ルグラン・インターンの木倉です。
みなさん、チャットボットって知っていますか?
簡単に言うと、テキストや音声をとおして、会話を自動的に行うプログラムのことです。
最近になって企業のサイト等でよく見かけるようになったチャットボットですが、本当にユーザーのニーズを満たせるものになっているのでしょうか。
私はといえば、簡単な質問をしているはずなのに「すみません、おっしゃっている意味が分かりません」のような返答をされてしまい、もやもやした経験は1度ではありません。
Why chatbots fail の記事では、チャットボットが理想的なUXの提供につながらない場合が多いのはどうしてなのかを分析しています。今回のブログでは、その分析をもとに、UXの視点からのチャットボットを考えてみます。
1.AIの本格導入が進んでいない
ほどんどのチャットボットは、まだ十分な知的能力を備えていません。
多くのチャットボットは意思決定ツリー、つまりAと言われたらBと返す、という条件反射的なロジックに基づいて構築されています。例えば、ユーザーからのメッセージに「ショップ」または「購入」というという単語が含まれている場合、製品リストを含むメッセージを送る、など。
こうした、条件反射的な受け答えしかできないタイプのボットの能力は、ボットを開発したデザイナーやプログラマーが、潜在的なユーザーのユースケースを予測して、どのような想定問答を用意できたのかによって決まってしまいます。
AIが自然言語を理解・学習して、徐々に適確な受け答えができるよう成長していく、といったボットは、まだ珍しい存在です。
2.解決すべき課題の設定が不充分
世界中のデザイナーや開発者は、チャットボットの技術にとても注目しています。新しい技術が生まれたときに例外なく起こることですが、その技術でどういう課題を解決するかという議論が尽くされないまま、導入すること自体が目的化し、多くの企業が我先にボットの展開を成功させようと躍起になっています。
この過程で私たちは、話ならないほどお粗末なエクスペリエンスしか提供できないボットをたくさん見かけることになるでしょうが、そうした失敗から学んでいく以外に近道はありません。
3.透明性の欠如
成功しているボットは、どれもユーザーと対話している相手が人間ではなくロボットであるということを明確にしています。ユーザが過度な期待をしないように配慮することで、ボットの間違いについて寛容になってもらうことができるからです。
開発者としてはユーザーに「人間と対話している」と思わせたいでしょうが、見栄を張ることは、逆に信頼の喪失につながる可能性があります。
4.ボットは文脈や背景を理解できない
人間同士の会話はほんとうに、さまざまな文脈や背景の理解によって支えられています。だからこそ、私たちは無意識のうちに皮肉を理解したり、行間を読んだりすることができます。
ボットでは、自然言語処理技術を用いている場合を除いて、ボットに入力されたいくかの文や言葉以外から、ユーザーの意図や状況をくみ取ることはできません。ボットがしばしば、トンチンカンな回答をしてしまうのは、このためです。
5.チャットボットが既存のシステムと連携していない
チャットボットの導入を考える際、既存のシステムとは独立した新たな仕組や機能を開発しようとする傾向があります。
あなたがスパの予約をとるためのチャットボットを作成しているとします。このチャットボットがスパの予約システムと連携できるようになっていなければ、ビジネスオーナーがチャットボット側のリクエストを処理するために、新たな作業を増やすだけということになりかねません。
既存のシステムとは全く連携できないチャットボットなど、提供する側にとっても、利用する側にとっても、扱いが面倒なだけで、むしろツールやサービス全体のUXを悪化することになりかねません。
6.ボットでなんでも解決できるようにしようとする
ボットでなんでも解決できるようにしようとするあまり、何を解決しようとするものなのか曖昧になってしまい、結局役にたたないボットが完成してしまうことがあります。
7.ユーザーは、人間に説明してほしいと思っている
機能に不具合が生じた場合、ユーザーは問題解決のために、人間に頼りたいと考えます。それなのに、ボットで対応しきれない時に人間が会話を引き継げるようになっているボットはごくわずかです。
このように現時点での状況をみていると、本当にUXの改善につながるようなチャットボットが普及するまでには、まだ暫く時間がかかりそうです。しかし、近い将来、会話の中で自然にユーザーの課題や疑問を解消できるようになれば、それがとても魅力的なコミュニケーション手段になることは間違いありません。そういう意味で、チャットボットの進化の動向には、今後も注目していきたいですね。
ルグランでも、チャットボットの導入戦略や開発方針策定をはじめとするウェブサイトやアプリのUI/UX調査や、デザイン・設計のお手伝いをしています。ぜひ、ご相談ください