2024.10.12 | コラム

“広告会社の担当者から「これは媒体の推奨する方法だから(安心です)」という説明を受けることが増えたよね。”

最近、複数の事業者(広告主)の方から、こういう話を続けて聞くことがありました。

オーバーチュアという「媒体」にいて、いまは「広告主」のサポートをしている立場にいる人間として、ちょっと思うところを書いてみます。

広告媒体の目的は売上=広告費を増やすこと

多くの会社は、自社の商品やサービスをできるだけ多くの人に利用してもらうことで収益をあげようと、様々な努力や工夫を重ねています。それは広告媒体も例外ではありません。

広告媒体は、広告主から広告費を受け取ることで収益を得ています。そのため、彼らの第一の目標は、できるだけ多くの広告を掲載してもらい、広告費を引き出すことにあります。これ自体は何も悪いことではありません。

広告主も、自社の商品やサービスを多くの人々に知ってもらうために広告媒体を利用する訳ですが、広告主としては、当然、その費用対効果も気になります。一方、広告媒体も広告主のニーズに応えるために広告枠を提供しているという側面はあるものの、最終的には自社の収益を最大化することが重視されます。

広告媒体と広告主の間で根本的な利害は一致しない

広告主は、できるだけ少ない広告費で最大の効果を得たいと考えますが、広告媒体側は広告費をできるだけ増やすことを目的としています。

ただ、これは広告に限った話ではありませんよね。

スーパーはできるだけ高い値段で商品を買ってもらうように努力や工夫をする一方、消費者はできるだけ安く買える方法を一生懸命探します。「お買い得ですよ」というスーパーのメッセージを100%信じて「このスーパーは私たちのことを考えて安くしてくれているのだから、ここで買物するのがベストに違いない!」と思う人は少ないですよね。。。

ところが広告の世界では、広告媒体の「お薦め」や「最適化」は、広告主のために行ってくれていると信じて疑わない人が意外に多くいるようです。

広告会社の担当者の中には「これは媒体が推奨している方法ですから」と真顔で広告主に説明する人も少なくありません。広告媒体の「お薦め」や「最適化」は、全て広告主のためにあると本気で信じているのか、広告主にたくさん広告費を使ってもらうために、わざとそのような説明をしているのかは分かりませんが。。。

もっとも、広告会社に支払う費用が広告費に応じて増減するような契約を結んでいる場合、この広告会社の担当者もビジネス的には正しいことをしていると言えます。なぜなら、広告主にたくさん広告費を使ってもらわないと、自分たちの収益も増えないですからね。

「広告主のため」はどこまで本当か

スーパーが「お買い得ですよ」とアピールするのと同じように、広告媒体も、広告主に対して自社のプラットフォームやサービスが広告主の成功をサポートするためのものだとアピールします。例えば、広告のターゲティング機能や、少ない手間で色々なところに出稿・配信できる機能など、さまざまな機能が「広告主のため」に提供されていると説明します。(もちろん、全ての機能やオプションが広告主の利益に反するものということではなく、あくまでも「使い方次第」なので、そこは誤解のなきよう。)

ただ、広告媒体も会社である以上、自社の収益を最大化することを目的に活用しているのですから、彼らが提供するサービスが、常に広告主の成功を保証するわけでは無いということは忘れないようにしましょう。

ちなみに海外の広告会社やツールベンダーと話していると、広告媒体が提供する効果測定の仕組み(「コンバージョンタグ」)も使うべきではないという話を良く耳にします。

広告媒体から提供される測定機能を使うということは、どのような商品やサービスがどのくらい売れているとか、広告主がどのくらいの費用対効果を求めているのかといった「手の内」を全て広告媒体に知らせることを意味します。

つまり、相手に「自分はいくらまでだったら払えますよ」ということを伝えてから価格交渉をしているようなもので、これで大幅な値引きを引き出すことは難しいでしょう。同様に、このような状態で広告媒体の「最適化」機能を使ったらどのような結果になるかは明らか、という訳です。

このように、広告主は、提供されているツールや機能が自社のビジネスに本当に有効かどうかを見極める必要があります。本来であれば、広告会社が広告主のプロの「代理人」として、こうした目利きができると良いのですが、彼らは広告媒体の「代理人」であることも多いので、そこは注意が必要です。

大事なことは広告主の考える力

広告媒体が提案するすべての機能やオプションが広告主にとって有効であるとは限らず、場合によっては無駄な費用(=広告媒体の収益)が発生することもあります。

広告主としては、広告媒体(あるいはその代理人である広告会社)の言葉をそのまま信じるのではなく、さまざまな提案のメリットとデメリットを冷静に分析し、自社のニーズに合った選択をすることが重要です。

広告媒体は広告主にとって、大切なビジネスパートナーでもある一方で、当然のことながら、彼ら自身の収益の最大化も追求しているため、すべての提案が広告主にとって最良の選択肢であるとは限りません。

広告媒体が提案する新しい機能やオプションが本当に自社の利益につながるのかを慎重に検討したり、必要に応じて、複数の広告媒体を比較検討したりすることで、最適な選択肢を見つけることが大切です。

広告主は、広告媒体と適切な距離を保ちながら、戦略的に広告費を投資することで、効果的なマーケティング活動を展開することが重要です。広告媒体の提供する情報やツールをうまく活用しつつも、常に主体的な判断を心がけることが、広告主の成功への鍵となることを忘れずに。

そして、私自身も、広告主の良きパートナーとして、これからも目利き役を務めていきたいと思います。



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