2019.08.27 | イベント

「今年もやります!カンヌライオンズ報告会:カンヌウォッチャーがどこよりも早く包括的に解説」を8/8(木)に開催。元カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員で多摩美術大学教授の佐藤達郎さん、株式会社DECEM 取締役CCO 小川丈人さんのご講演、ならびに弊社共同代表泉のショートプレゼンと、この登壇者3名によるパネルディスカッションを行いました。

2回目となる本セミナーレポートでは、佐藤達郎さんのセッション内容をご紹介いたします。

カンヌライオンズに計18回参加しているという佐藤さんは「現代の広告コミュニケーションは多面体であり、その多面体をあらゆる視点で評価するものこそ、カンヌライオンズである」とセッションをスタートしました。

一方で、カンヌライオンズは銅賞以上の受賞作は約1,000点あり、全部をチェックすることは不可能に近いとのこと。なので、佐藤さんは毎年、複数受賞した話題作をウォッチし、そこからなんらかの特徴を見いだし、その特徴を視点に他の受賞作を見るようにしているとお話されていました。

■「ブランドパーパス」の重要性

今年のカンヌライオンズにおいては、あちこちで「パーパス(ブランドの存在理由)」がフォーカスされていたとのこと。そこで、今年のカンヌを席巻したパーパスを示した事例の中から、NIKEの「Dream Crazy」をご紹介。

事例:Dream Crazy|NIKE

概要:NIKEのタグラインである”Just Do It”の導入30周年を記念し、NIKEは多くのスポーツ選手を起用して屋外看板やCMといった様々なコンテンツを制作しました。中でも注目を集めたのはアメフト選手であるコリン・キャパニックを起用したもの。この選手は2016年の試合で、差別反対の意思を示すため、国歌斉唱をすることを拒否したことで、事実上の引退に追い込まれました。そのキャパニックをメインに起用したことで、様々な批判が起こりましたが、著名人などがNIKEの姿勢を応援するようになり、売り上げが徐々に回復し、結果的に株価も施策前より上昇したという事例です。

世間ではNIKEが政治的な発言をしたという文脈で語られがちな事例ですが、佐藤さんからすると、NIKEが強烈なパーパス(ブランドの存在意義)を主張したと考えられ、今後もこのパーパスは重要なキーワードとしてあり続けそうだとのこと。

■「エグゼキューション」の逆襲?

昨今、綺麗な映像で編集力の高いCMのような、誰が見ても素敵な表現をするより、何か具体的なアクションを起こした方がいい、と考える傾向があったようです。ただ今年においては、やはり表現(=エグゼキューション)が重要である、という傾向が再燃してきたと感じたそうです。

その最たる例としては、前回のレポートでご紹介した、フィルムとフィルム・クラフト部門で二冠の「The truth is worth it」がありますが、今回はイギリスのデパートであるJohn Lewisのフィルムを紹介。

事例:Boys and the Piano|John Lewis

概要:イギリスの百貨店チェーンであるJohn Lewisは、毎年、クリスマスプレゼントを促す動画を公開しています。今回は世界的なシンガーであるエルトン・ジョンを起用し、彼の生涯を描きながら、ある種のプレゼントは誰かの人生を変えるかもしれない、というようなメッセージ性のあるフィルムを作成。仕上がりの美しさや動画の力が感じられる事例となり、フィルム部門でゴールドを獲得しています。

■「メディア概念」の大拡張

今年話題となった作品の中には、いわゆる4マスのメディアや、デジタル系の広告メディアの枠を超えた、”乗っかりクリエイティブ”と考えられる作品が見られたとのこと。この領域の事例として、Wendy’sが人気オンラインゲームをメディア化し、ソーシャル&インフルエンサー部門でグランンプリを獲得した「Keeping Fortnite Fresh」をご紹介いただきました。

事例:Keeping Fortnite Fresh|Wendy’s

概要:フォートナイトは、登録ユーザー数が2億人を超えているという世界的な大ヒットオンラインゲーム。一方Wendy’sは、ゲーム内でWendy’sのキャラクターである赤毛の女の子そっくりのアバターを作成し、ゲーム内にある冷凍庫を破壊し尽くしました。Wendy’sが伝えたかった「ハンバーガーには冷凍肉を使うべきではない、我々は使っていない」というメッセージを、いわゆるメディアではなく人気のゲーム内で伝えました。

20世紀においては4マスと呼ばれたマスメディアしか情報の伝達手段がほぼなく、その後にデジタルメディアやSNSが加わってきましたが、今や”メッセージの乗り物”としてのメディアは、人気のオンラインゲームをはじめ、何でもがなり得る時代になってきたのでは、と佐藤さんは語られていました。

カンヌライオンズに長年参加している”カンヌウォッチャー”ならではの視点でご解説いただい佐藤さんセッションでは、参加者の皆さんが熱心にメモを取る姿が印象的でした。

次回は弊社共同代表 泉のショートプレゼンとパネルディスカッションのレポートとなります。どうぞお楽しみに!

小川丈人氏のセミナーレポートはこちら

泉のセミナーレポートはこちら



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