2024.08.21 | コラム

熱戦が繰り広げられるパリオリンピック2024!
しかし、その裏では…

熱戦が繰り広げられたパリオリンピック2024は、世界中から多くの注目を集められました。時差の関係から日本での放映は夜中になることが多く、寝不足になることもあったと思います。

しかし、パリという都市は、単にスポーツの舞台としてのものだけではありません。

実は、パリの緯度と日本の北海道の緯度がほぼ同じであることをご存知でしょうか?

このことは、気候や気温が緯度だけで決まるわけではないという、地球規模の海洋循環が作り上げている気候があるからなのです。

パリと北海道の緯度比較

パリは北緯48.8度、北海道の札幌は北緯43.1度に位置しています。緯度だけを見れば、両者はほぼ同じような気候であっても不思議ではないはずです。しかし、実際にはパリは比較的温暖な気候を持ち、冬でもそれほど厳しい寒さには見舞われません。一方、北海道は冬に厳しい寒さが続き、多くの雪が降る地域です。

この違いを生み出しているのが、大西洋子午面循環(AMOC: Atlantic Meridional Overturning Circulation)です。AMOCは、地球の気候システムにおける重要な要素であり、特にヨーロッパに温暖な気候をもたらしています。

海洋深層循環の模式図

図1 海洋深層循環の模式図(Broecker 19871) を参考に作成)

AMOCの役割

AMOCは、大西洋全域にわたる海洋循環の一部で、北大西洋で冷却されて沈み込む深層水が南極まで流れ、その後再び上昇して表層に戻るという大規模な水の動きを伴います。これにより、熱帯や赤道地域で温められた水が北上し、北大西洋を経由してヨーロッパに熱を供給します。これが、パリのような高緯度地域でも温暖な気候を維持する要因となっているのです。

AMOCの弱体化とその影響

しかし、近年の研究では、このAMOCが弱体化しつつあることを示唆しています。気候変動が原因で、グリーンランドやその他の極地で氷が急速に溶け出し、その結果、大量の淡水が北大西洋に流れ込んでいます。この淡水が海水の塩分濃度を低下させ、沈み込みが減少し、AMOCの動きが鈍化しているのです。

もしこの傾向が続き、AMOCが完全に停止してしまった場合、ヨーロッパ、特にパリの気候は劇的に変わる可能性があります。AMOCの停止により、現在ヨーロッパに供給されている熱が失われ、パリは現在の北海道のように厳しい冬を迎えることになるかもしれません。

このような気候変動のリスクは、単に気温の変化にとどまらず、農業、経済、そして人々の生活全般に深刻な影響を与える可能性があります。例えば、ヨーロッパの農作物は現在の温暖な気候に適応しているため、急激な寒冷化は食糧生産に大きな打撃を与えるでしょう。また、エネルギー需要の増加も予測され、エネルギー政策においても対応が必要となります。

これが単なる想定ではなく、かつ、遠い未来でもなさそうな研究発表がありました。

8月5日にCNNが発表した記事よると
「大西洋の海洋循環、早ければ2030年代後半にも停止か」
(CNN元記事URL: https://www.cnn.co.jp/fringe/35222382.html)
との新たな研究発表がありました。

気候変動への対応

現在、AMOCの変動をモニタリングし、その将来の挙動を予測する研究が進められています。気候変動に対する対策を講じることで、AMOCの弱体化を防ぎ、パリを含むヨーロッパの温暖な気候を維持することが求められています。

パリオリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、地球環境と私たちの未来について考える機会でもあります。パリと北海道の気候の違いが示すように、AMOCのような地球規模のシステムが、私たちの日常生活にどれほど大きな影響を与えているかを理解することが、持続可能な未来を築くための第一歩です。これからも地球の気候システムについての理解を深め、適切な対策を講じていくことが求められるでしょう。

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