2015.05.21 | コラム
先日のブログでお伝えしました通り、今年も弊社では『データで予測するAKB48選抜総選挙』に取り組んでおります。

5月19日から投票が始まった第7回AKB48選抜総選挙ですが、分析も完了し、近日中に皆様にも『ルグラン予測』を発表させていただく予定です。

昨日発表された速報順位では、昨年2位だった指原莉乃が1位、柏木由紀が2位、渡辺麻友が3位となっており、今年不出馬となった松井玲奈と小嶋陽菜を省くと、7位までは昨年の顔ぶれと変化はありませんでした。一方、昨年10位の須田亜香里が32位まで落ち、昨年圏外だった谷真理佳や渕上舞がそれぞれ11位、15位と急上昇しており、今年の総選挙は混戦を極めているようです。

弊社が分析した得票数予測はちょっとだけ置いておき、当ブログでは、今年の得票数の予測モデルを構築する段階では利用するに至らなかった、TVやCMの出演時間データの傾向について、興味深い点をいくつかご紹介します。

まず、今年の予測モデル構築にあたり、過去2回の予測モデルとの大きな違いは、TV・CMの出演時間データを利用しなかったことがあげられます。

予測モデルを構築する際には、去年の得票数と今年の各データ(ブログやTwitterでのクチコミデータ、TV・CMの出演時間データなど)との間に相関関係があるかについて分析し、相関が高い(=関係が強い)データを予測モデルに組み込んでいきます。そのため、相関が低い項目については、予測モデルの構築に適していないため、利用することができません。

過去のデータについて、各年の実際の得票数とTVの出演時間の相関を分析すると、図1のグラフのように2012年以降は、相関係数(相関の高さを表す数値で、最大が1)が徐々に低下してきており、得票数とTVの出演時間との間の関係は弱まってきていることがわかります。今年のデータにおいても、2014年とほぼ同程度の相関係数となっていたため、予測モデルの構築から除外しました。

この傾向の要因については以下2点が考えられます。

 
1、 地方グループメンバーの台頭
2012年と比較すると、SKE48やNMB48、HKT48などの地方グループが増え、人気も徐々に高まってきているため、地方グループのメンバーが総選挙上位に食い込んでくる割合が高くなっています。一方、今回分析で利用したTV・CMデータには、ローカル番組での出演データが含まれていないため、地方グループメンバーはAKB48に比べるとTVの出演時間は減少してしまいます。そのため、地方グループのメンバーにおいては、どうしても得票数とTV出演時間の相関が低くなってしまう傾向にあり、得票数の予測には向いていない指標となってしまいます。

2、 AKB48の冠番組には中堅メンバーや運営からの「推しメン」が出演
分析に利用したTVの出演時間データでは、出演していた番組名まで知ることができます。そこで、総選挙の順位は上位ではないが、TVの出演時間が多いメンバーの出演番組を調べてみると、AKB48の冠番組に出演していることが多く、もちろんそれらの番組ではAKB48メンバーがメインとなるため、他番組だと1時間番組の場合、1人あたり平均8分程度の出演時間ですが、AKB48の冠番組の場合、15分程度の出演時間となっていました。また、冠番組の場合は人気上位者が出演というよりも、バラエティ受けするメンバーや運営側が推しているメンバー(推しメン)が多く出演する傾向にあるため、ファンからの人気を反映した総選挙の得票数との関係は弱くなると考えられます。

また、図2のグラフでは、AKBグループ全体でのTV・CMの出演時間をまとめていますが、CMの出演時間に着目すると、2012年をピークに2013年以降は平均約60%も低下しています。これは、AKBメンバー全体でのCM起用が減少したためと考えられますが、2012年に不動のセンターであった前田敦子が卒業したことも影響しているでしょう。

2014年には地方メンバーも全国ネットのCMに出演する機会が増え、全体的な出演時間は増加しましたが、今年はCMの出演時間が過去最低となっており、これは2014年に大島優子が卒業したことが影響していると推測されます。過去のデータを見ていくと、総選挙で1位になったメンバーは、翌年CMの出演時間が大きく増加する傾向にあり、総選挙1位という人気と認知度の拡大を利用して、企業側はCMの起用を決めるのかもしれません。


今年は予測モデルには利用しなかった(できなかった)TV・CMの出演時間データですが、分析をし、さまざまな角度から考察をしてみることによって、AKB48のブランド戦略が見えてきた気がします。

以前、AKB48とももクロの人気について比較した際に、「AKB48は個人のバラ売り戦略を総選挙にて実施したことによって、他のアイドルグループと差別化され、人気を獲得した」という考察をしました。

今回のデータも合わせて考えると、TVには中堅メンバーやバラエティ受けするメンバーが多く出演、CMには人気上位者が出演と、活躍する層を変えることによって、選手層に厚みを持たせ、各個人の個性を適した場所で発揮させることで、各々のメンバーの人気を拡大するための施策をとっているのではないでしょうか。

ただ、TV・CMへの露出が減少してきたことから、その人気も、相次ぐ人気メンバーの卒業により衰退してきているように感じられるため、AKB48は新たなブランディング施策の実施が必要となってくるでしょう。

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2015.05.19 | コラム
大阪府と大阪市の二重行政のムダを無くすことなどを目的に、大阪市の橋下市長が提唱した「大阪都」構想。その賛否を問う住民投票は、地方自治・住民自治についての新たな取組ということで、全国的にも注目されましたが、結果的には、得票数で1万票余り、得票率で0.8%ポイントの差で、反対が賛成を上回りました。

選挙や住民投票は、世論調査と異なり、どんなに僅差であっても、多くの票を獲得した方が「民意」を代表するというルールのもとに行われるものですから、制度上は、今回の住民投票の結果が、大阪市民の「民意」ということは疑いの余地がありません。

一方で、今回の投票行動を世論調査として見た場合、本当に今回の結果は「民意」を代表するものなのかを検証してみたいと思います。考え方としては、こんなイメージです。

今回、みなさんは大阪都構想に関する広告キャンペーンを行い、「賛成訴求」と「反対訴求」の2パターンの広告のA/Bテストを行い、どちらの方がより多くクリックされるかを検証することで、どちらの訴求の「ウケ」が良いかを見極めようとしています。

(A) 広告のインプレッション=当日有権者数(2,104,076人)
(B) 広告のクリック数=賛成・反対の票数
(C) 広告のクリック率= (B) ÷ (A)

広告の配信結果を集計してみたところ、各パターンの「クリック率」は、以下の通りとなりますが、

   賛成訴求:33.02%
   反対訴求:33.53%

ここで、マーケターとしては、反対訴求の「ウケ」が良かったので、今後の広告は反対訴求に「一本化」してしまって良いかどうかを決める必要があります。

こういう場合に、よく用いられるのが、統計の仮説検証というプロセスです。

これについては、以前、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の視聴率分析を例に解説した例がありますので、よろしければ、こちらも読んでみて下さい。

検証結果については、下図の通り、「99%の確率で反対訴求のクリック率が高いと言えるために必要な誤差の範囲を想定する」というかなり厳しい条件をつけた場合でも、反対訴求の広告のクリック率は33.40%〜33.60%の範囲に収まることとなり、レンジ内で最も低い場合でも、賛成訴求のクリック率=33.02%を上回ります。

<大阪都構想 住民投票結果の仮説検証>

つまり、反対訴求の広告のクリック率が賛成訴求を上回ったという結果は、統計的には99%の確率で正しいと考えられる、という結論が得られます。

ただ、悩ましいのは、全体のクリック数に占める「反対訴求」のクリックの割合は、50.18%〜50.49%と、確かに「賛成訴求」を上回ってはいるものの、その差は極めて僅かであり、果たして、広告を「反対訴求」に一本化することで、本当に消費者(有権者)から、そうしない場合に比べて、大きな支持を得られるのか、ということです。

少なくとも、これが広告運用の現場で起きたことであれば、いくら統計的に有意であっても、今回の結果だけで「反対訴求」に一本化しても、それほど大きな効果の改善にはつながらない可能性が高い、と考える人の方が多いのではないでしょうか?

一方、「制度上」では、大阪都構想はNO・大阪市は存続という「民意」が示された今回の住民投票。果たして、今後、大阪市政は「反対訴求」に一本化していくのでしょうか?

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2015.05.18 | コラム
全国的にも注目を集めた大阪都構想を巡る住民投票は、反対が賛成を上回るという結果となりました。

一方で、テレビ局が実施した年代別・男女別の出口調査の結果を見ると、20代〜60代までは、賛成が反対を上回っていたことから、ネット上では「現状を変えたくない老人たちに潰された。」「老害だ。」といった意見も多く見られますが、本当のところはどうだったのかを、データで検証してみたくなりました。

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