2017.03.09 | コラム

日本酒を飲まない方でも、「獺祭」という名前の日本酒を知っている方は多いのではないでしょうか。

日本酒の販売量は、1975年から3分の1に落ち込み、酒蔵も減少傾向にあります。一方で、山口県の奥深い森の中で作られている獺祭は、雑味の無い澄んだ味わいにより、山口の名酒として、長く日本人に親しまれています。今では海外でも高い評価を受け、ヨーロッパで最も権威のある食品コンクール、モンドセレクションで金賞受賞しており、また、今春には世界的なフランスのシェフとの共同で、パリに獺祭を扱う店舗をオープンするとのこと。

しかし、今でこそ海外で高い評価を受けている獺祭ですが、当初はかなり苦戦を強いられたようです。日本食のお店が多くあるニューヨーク。いざ販促活動を行うと、「日本酒の繊細な味の違いは、ニューヨークの人にはわからないだろう」と言われたといいます。

確かに、現地で売られているウォッカなどの蒸留酒と比べると高値です。また、「味は確かだから、飲んでもらえれば分かるはず」と語ったところで分かってもらえるものでも無いでしょう。なぜなら、そこにはハイコンテクスト・ローコンテクストの違いがあるからです。

先日、日本酒を多く扱う居酒屋へ訪れた時のことです。数十種類の銘柄が記載されているメニューを見ていると、「獺祭」と書かれた文字は、他のお酒と比べ大きく強調されており、値段も割高となっていました。一方で、他のお酒とは違う表記を見ても、多くの日本人はそれを不思議だとは思わないでしょう。実際に私も全く不思議に思いませんでした。なぜなら、わざわざ説明されなくとも、日本人であれば、獺祭という日本酒は味が良く、品質も良いという共通意識を、言葉を交わさなくとも持っているから。この状態がハイコンテクストとなります。

反対に、ニューヨークの人は日本酒や獺祭というのがどういうものなのか、そもそも分からないので、獺祭の価値を共有することができず、ローコンテクストな状態です。この状態でいくら「獺祭とは素晴らしいものである」とハイコンテクストに伝えた所で、理解してもらえないのは当然です。

日本料理と日本酒を一緒に楽しんでもらうというようなイベントを積極的に実施したことにより、徐々に「獺祭」というブランドが広まったとのことですが、このコンテクストの違いは、日本製品やサービスを海外に進出させる際に、意識すべきポイントの一つなのではないでしょうか。

ルグランでは海外経験の多いスタッフや、LAにデザインセンターも構えておりますので、海外進出で何かお困りの方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。

[参考]

旭酒造

日本経済新聞

Biz STYLE 「背水の陣で臨んだ海外戦略」



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