけば最初に犠牲にした「より多くの人に」という部分はまわりまわって達成されることになるのです。

ルグランではSEMやコンテンツマーケティングなど、主にウェブ上でのマーケティング施策のお手伝いをさせていただくことが多いですが、むやみやたらに人を集めるだけではなかなか効果が出ないのはウェブ上でのマーケティングも同様です。自社のブランドの認知拡大のためのご相談は、このページの下部の「Contact Us」から是非お問合せください。

ちなみに冒頭で紹介したRed Bull Music Festival Tokyo 2018は、9/22から10/12までの実に三週間の期間の中で、渋谷、新宿、原宿など各地で様々なライブ・イベントが行われ、中には通常ダイヤで運行中の電車を貸し切ってDJが音楽を流しながら山手線を一周したり、カラオケ館の部屋を7つ貸切りそれぞれの部屋から各アーティストがライブストリーミングを配信するといった、それだけで話題性に溢れるユニークなイベントが数多く開催されています。



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