2015.03.18 | イベント
前回はキットカットのソーシャルメディア戦略に関するセッションについてご紹介をしましたが、今回は、同じセッションに登壇したクチコミサイトYelpのソーシャルメディア戦略に関する講演内容にも触れてみたいと思います。

Yelpのソーシャルメディア戦略について話すAkenhead氏

登壇したAkenhead氏は、「Yelpを支えているのはレビューと、それを読み書きしている人たちのコミュニティ」であり、頻繁にレビューを書く「ヘビーユーザー」と良好な関係を築くことが、自らの最大のミッションであるとした上で、仕事を進める上で大切にしている3つの原則を紹介しました。

1. コミュニティを見つけてこちらから働きかけよ

クチコミサイトの利用者は、好きな時に、好きなことを、自分の感じたままに書き込むだけで、「本当はこうして欲しかった。」「こうすればもっと良くなる。」といったことを、わざわざ伝えにきてくれる訳ではありません。

たとえば、あるお店について、気になる評価やコメントが交わされているといったことを発見した場合には、こちらから、そういう書き込みをしている人たちに積極的に働きかけることで、彼らの「真意」を把握できる可能性が高まります。

2. 意見やアイディアを組み上げる仕組みを作る

Yelpにとって、ユーザーと同じくらい大切なのは、広告を出してくれる飲食店などのオーナー達ですが、ユーザーから、好き勝手な評価にさらされたり、「自分達からカネをむしり取ることばかりを考えている」とYelpを毛嫌いするオーナーも少なくないそうです。

そうしたオーナー達の理解や協力を得るための仕組みとして、Yelpでは、「モノ言うオーナー」達をアドバイザリーカウンシルのような組織に取り込み、彼らの意見を吸い上げるような機会を設けたりすることも有効だと言います。

3. 特にヘビーユーザーとの関係を大切にする

Yelpに書き込まれる「好き」「嫌い」というコメントや評価は、あくまでも各人の「主観的」な評価である訳ですが、一方で、読み手からすると、そうした評価も、お店の良し悪しを判断する「客観的」な基準として受け止められてしまう傾向があります。

主観にもとづく評価やコメント自体を変えたりすることはできませんが、頻繁にコメントを書くヘビーユーザーがネガティブな書き込み・評価をした場合には、他のユーザーにも少なからず影響を与えることになります。特にそうしたコメントに対しては、決して感情的にならず、丁寧な回答をすることが求められます。

クチコミサイトにおいては、ネガティブな評価やコメントへの対応が常に難しい問題となります。ネガティブなコメントや評価を受けたときほど、真摯かつ丁寧に回答することで、評価者本人の気持ちを変えることはできなくとも、そのやり取りを見ている他のユーザーに対しては、良い影響や印象を与えることができる可能性が高くなる、というアドバイスで、Akenhead氏は、講演を締めくくりました。

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2015.03.12 | イベント
消費者が、さまざまなデバイス・チャネルを通じて、商品やサービスに関する情報を探すことが当たり前になっている今日、業種や業態にかかわらず、ソーシャルメディア上に適切なプレゼンスを持っておくことが重要になっています。

こうした流れを受け、近年、SESにおいてもソーシャルメディア関連のセッションは「定番」となっています。

今年のSESロンドンでは、広告代理店JWTでソーシャルメディア戦略を担当するToby Chishick氏から、キットカットの取組を例に、大手のグローバルブランドが、ソーシャルメディアと、どのように関わっているかが紹介されました。

キットカットが大切にしているのは、”Embracing Internet Culture”、つまりブランド側から何かを押しつけるトップダウンのアプローチではなく、「ネット民」の好みや意見を尊重したボトムアップのアプローチにあると言います。

たとえばキットカットを使った面白い写真やコンテンツをネットユーザに自由に作らせて、さらに、ブランド自身もその拡散に手を貸すことで、自らのブランドを中心にネット上での対話が広がるような環境を作り、結果的にブランドの認知を高めたり、ファンを増やしたりすることを企図しています。

ネット民が面白いと思うならこんな写真も全然OK

キットカットにおいて、こうした取組が可能なのは、単に企画力が優れているといったことだけでなく、キャンペーンの内容や方向性について、キットカットはそれぞれの国や市場に、かなりの裁量権・決定権を与えていることが大きい、とChishick氏は強調します。

確かに日本でも、「きっと勝つと」という九州弁のゴロ合わせから始まったとされる、受験生にキットカットを送るという習慣を、ブランドが支援する形でキャンペーンとして展開するなど、日本特有の動きが見られますね。

また、キットカットのTwitterアカウントでは、昨年のスーパーボウルで、停電時の当意即妙な対応が話題となったオレオのTwitterアカウントと、三目並べ(いわゆる「○×ゲーム」)で対決するといったことも行っています。他ブランドとのコラボも厭わないという、こうしたお茶目な姿勢もまた、「ネット民」の心理を巧みについたものと言えそうです。

他のブランドとネット上で対決

一方で、「どこまでお茶目に振る舞うか」の線引きは難しく、その判断を誤ると、ネット民の不興を買い、ブランドイメージを毀損してしまうリスクもあります。

たとえば、2013年の9月11日に、米国の通信会社AT&T社が「同時多発テロを忘れない」と書いたツイートにスマートフォンの写真を掲載したことで、ネット民からは、「911を宣伝に利用するのか」といったバッシングを浴び、謝罪の上、Twitterやフェイスブックへの書き込みを削除する結果となりました。

どこまでお茶目に振る舞うかの判断は難しい

最後にChishick氏は、ソーシャルメディア上でブランドがプレゼンスを高めるためには、共感を呼ぶ良質なコンテンツや、イノベイティブな取組であることは非常に重要だが、一方でキャンペーンを企画・実施する担当者・チームには、「ネット民」の心理や行動特性について、充分な理解が求められると結んで、講演を終えました。

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2015.03.05 | イベント
SES長年の「伝統」にのっとり、今回のSESロンドンでも、大所高所からの戦略論だけでなく、日々、現場で様々なタスクに向き合うデジタルマーケティング担当者にヒントや気づきを与えてくれる、実務的なセッションが用意されていました。

その中の一つが、『Using Analytics to Make Sense of Your Audience Data(来訪者データから意味ある示唆を得るためのアクセス解析術)』と題されたセッション。

登壇した2名のスピーカーは、いずれも英国企業のいわゆる「ウェブ担当者」で、彼らが、日々、「サイトの価値」を高めるための施策を考えたり、あるいは、経営層に対して、「サイトの価値」を正しく理解してもらったりするために、データとどのように向き合っているのか、その取組が紹介されました。

特に面白かったのが、uswitch.comという比較サイトを運営するLukasz Zelezny氏の話。見た目は、こんな感じの人ですが、話を始めると、日々、データと丁寧に向き合っている様子がうかがえました。


その風貌とは裏腹に(?)、繊細な仕事ぶりが垣間見えたZelezny氏

彼は自社のアクセス解析データを前に、まずは、前月のセッション数を見せて、「ここからどんなストーリーが語れますか?おそらく、何も語れませんね?」と問いかけます。次に、前年同月比でセッション数が減少しているというグラフを見せて、「これで少し、何かストーリーは作れそうな感じがしますよね?」と続けます。

さらに、セッション数の減少に、直帰率の減少というグラフを重ね合わせることで、「直帰率の減少というデータが加わったことで、『(広告運用の見直しや流入キーワードの変化などにより)来訪者数は減ったけれども、よりターゲットにあった来訪者を獲得できたことで、実質的な閲覧者はむしろ増えた。』というストーリーが描けるようになるはず。」と。

一つデータが加わるごとに、ストーリーが深まっていく

最後にZelezny氏は、「目の前のデータを使って、チャートを量産したくなる誘惑に負けてはいけない。そのデータを加えることで、あなたが伝えたいストーリーに深みが増すかを吟味せよ。」という言葉でプレゼンを締めくくりました。

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2015.02.26 | イベント
今週からは、2月10日と11日の2日間に渡って開催されたSESロンドンで印象に残ったセッションの様子を、順次レポートしていきたいと思います。

初日の基調講演に続いて行われたセッションでは、英国のウェザーチャンネル社が、天候データを広告配信の最適化に活用した事例が紹介されました。

Weather FXの開発経緯について話すRoss Webster氏

明日の天気を予測しようという人類の試みの歴史は古く、紀元前のバビロニア時代には、既に天気予報が存在していたことが分かっているそうです。さらに、商売人たちは、天候と商品の売れ行きとの関係を分析することで、天気予報をもとに、売れ筋の商品も予測しようと務めてきました。

それでも、これまでは、天気予報を見て、売上が増えそうだと期待される商品を多めに仕入れたり、作ったりして、お客を待つことしかできませんでした。

そこで、ウェザーチャンネルが作りあげたのがWeather FXというシステムでした。これにより天気予報のデータから、売上が伸びそうだと予測される商品の広告を配信、できれば、さらに売上を伸ばせるのではないかと考えた訳です。

Weather FXを使って広告を出すことで、たとえば、ロンドンで雪の天気予報が出た時、食品メーカのHEINZでは、体が温まるスープの広告を、一方、タイヤメーカのMichelinでは、冬用タイヤの広告を配信する、といったことが可能になります。これによって、広告のクリック率は4倍も上昇したそうです。

また、パンテーンが実施した、”Beautiful Hair ? whatever the weather”(どんな天気でも美しい髪を)というキャンペーンでは、ウェザーチャンネルのスマートフォンアプリで、ユーザーの所在地データにあわせたピンポイントの天気予報とあわせて、お薦めのヘアケア商品の広告を配信するという試みを実施しました。

パンテーンのキャンペーン実施例

パンテーン社は、地域ごとの天気に合わせたお薦め商品の広告を配信することで、売上が28%伸びたとしており、効果の高いマーケティングキャンペーンに対して与えられるエフィー賞の受賞にもつながりました。

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2015.02.26 | イベント
ルグラン、SESロンドン視察ツアーの最終日は恒例の企業訪問。今、注目されているロンドンのエージェンシーやメディアを訪問し、経営陣やマーケターからネット先進国であるイギリスのマーケティング事情を学ぶことを目的に、これまでAKQAをはじめ、数々の企業を訪問してきました。

今回は、ヨーロッパ各国で検索連動型広告の立ち上げに成功したOverture時代の友人、また、イギリスネット業界の重鎮である、Nick Hynesが2009年に立ちあげたモバイルアプリ開発会社、Somoの新オフィスを中心にミーティングを企画。イギリスのマーケティング最新事情について聞くことができました。

Somoオフィスから見下した景色。エリザベス女王を乗せたヘリが、バッキンガム宮殿の敷地内に着陸するシーンに遭遇することもあるとのこと

訪問先の一つであるADBRAINは、2012年に設立されたベンチャー企業。彼らは自分達のことを「device matching company」と呼び、クロスディバイス毎にまたがるクッキー情報を基に、同一人物のものかどうかをアルゴリズムにより結びつけ、効率的に広告を配信するサービスを提供しています。

さまざまな興味深い事例紹介を聞いた後、Somoの技術開発が行われているバッキンガム宮殿を見下ろす部屋、「LABO」を見学。まだ、市場に出ていないものも含め、数々のガジェットが並べられている「LABO」は、新しい技術の研究をしています。

また、社員が「LABO」に集まり、アイディアを出し合う「HACK DAY」を定期的に設け、クライアントへの提案に繋げたり、更には、クライアントを招待し、最新の技術を紹介し、一緒にブレーンストーミングをする等、新しいサービスを次々に生み出すための重要なスペースになっているようです。

ツアー参加者の皆さんにも、SomoがクライアントのAudi向けに開発したサービスのいくつかを実際に体験していただきました。あまりにリアルなコンテンツに、試した方々は驚き、また、それを見ている周りの人達はその反応を見て大爆笑。非常に楽しい一時となりました。

「LABO」の責任者が、最新ガジェットやアプリを紹介してくれました

ルグランの海外ツアーでは、カンファレンスに参加するだけでなく、毎回企業訪問を企画しています。たくさんの企業を短時間に訪問する表面的な企業訪問ではなく、1社あたり1時間以上の時間を取り、CEOやマーケティング責任者、実際に運用している担当者に直接質問する時間を創ることで、グローバルなネットワークを広げ、新たなアイディアが生まれるきっかけになればという思いで、企画しています。

ご興味がある方は、次回はご一緒にいかがですか?

【お問い合せはこちら】
メール:info@LeGrand.jp
電話:0120-066-898



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