2022.09.08 | コラム

2022年に入り、徐々に緩和されてきた各国の入国規制。欧米ではマスク着用義務が撤廃される傾向もあり、ウィズコロナ時代の始まりとも言えます。そして自動化ゲートや電子入国カードなどの導入で、近年デジタル化が進む入出国手続。しかしコロナの影響で非常に複雑化しています。

入出国手続は渡航者をユーザーとしたUXであると言えます。国によって簡単だったり複雑だったりして、入出国後の気分に大きく影響を与える非常に重要なUXです。そこで各国の入出国管理がどのように行われているのか、今年実際に渡航したイタリア、シンガポール、タイを例にみていこうと思います。
※いずれも実体験ですが、日々手続に変更があります。渡航の際には渡航先の大使館のWebサイトなどで、最新の情報を確認なさってください。

イタリア
今年の6月にミラノに渡航した際の体験です。今回のミラノ、マルペンサ空港では特に目新しい設備はなく、数年前に導入された自動認証ゲートのSmart Passを利用することもありませんでした。イタリアを含めヨーロッパ諸国の入出国審査はEUゲートとAll Passportゲートに分かれており、日本のパスポートを持っている人はAll Passportのゲートに並ぶ必要があります。時間によっては到着便が重なり混雑していることもあれば、EUゲート側の入出国者がいない場合にはそちらで手続を行う場合もしばしばあります。そこはイタリアらしく臨機応変に対応しましょう。


2022年6月のミラノ、マルペンサ空港の様子

イタリアでは今年6月からワクチン接種証明、陰性証明などの提示が不要になり、入国後の隔離もありません。海外からの観光客も多く見られ、日本人らしき人もちらほら見かけることがありました。また6月の時点ではミラノの地下鉄に乗る際にマスク着用義務があり、マスクを着用している現地の人も見かけました。日本ほどではありませんが、パンデミック初期に感染が大流行したイタリアでは、他の国に比べて感染予防に対する意識が高いのかもしれません。

シンガポール
シンガポールには今年の8月に訪れる機会がありました。目的地はタイだったのですが、シンガポールのチャンギ空港での乗り継ぎ時間が10時間を超えていたので一度入国し、少しばかり観光を楽しみました。シンガポールにはトランジットの際にも入国することができます。ですがフライトの時間をよく確認し、時間に余裕があるか事前に確認しましょう。

入国にあたってシンガポール入国管理局の定める条件をクリアする必要があります。
まずワクチンの接種条件です。ワクチンの種類によって規定の接種回数が異なります。規定の回数の接種をしていなくても、出国前の検査で陰性の場合入国できるようです。そしてSG Arrival Cardと呼ばれる電子上陸カードの登録が必要です。この登録は到着の3日前までに行う必要があります。私はうっかりしていて、前日の登録になってしまいましたが無事入国することができました。ですが本当に入国できるのか、入国審査の際にドキドキするハメになるので早めの登録をお勧めします。このSG Arrival Cardの登録は日本のワクチン接種証明を利用できます。またシンガポールの接触管理アプリのインストールなどが条件としてありましたが、現地で操作することはありませんでした。

以上の条件を満たし、登録を済ましておけば入国することができます。乗り継ぎで入国する場合、先ほどのSG Arrival Cardの滞在先の欄でトランジットを選択すれば大丈夫です。入国審査ゲートは場所によって混雑していますが、チャンギ空港には何箇所か入国審査ゲートがあるので他の空いているゲートに誘導される場合があります。ゲートではシンガポール国民、ASEAN、All Passportの列があります。自分はAll Passportの列から入国しましたが、周囲にいた日本からの旅行者はASEANの列に誘導されていました。空いていればどのゲートでも対応してくれるようです。シンガポール国民のゲートには自動化ゲートが設置されており、スムーズに入国しているようでした。

ゲートでは簡単な質問と指紋のスキャンを行います。指紋のスキャンをすることで、シンガポール出国の際に自動化ゲートを利用することができます。また出国の際の手荷物検査は搭乗ゲートの手前で行うため、ロビーに入る際には行いません。そのため出国の際にロビーに入るのがとても簡単で、電車の改札を通るように入ることができました。これは入出国手続のUXとしては非常に優れていると思います。


2022年8月のシンガポール、チャンギ空港の様子

タイ
今年8月にシンガポールで乗り継ぎ、タイ、プーケット国際空港を訪れました。タイでは規定回数のワクチン接種完了で、入国措置が免除されています。入国の際には、入国審査の手前でワクチン接種証明書の提示が求められます。日本の接種証明アプリを提示すると入国審査ゲートに進むことができ、入国できます。非常にシンプルながらも目新しい機械やシステムはありません。ですが以前あった事前申請や保険への加入などが撤廃され、他の国と比べて手続が圧倒的に少ないのでストレスを感じませんでした。今後のウィズコロナ時代には、どの程度コロナを許容して手続きを簡略化するのかということもUXと強く関わってきそうです。


2022年8月のプーケット国際空港、国内線ターミナルの様子

今回は3つの空港の入出国手続きを、UXの観点から観察しました。私が最も優れていると感じたのはシンガポール、チャンギ空港の入出国管理システムです。手続きを事前に済ませておかなくてはいけない必要があるものの、複雑化しているコロナ関係の手続きを全てデジタルで管理している点は非常に良いと思います。日本では入国時の手続きを簡略化できるMySOSというアプリが利用できますが、空港での手続の際に紙を使っていたり、何度もアプリの画面を確認したりしなくてはならないのが現状です。シンガポールではワクチン接種状況などの情報をパスポートで一元管理しているため、入国審査のワンストップで手続きを終えることができます。

近年進化している入出国管理システムも、コロナの影響で真価を発揮していないのが現状です。各国の定める入国規制に左右されてしまうため、今後しばらくは簡単には改善できないでしょう。しかし国と渡航者の両者にとって手続きや管理を簡単にするため、各国の施策がいろいろな視点から行われるかもしれません。アイデアとして今後も注目してみると面白いと思います。

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