2018.11.27 | コラム

最近、ある方に「オムニチャネル」という言葉もだいぶ手垢がついてきた感じですね、という話をしたら、いやいや「オムニチャネル部長」という肩書きのポジションをこれから作ろうしている会社もあるんですよ、と聞かされました。

もちろん、顧客やユーザーに対して、リアル・デジタルの分け目なく、一体したサービス体験・利用体験あるいはショッピング体験を提供しよう、と考えること自体は間違いではありません。「オムニチャネル部長」という役職も、そうした取組の旗振り役として設けられたのかもしれません。

ただ、昨今の「オムニチャネル的」な取組を見ていると、これまで、ネット上の世界で繰り広げられてきた、企業側の都合による広告・プロモーション的なメッセージの垂れ流しが、「オムニチャネルの推進」という名のもとに、リアルの垣根を乗り越えて溢れ出そうとしているのではないかという悪い予感がしてなりません。まさにノイズのオムニチャネル化です。

データドリブンマーケティングということが言われるようになって久しいですが、本来ここで期待されていたことを思い返してみましょう。

インターネットやデジタルデバイスの普及によって、様々なデータが取得・蓄積可能になったことで、人々の属性やプロフィールだけでなく、コンテクスト、つまり、ある商品やサービスが求められる理由や背景や、その検討状況までもが理解できるようになり、ワントゥワンに近いコミュニケーションを不特定多数の人達を相手に実現できるようになることが期待されたはずでした。

しかし、現実は、1度来訪したウェブサイトや閲覧した商品に関する広告に延々と追い回される「リターゲティング広告」の蔓延に代表されるように、取得されたデータは、「顧客理解」のためではなく、単なる「ターゲティング(狙い撃ち)」のために使われています。

最近、こうした「顧客理解を伴わない狙い撃ち」のオムニチャネル化の危険性感じるのが、LINE Beaconを使ったコミュニケーションです。

先日、表参道近辺でタクシーに乗っていたら、どうやらルイ・ヴィトンの店の前を「通過」したらしく、LINE Beaconが反応しました。

タクシーに乗っていてヒマだったこともあり、「ルイ・ヴィトンからのお知らせ」って何だろうとクリックしてみると、まずは、友だちに追加せよとのこと。

で、追加してみると、バラバラと、いくつかメッセージが送られてきましたが、要するに壁紙をやるからアンケートに答えよということらしい。

つまり、ルイ・ヴィトンの店舗の近くを通るLINEユーザーを片っ端から「ターゲット」して、「ルイ・ヴィトンからのお知らせ」があるよという文句でユーザーを釣り上げ、結局やったことは、友だちに追加させて、アンケートに答えさせるという「要求」ばかりで、こちらの期待やニーズに応えるような「オファー」は何もなかったという顛末。

一人ひとりのユーザーや顧客のコンテクストまで理解をして、この場所・このタイミングしかあり得ないというベストなオファーをする、という思想が感じられない、このようなオムニチャネル化の行き着く先は、企業のご都合による垂れ流しの蔓延であり、ユーザー体験としては、むしろマイナスのような気がしてなりません。

データドリブンなマーケティングを考えるならば、ぜひとも、取得・蓄積されたデータにもとづく「顧客理解」を踏まえた提案やオファーに繋げる施策を考えたいものですね。

ルイ・ヴィトン様。
ご相談をお待ちしております。



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