「UX」という言葉は、特にここ数年ではいわゆるバズワード(業界専門的流行語)みたいになってるのかも知れません。実際に、デザイナーの肩書きの前に「UX」と付けただけの、自称UXデザイナーという人は、こちらでも多くいます。
確かにデザインシンキングの過程において、どこからどこまでがUXであるとか、その明確なラインは見えにくいのかも知れません。従って、デジタルデザインに関わるデザイナーは、UXも”できます”的になるのかもしれませんね。言い換えれば、シニアレベルのデザイナーであれば、誰でもUXを視野に入れてデザイン作業していることは間違いありません。
それでは、そもそも何故この「UX」は、バズワードになったのでしょうか?
もちろん、その理由は一様ではないと思いますが、下のイラストに、その背景、つまり「UX」が台頭してきたひとつの理由があるのではないかと考えます。このイラスト、実はかれこれもう10年ほど前に作られたもので、ひとつの典型的なプロジェクトをそれぞれ担当者の視点から面白可笑しく捉えてみたコミックです。もう少し新しいバージョンのモノもあるのですが、ここではオリジナルの簡素版を例に挙げて説明してみたいと思います。
各イラストを上・下段、それぞれ左から説明すると:
1:どのようにお客様が説明したか。
2:どのようにプロジェクトリーダーが理解したか。
3:どのようにアナリストがデザインしたか。
4:どのようにプログラマーがコーディングしたか。
5:どのようにビジネスコンサルタントが説明したか。
6:どのようにプロジェクトがドキュメントされたか。
7:どのオペレーションがインストールされたか。
8:どのようにお客様が請求されたか。
9:どのようにサポートがなされたか。
10:実際、どのようなモノをお客様が望んでいたか。
と、なってます。
デジタルデザイン業界に携わっている人であれば、ちょっと苦笑いしてしまうのではないでしょうか。
確かに10年以上前には、クライアント、プロデューサー、ディレクター、デザイナー、プログラマー、コンサルタントが集まり、その叡智を結集させてプロジェクトを進行させ、ようやくプロダクトローンチまで辿り着いたにもかかわらず、その数ヶ月後には、もうすでにリデザインの新規プロジェクトの話が立ち上がっている…といったようなプロジェクトが、こちらでもかなり沢山あったようです。
そこで、いわゆるUXデザイナーが携わる様々なワークフローと、そこから造られる仕様書が重宝され始めたのです。競合分析などのリサーチから始まり、コンテンツモデル、エクスペリエンスマップ、メンタルモデル、ペルソナ、プロセスダイアグラム、シナリオマップ、タスクフロー、サイトマップ、ユーザビリティーテスト&レポート、ワイヤーフレーム、スタイルガイド、ユーザージャーニー、そしてプロトタイプ等々。
まずは何を実現したいのかという情報収集をしっかりとして、それに基づいたUXプロセスを着実に取り入れてプロダクトのゴールを定める。そして、各担当者の共通理解を得ながらそのゴールに向ってプロジェクトを進行させれば、そう、こんなイラストの結果にはならないハズですよね。