2023.01.05 | コラム

あけましておめでとうございます。インターンの Kota です。
新型コロナウイルスの流行が始まり、早3年が経とうとしています。強い感染力や深刻な後遺症が特徴の新型コロナウイルスですが、後遺症が残るのは人体だけではないようです。感染拡大防止のために様々な施策を強いられてきたエンターテインメント業界では、入場者数の規制やオンラインサービスの導入など様々な場面で通常時と異なる対応を実施してきました。最近では感染者数の減少や規制の緩和からコロナ以前のシステムに戻ろうという動きも見られますが、そこで通常時とコロナ禍の特別な対応との間にギャップが生じているのです。

公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会が毎年発表している、JCSI(日本版顧客満足度指数)調査を見ると、この現状を確認することができます。2022年度の調査結果から、東京ディズニーリゾートの顧客満足スコアは2018年度から2021年度にかけて上昇していて、2022年度で大きく低下しています。一方で2019年度から2021年度にかけて顧客満足スコアが低下していた劇団四季は、2022年度は上昇しています。この違いはどのようにして生まれたのでしょうか。

2018年度から2022年度にかけての顧客満足スコアの推移
(2020年度はコロナ禍の影響を考慮し、実施せず。 )

2018年度から2022年度にかけての顧客満足スコアの推移

東京ディズニーリゾートの顧客満足スコアの低下は入園者数の増加と関係があるのではないかと考察できます。オリエンタルランドの決算資料を参照すると、基本的には入園者数が増加すると顧客満足スコアが低下する傾向があります。コロナ禍になる前の2019年までは1日の平均入園者数は約9万人でした。2018年度から2019年度にかけて入園者数が低下し、顧客満足度スコアが増加しています。コロナ禍になると新型コロナウイルス感染症対策が求められ、入園者数は一気に変化します。1日の入園者数は、緊急事態宣言下で最も少ない場合には1パーク1日あたり5,000人を上限とし、チケットの購入が制限されました。パーク内は人がまばらになり、スタンバイパスなどの新たなシステムの導入でスムーズにパークを楽しむことができるようになりました。感染状況が落ち着くと、そんな状況から一転して1日の平均入園者数は大きく上昇します。2021年度から2022年度にかけて、平均入場者数は約3万人から約5万人へと増加し、顧客満足スコアはコロナ以前の入園者数が約9万人だった2019年度よりも低い結果となっています。この平均入場者数の約2万人という大幅な増加が、顧客満足スコアに大きな影響を与えているのではないかと推測できます。

一方で顧客満足スコアが増加しているのは劇団四季でした。劇団四季の顧客満足スコアは2021年度から2022年度にかけて約2ポイント上昇し、エンターテインメント業界ではトップのスコアでした。劇団四季を含む演劇界はコロナ禍で大きな打撃を受けました。ところが劇団四季の売上高は2019年度比で2020年度は30%、2021年度は60%と徐々に回復傾向を見せています。これには公演のオンライン配信や次世代新規事業プロジェクトの実施が大きく影響を与えていると考えられます。また演劇界において劇場内の混雑は、テーマパークほど顧客体験に影響を与えていないと考えられます。演劇界ではテーマパークにおける待ち時間の増減のような、体験価値に直接影響を与える要素が少なく、業界の定めたガイドラインが緩和されて以前のように劇場に足を運ぶことができるようになった今、顧客満足度は着々と上昇するのではないかと考察できます。

エンターテインメント業界という括りでの調査となっていますが、東京ディズニーリゾートと劇団四季では業種が異なるので単純比較はできません。それぞれの業界でコロナ禍の影響を受けて取られた特別な対応があり、コロナウイルスの収束とともに以前の対応やシステムに戻ろうとする動きが見られる中でその特別な対応とのギャップがどうしても生じてしまうのです。この後遺症とも言えるギャップをいかにして克服することができるのでしょうか。UXデザインを通して自社の顧客体験をもう一度見つめ直す必要があるのかもしれません。

ルグランはUXデザインで顧客体験をより良いものにします。ぜひお気軽にご相談ください。



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