2014.12.24 | 一般
東京オリンピック招致の決め手にもなったと言われる「お・も・て・な・し」という言葉。しかし、日本人は本当におもてなし上手なのでしょうか?

日本では、温泉旅館などに行くと、玄関に従業員が並んでお出迎えをしてくれたり、部屋に入ると、和服を着た女将が、三つ指をついて挨拶をしてくれたりします。確かに、こうした光景は、外国人から見ると、非常に珍しく、新鮮に映るのかもしれません。そのため外国人の中には「日本に旅行をしたら、想像を超えるおもてなしを受けた。」と感じる人も多いのでしょう。

しかし、こうした外国人観光客の反応を真に受けて、日本人は、自分達がおもてなし上手だと勘違いをしているのではないでしょうか?

確かに、温泉旅館での接客は、海外のホテルなどでは見られない「独特なもの」であることは事実です。しかし、「おもてなし」を、「相手が求めるものを察して、必要な情報やサービスを求められるタイミングで提供すること」と定義した場合、こうした旅館での接客は、一見「丁寧」には見えても、実際には、非常に画一的な対応で、一人ひとりのニーズに対応するという細やかなおもてなし、とは言えません。

そして、ネットを見ても、こうした十把一絡げの対応しかできていない、残念なケースは枚挙に暇がありません。

顧客や投資家、就活中の学生など、誰が訪れても、同じコンテンツしか見せようとしない企業サイト。PCサイトのコンテンツをレスポンシブ対応するだけで済ませてしまっているスマートフォンサイト。こちらの興味・関心などお構いなしに、金融商品から健康食品まで、何でも売りつけようと連日メールを送りつけてくる某大手ショッピングモール、などなど。

今から15年も前に出版された『Permission Marketing』という本の中で、セス・ゴーディンは、次のように書いています。

Interactive technology means that marketers can inexpensively engage consumers in one-to-one relationships fueled by two-way conversations
(テクノロジーの進歩によって、マーケターは、安価なコストで、双方向の対話を重ね、消費者とワン・トゥ・ワンの関係を築くことが可能になっている。)

過去15年の間に、テクノロジーは、おそらくセス・ゴーディンが予測した以上のスピードで発展し、今日、マーケターは、ネット上のデータから、消費者理解に必要な様々な情報を取得することが可能となり、更には、そうした情報をもとに、ワン・トゥ・ワンのマーケティングを実践するための技術やツールも手にしました。

にもかかわらず、今日においても、「相手が求めるものを察して、必要な情報やサービスを求められるタイミングで提供する」という真のおもてなしが実現できていないのは、テクノロジーを使いこなす立場にあるマーケターの意識が変わっていないことにあるからです。

そういう意味で、2015年は、日本のマーケターが「自分達はおもてなし上手である」という勘違いから目を覚まし、本当の「お・も・て・な・し」とか何なのかを真摯に考え、そして行動に移せるかどうかが試される年になるでしょう。

そうした意識の変革がなければ、「マーケティングオートメーション」や「パーソナライゼーション」も、その実現を支える秀逸なテクノロジーがありながら、一時の「流行」で終わってしまうか、あるいは、執拗に消費者を追い回すだけのスパム製造機になるだけ、ということにもなりかねません。。。

この年末年始、本当の「お・も・て・な・し」について、少し立ち止まって、考えてみませんか?



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