2015.04.09 | UX
円安の進行や、東南アジア諸国における訪日ビザの緩和・羽田空港からの国際線増強などの影響により、海外から日本を訪れる旅行客は急速に増加しています。

2020年の東京オリンピックに向けて、日本への渡航者はさらに増えると期待されており、急拡大が見込まれる「インバウンド消費」を取り込もうと、弊社にも多言語でのサイト構築や、マーケティング戦略の企画・実施に関するご相談も増えています。

とはいえ、日本語で作ったサイトを各国語に翻訳しただけでは、言葉も習慣も異なる外国人利用者のココロをつかむことは難しいでしょう。そこで、弊社がお薦めしているのが、ターゲットとなる国や地域の外国人ユーザに、実際にウェブサイトを利用してもらう「行動観察調査」です。

「行動観察調査」とは、被験者に実際にウェブサイトを利用してもらい、その様子を観察した上で、直接インタビューも行うことで、サイトのコンテンツや使い勝手に関する問題点や改善点を素早く洗い出すことができる手法です。アクセス解析に関する過去データの蓄積が充分でない場合や、異なるターゲットの属性毎に反応の違いを見たいといった場合には、特に有効な調査手法と言えるでしょう。

先日、弊社では、香港や台湾などアジア圏の女性ユーザを対象に、あるサイトの行動観察調査を行いました。調査は、まず、対象となるウェブサイト上で、被験者にどういう「タスク」を行ってもらうかという課題の設定から始まります。

まずは課題の設定から

 被験者が課題を理解したところで、いよいよ、実際にサイトを使い始めてもらいます。

被験者がサイトを利用する様子は、ビデオカメラで録画すると同時に、別室にあるモニターにもリアルタイムで映し出されます。弊社のコンサルタントやデザイナーは、それを見ながら、課題の中で与えられた「タスク」をこなすために、被験者が、どういうコンテンツを、どういう順序で読んでいくのか、また「タスク」を完了するプロセスの中で、被験者が迷ったり、動きを止めたりする箇所はどこか、といったことをチェックしていきます。

被験者がサイトを利用する状況を別室でモニタリング

さらに、「タスク」を完了した後は、被験者とインタビューを行い、サイトのコンテンツや使い勝手に関する印象や感想をヒアリングします。特に、被験者が戸惑ったり、間違った操作をした箇所については、「何かわかりづらかったのか」といったことも念入りに聴き取ります。

被験者からのヒアリングで生の声を収集

このヒアリングは、アクセス解析などのデータだけでは知り得ない、様々な情報を収集できる絶好の機会となります。

特に、外国人利用者をターゲットする多言語サイトの場合、日本人の観点から良かれと思って作ったコンテンツが、想定通りの評価や成果につながらないという場面にしばしば遭遇します。

たとえば、外国人が何に対して「日本らしさ」を感じるかといった点は、インタビューをしてみると、我々日本人の想像とは全然違ったフィードバックが返ってくることも少なくありません。

今回の行動観察調査でも、「サイトに記載する一部のコピーは、あえて日本語の表記を残すことで、クールな印象を与え、それは、日本の商品やサービスに対する高い品質を想起させる」といった意見も出され、サイトのコンテンツやデザインを考える上で、大変参考になりました。

拡大が見込まれるインバウンド消費の取り込みに向けて、多言語サイトの構築やリニューアルを考えている方は、ぜひ、一度「行動観察調査」を行い、外国人ユーザのココロをつかむウェブサイト作りに活かすことをお薦めします。

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2015.03.26 | イベント
SESロンドン2日目の冒頭では、ブランドやメディア・エージェンシーなど、異なる立場でマーケティングに関わる4人のパネリストによるディスカッションが行われました。

モデレータ役を努めたMarin Software社のJon Myers氏から投げかけられた「ブランドが、多様なメディアを通じて一貫性のあるメッセージを伝えるために考えるべきことは何か?」という質問に応える形で、ディスカッションはスタートしました。

左から、Myer・Day・Murray・Gomez・Wallaceの各氏。

LEGO社で検索エンジンマーケティングを統括するGomez氏が、「LEGOでは、多様なチャネル・デバイスを通じて、共通のカスタマーエクスペリエンスを提供することが大切だと考えている。」と答えたのに続き、Facebookで金融関係のクライアントを担当しているDay氏は、昨年のスーパーボウルで、会場が停電した際にオレオが見せた当意即妙な対応を紹介し、「ブランドメッセージを効果的に伝えるためにはシチュエーションとの適合性が大切なのではないか」と答えました。

これに対し、Mindshare社でデジタル戦略を統括するWallace氏は、「ちょっと待ってよ。オレオの事例は確かに秀逸だと思うけど、あんなシチュエーションは滅多に起こらないのだから、あれを真似しようなどと考えない方が良い。」と切り返し、会場は笑いに。

するとMicrosoft のMurray氏は、「そもそも、検索エンジンやFacebook・Twitterなど、メディアによって、ブランドに関する情報を探そうとする人の目的や態度は違うはず。とすると、ブランドアイデンティティは1つでも、探されるシチュエーションごとに、コミュニケーションの方法やスタイルは変えるべきでは。」という問題を提起。

モデレータ役のMyers氏は、これを引き取って「ブランドメッセージは1つでも、その伝え方はオーディエンスによってパーソナライズが必要ということだね。」とまとめたところ、再び、MindshareのWallace氏は、「パーソナライズの重要性に議論の余地はないが、1to1の実現は言うほど簡単じゃない。だいたい、言わせてもらうと、Facebookは戦略や仕様を頻繁に変えすぎ。マネタイズの重要性も理解はするが、データにもとづくパーソナライズが実現できるよう、もっと努力して欲しい。」と厳しいツッコミをいれ、会場からは拍手も。

これに対してFacebookのDay氏は、「Facebook広告の出稿量が劇的に増える中、広告=ノイズにならないよう、適切なシチュエーションで広告を配信するようアルゴリズムの改良を進め、ブランドの期待に応えようと努力はしている。」と防戦に回る一幕も。

さらに「カスタムオーディエンスや類似ユーザーターゲティングといった機能も、積極的に活用して欲しい。」と、やや宣伝めいた発言をしたところ、MicrosoftのMurray氏は「みなさんがアドワーズやFacebook広告の最適化にかけている時間と労力のほんの一部をbing広告にも向けてくれれば、まだまだ成果はあげられると思いますよ。」という、これこそ「当意即妙」な発言で会場の笑いを誘ったところで、ディスカッションは終了となりました。

日本では、どうしても予定調和的になってしまいがちなパネルディスカッションですが、ユーモアをはさみながらも、時にガチンコで本音トークが始まるディスカッションが聞けるのも、海外カンファレンスならではの楽しみと言えそうです。

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2015.03.18 | イベント
前回はキットカットのソーシャルメディア戦略に関するセッションについてご紹介をしましたが、今回は、同じセッションに登壇したクチコミサイトYelpのソーシャルメディア戦略に関する講演内容にも触れてみたいと思います。

Yelpのソーシャルメディア戦略について話すAkenhead氏

登壇したAkenhead氏は、「Yelpを支えているのはレビューと、それを読み書きしている人たちのコミュニティ」であり、頻繁にレビューを書く「ヘビーユーザー」と良好な関係を築くことが、自らの最大のミッションであるとした上で、仕事を進める上で大切にしている3つの原則を紹介しました。

1. コミュニティを見つけてこちらから働きかけよ

クチコミサイトの利用者は、好きな時に、好きなことを、自分の感じたままに書き込むだけで、「本当はこうして欲しかった。」「こうすればもっと良くなる。」といったことを、わざわざ伝えにきてくれる訳ではありません。

たとえば、あるお店について、気になる評価やコメントが交わされているといったことを発見した場合には、こちらから、そういう書き込みをしている人たちに積極的に働きかけることで、彼らの「真意」を把握できる可能性が高まります。

2. 意見やアイディアを組み上げる仕組みを作る

Yelpにとって、ユーザーと同じくらい大切なのは、広告を出してくれる飲食店などのオーナー達ですが、ユーザーから、好き勝手な評価にさらされたり、「自分達からカネをむしり取ることばかりを考えている」とYelpを毛嫌いするオーナーも少なくないそうです。

そうしたオーナー達の理解や協力を得るための仕組みとして、Yelpでは、「モノ言うオーナー」達をアドバイザリーカウンシルのような組織に取り込み、彼らの意見を吸い上げるような機会を設けたりすることも有効だと言います。

3. 特にヘビーユーザーとの関係を大切にする

Yelpに書き込まれる「好き」「嫌い」というコメントや評価は、あくまでも各人の「主観的」な評価である訳ですが、一方で、読み手からすると、そうした評価も、お店の良し悪しを判断する「客観的」な基準として受け止められてしまう傾向があります。

主観にもとづく評価やコメント自体を変えたりすることはできませんが、頻繁にコメントを書くヘビーユーザーがネガティブな書き込み・評価をした場合には、他のユーザーにも少なからず影響を与えることになります。特にそうしたコメントに対しては、決して感情的にならず、丁寧な回答をすることが求められます。

クチコミサイトにおいては、ネガティブな評価やコメントへの対応が常に難しい問題となります。ネガティブなコメントや評価を受けたときほど、真摯かつ丁寧に回答することで、評価者本人の気持ちを変えることはできなくとも、そのやり取りを見ている他のユーザーに対しては、良い影響や印象を与えることができる可能性が高くなる、というアドバイスで、Akenhead氏は、講演を締めくくりました。

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2015.03.12 | イベント
消費者が、さまざまなデバイス・チャネルを通じて、商品やサービスに関する情報を探すことが当たり前になっている今日、業種や業態にかかわらず、ソーシャルメディア上に適切なプレゼンスを持っておくことが重要になっています。

こうした流れを受け、近年、SESにおいてもソーシャルメディア関連のセッションは「定番」となっています。

今年のSESロンドンでは、広告代理店JWTでソーシャルメディア戦略を担当するToby Chishick氏から、キットカットの取組を例に、大手のグローバルブランドが、ソーシャルメディアと、どのように関わっているかが紹介されました。

キットカットが大切にしているのは、”Embracing Internet Culture”、つまりブランド側から何かを押しつけるトップダウンのアプローチではなく、「ネット民」の好みや意見を尊重したボトムアップのアプローチにあると言います。

たとえばキットカットを使った面白い写真やコンテンツをネットユーザに自由に作らせて、さらに、ブランド自身もその拡散に手を貸すことで、自らのブランドを中心にネット上での対話が広がるような環境を作り、結果的にブランドの認知を高めたり、ファンを増やしたりすることを企図しています。

ネット民が面白いと思うならこんな写真も全然OK

キットカットにおいて、こうした取組が可能なのは、単に企画力が優れているといったことだけでなく、キャンペーンの内容や方向性について、キットカットはそれぞれの国や市場に、かなりの裁量権・決定権を与えていることが大きい、とChishick氏は強調します。

確かに日本でも、「きっと勝つと」という九州弁のゴロ合わせから始まったとされる、受験生にキットカットを送るという習慣を、ブランドが支援する形でキャンペーンとして展開するなど、日本特有の動きが見られますね。

また、キットカットのTwitterアカウントでは、昨年のスーパーボウルで、停電時の当意即妙な対応が話題となったオレオのTwitterアカウントと、三目並べ(いわゆる「○×ゲーム」)で対決するといったことも行っています。他ブランドとのコラボも厭わないという、こうしたお茶目な姿勢もまた、「ネット民」の心理を巧みについたものと言えそうです。

他のブランドとネット上で対決

一方で、「どこまでお茶目に振る舞うか」の線引きは難しく、その判断を誤ると、ネット民の不興を買い、ブランドイメージを毀損してしまうリスクもあります。

たとえば、2013年の9月11日に、米国の通信会社AT&T社が「同時多発テロを忘れない」と書いたツイートにスマートフォンの写真を掲載したことで、ネット民からは、「911を宣伝に利用するのか」といったバッシングを浴び、謝罪の上、Twitterやフェイスブックへの書き込みを削除する結果となりました。

どこまでお茶目に振る舞うかの判断は難しい

最後にChishick氏は、ソーシャルメディア上でブランドがプレゼンスを高めるためには、共感を呼ぶ良質なコンテンツや、イノベイティブな取組であることは非常に重要だが、一方でキャンペーンを企画・実施する担当者・チームには、「ネット民」の心理や行動特性について、充分な理解が求められると結んで、講演を終えました。

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2015.03.05 | イベント
SES長年の「伝統」にのっとり、今回のSESロンドンでも、大所高所からの戦略論だけでなく、日々、現場で様々なタスクに向き合うデジタルマーケティング担当者にヒントや気づきを与えてくれる、実務的なセッションが用意されていました。

その中の一つが、『Using Analytics to Make Sense of Your Audience Data(来訪者データから意味ある示唆を得るためのアクセス解析術)』と題されたセッション。

登壇した2名のスピーカーは、いずれも英国企業のいわゆる「ウェブ担当者」で、彼らが、日々、「サイトの価値」を高めるための施策を考えたり、あるいは、経営層に対して、「サイトの価値」を正しく理解してもらったりするために、データとどのように向き合っているのか、その取組が紹介されました。

特に面白かったのが、uswitch.comという比較サイトを運営するLukasz Zelezny氏の話。見た目は、こんな感じの人ですが、話を始めると、日々、データと丁寧に向き合っている様子がうかがえました。


その風貌とは裏腹に(?)、繊細な仕事ぶりが垣間見えたZelezny氏

彼は自社のアクセス解析データを前に、まずは、前月のセッション数を見せて、「ここからどんなストーリーが語れますか?おそらく、何も語れませんね?」と問いかけます。次に、前年同月比でセッション数が減少しているというグラフを見せて、「これで少し、何かストーリーは作れそうな感じがしますよね?」と続けます。

さらに、セッション数の減少に、直帰率の減少というグラフを重ね合わせることで、「直帰率の減少というデータが加わったことで、『(広告運用の見直しや流入キーワードの変化などにより)来訪者数は減ったけれども、よりターゲットにあった来訪者を獲得できたことで、実質的な閲覧者はむしろ増えた。』というストーリーが描けるようになるはず。」と。

一つデータが加わるごとに、ストーリーが深まっていく

最後にZelezny氏は、「目の前のデータを使って、チャートを量産したくなる誘惑に負けてはいけない。そのデータを加えることで、あなたが伝えたいストーリーに深みが増すかを吟味せよ。」という言葉でプレゼンを締めくくりました。

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