2020.02.06 | コラム

※この記事はスターウォーズEp9のネタバレを含みます

昨年末スターウォーズの最新作、Star Wars: The Rise of Skywalkerが公開されました。
多くのファンを持つスターウォーズシリーズの完結編となる今作は、多くの期待を背負っていました。

しかし前作のStar Wars: The Last Jediが賛否両論分かれたように、今作も万人に受け入れられたという結果ではなかったように思われます。

幼稚園の頃からスターウォーズに触れてきた世代として、この賛否両論やスターウォーズシリーズのあるべき姿を考察してみたいと思います。

私が生まれた年はStar Wars: Episode I – The Phantom Menaceが公開された年です。
その後過去作をレンタルし、2005年に初めてStar Wars: Episode III – Revenge of the Sithを劇場で鑑賞しました。
新三部作(エピソード1、2、3)も旧三部作(エピソード4、5、6)と比較され、賛否両論がありました。
しかし幼少期の私にとって、ムスタファーでのオビ=ワンとアナキンのバトルシーンはとても壮大で、今でも映画館で観たそのシーンをよく覚えています。

その後スターウォーズに関する海外記事などにも触れスターウォーズおたくとしての基礎を築いたわけですが、今回の新たな続三部作はジョージ・ルーカスがあまり関わっていないこともあってかこれまでとは少し違ったテイストだと感じました。

多くのファンも様々な評価をしていて多くのブログなどでそれを読み取ることができます。
なので私はただのスターウォーズおたくとしての観点ではなく、デザインを学ぶ学生としての観点も織り交ぜて考えてみたいと思います。

まずこの手のシリーズものの映画によく含まれるものとしてファンサービス的な要素があります。
これは最初の映画が公開された後、数年後に続編やリブート作品の製作が発表されるような映画によくある要素だと思います。
スターウォーズにおいてはお馴染みのキャラクターを登場させたり、旧三部作に登場した宇宙船などを登場させたりしていました。

このファンサービスが続三部作ではあまりに露骨で、素直に喜べない部分もあったかと思います。
これは映画において、特にスターウォーズにおいては、本来監督の世界観をなるべくそのまま映像化するべきだということに反するが故に起こるものだと私は考えました。

本来あるべきSF映画の形を論じる上で、デザインとアートの違いを考えると分かりやすくなります。
皆さんはデザインとアートの違いをご存知でしょうか?

デザイナーズチェアなどでは意匠にこだわり、芸術品のようなイスが多々あります。
それらの形を形成するのは果たしてアートなのか、それともデザインなのか。
その違いにはユーザーの存在という決定的な違いがあります。

アートにおいてはユーザーが不在で、作品に対する評価を自分で決めます。
それに対してデザインはその作品、製品を使うユーザーの行動などを考えます。

では、ファンサービスを考慮しているSF映画は果たしてアートなのでしょうか?
それともデザインすべきものなのでしょうか?

私はこのようにSF映画を考察したとき、これらのどちらかではないと思いました。
スターウォーズには確かにユーザーとなる観客やファンがいますが、必ずしも彼らのことを考慮する必要はないと思います。

続三部作以前の作品のように、監督であるジョージ・ルーカスのコンセプトアートの世界観を再現し、その世界をユーザーが楽しんでいるという構図が最もしっくりくるのではないでしょうか?
つまりジョージ・ルーカスからするとスターウォーズという映画はアート作品として完結していて、その上我々ユーザーがその世界観を楽しむということです。

しかし続編を作るにあたってすでにいるファン、ユーザーを考慮せざるをえません。
そこで要になってくるのがプロデューサーです。監督が作り上げたその世界の中にファンが驚くような伏線を盛り込んだり、名前のないキャラクターを含む過去作の登場人物や宇宙船を登場させたりするべきなのです。
それは決して10分後に回収できるような浅はかな伏線ではないし、海外セレブのカメオ出演のような趣旨の異なったものではいけないのです。
プロデューサーと監督の関係からこれはアートでもなく、デザインでもないと思うかもしれません。
しかしそこにユーザーが存在する以上、それはデザインなのです。
デザインの中でユーザーの行動を考慮すると、スターウォーズの中ではファンのことを考えた上で考えないことが正解だと私は思います。

最大限まで監督の世界観を再現し、起こる物事も監督に任せて、プロデューサーは物語のつながりや、ファンサービスの量を熟考する必要があります。
ルーカスフィルムがディズニーに買収されたことが原因かは不明ですが、今のスターウォーズのプロデューサーにはそのようなことを考えることができていない、足りていないのではないかと感じます。

スターウォーズやSF映画以外にもデザインすべきものやことがたくさんあります。それはテンプレートのようなものではないかもしれません。ルグランと一緒に、あなたのユーザーのことをしっかり考えましょう。



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