前回に続き、10月初めにアメリカ・ニューオーリンズで開催されたDMA(Digital & Marketing Association)の年次総会&THENの視察レポートをお届けします。
前回のレポートでもお伝えした通り、このカンファレンスでは、データドリブンマーケティングの戦略を考え、実施するためにマーケターが知っておくべきこと、が中心的なテーマとなっていました。
中でも、膨大なデータの収集・解析をもとに、マーケターが、最適・最良のユーザーエクスペリエンス(UX)を創造・提供するためのツールとして、AI(ここでは機械学習やディープラーニングなどを全て包含した概念と考えます)が果たす役割については、多くの登壇者が注目・言及していました。
一方で、AIの進化・普及により、今後、人間が行ってきた多くの仕事がAIに奪われるのではないか、といったことも言われていますが、これに異を唱えたのが、キーノートに登壇したインドのIT企業Wipro社のCMO Naveen Rajdev氏でした。
<Wipro社CMO Naveen Rajdev氏>
フォーチューン500にランクインしているアメリカの大手企業でも、売上や利益の低迷に苦しむ企業が少なくありません。技術の変化は早く、商品の寿命はどんどん短くなり、将来を見通すのは難しい時代になっています。
さらに厄介なことに、もはや、誰が自分たちの顧客で、誰が競合相手なのかさえ、非常に判りづらくなる中、「差別化」のための戦略を考え、実行することは、マーケターにとって最も難しい課題になっています。
“Growing is hard. Differentiation is harder.”
(企業を成長させることは容易ではないが、差別化することはもっと難しい。)
では、AIは、こうした難しい経営環境を打破するための戦略や方法を教えてくれるのでしょうか?これに対するRajdev氏の答えはNoです。
確かに、AIを活用することで、今あるトレンドの延長線上にある未来像は見えるようになるかもしれません。一方で、AIは、まだ「トレンド」にもなっていないものを見つけるのは苦手です。
いま、自社の商品やサービスに満足している顧客が、将来も、自社の商品やサービスを熱望してくれるという保証はどこにもありません。
ただ、Rajdev氏は、こうした状況を悲観している訳ではなく、むしろ『マーケターには、AIが逆立ちしても果たすことのできない役割があるじゃないか』と訴えているのです。
これからのマーケターが取り組むべきことは、Business Model Innovation。つまり、新しいビジネスモデルの創造である、というメッセージを残して、Rajdev氏は講演を終えました。
私たちも、このイベントで得た示唆をもとに、クライアント企業のみなさまと共に、新しいビジネスモデルの創造に向けた取組を重ねていきたいと思います。