2020.07.21 | イベント

先週7/17(金)に開催した第4回ルグランモーニングセミナー 『ユーザー視点でサービス開発・システム開発を成功させるために必要なこと』のレポートをお届けします。今回は坂東技術士事務所代表の坂東大輔氏をゲストにお迎えし、ユーザー視点に立ったサービスやシステム開発の進め方についてお話いただきました。

坂東さんは、日立ソリューションズ勤務後、ITベンチャーのCTOを経て、現在はフリーのITコンサルタントとしてご活躍されています。専門はUX/UIやIoT、AIなどと幅広く、また、UXやシステム開発に関する本も執筆されています。

UXとは何か?

まずはUXの定義について。板東さんが確認しただけでも20種類以上の定義があるそうですが、その中で、ISOで定義されている「製品、システム、サービスを使用した、及び使用を予期したことに起因する人の近くや反応」というものや、D.A.ノーマン博士による「UXはエンドユーザーと企業及びそのサービスや製品との相互作用の全ての側面を包括している」などが比較的知られています。

ただ、これらも、まだ抽象的でわかりづらいことから、坂東さん自身がUXを説明する際は、『ユーザーが製品やサービスから得られる全ての体験』、という伝え方をされているそうです。因みに、UIはUXの一要素に過ぎません。ですので、どんなに洗練された画面デザインであっても、レスポンスタイムが悪く、イライラしてしまうようなサービスは、UXが良いとは言えません。UIが100点だからといってUXも100点になるとは限らない、という訳です。

21世紀になってUXがますます重視されている理由

昔も今も、UXが重要であること自体に変わりはありませんが、かつては、お金を払って製品やサービスを手にするまで、UXの悪さがバレないことが多く、このため、どんなに悪いUXであったとしても、とりあえず売上を稼ぐことも可能でした。

一方、現在は、ソフトウェアから自動車まで、様々なサブスクリプションサービスが登場している他、とりあえずソフトウェアやサービスを無料で試せるフリーミアムモデルやオンラインサービスなど、ユーザーがいつでも退会・解約ができるサービスが増えています。UXが悪ければ、ユーザーにお金を払ってもらうことが出来なくなるため、以前と比べ、UXは経営に直結する重要な課題になっていることがわかります。

UXを向上させるための基本動作

次に、坂東さんの実務経験からUXを向上させるためのシステム開発・サービス開発のプロセスについてご紹介いただきました。

まずは、ユーザーがアクションを取りそうな「ユースケース」を網羅的に洗い出し、そのユースケースを詳細化したシナリオを作成します。それをもとに、ユーザーがわかりづらいと感じるポイントがないかをチェックリストで確認しながら、UXテストを実施。最後に品質評価を行い、設計の改善へ。作りたいものや作れるものを作ってしまうのではなく、このような、検討過程を経て、最良のUXを実現するようなシステム・サービスを開発していくことが重要であるとのこと。

今日、技術的な優位性だけで製品やサービスの差別化を図ることは、ますます難しくなっており、システムやサービスの設計段階で、どこまでしっかりとしたユースケースを書けるかが、UXの向上に繋がる鍵となります。

UXは21世紀のリベラルアーツである

古代社会において、奴隷と自由市民を分けるものは教養とされていました。「奴隷ではない自由人となるためには、幅広い教養が必須不可欠」という意味で、教養=リベラルアーツと呼ばれるようになったそうですが、現代社会においても、人々が自由に技術やサービスを使えるようにするための教養としてUXがある、と坂東さんは考えているとのこと。

最後に、板東さんからは、「あんみつ」を例にUXの考え方についてお話を頂きました。

甘味屋さんとしては、どうやって美味しいあんみつを作るかということばかりを考えがちですが、どんなにあんみつが美味しいお店でも、店員の態度が悪かったり、出されたお水がまずければ、結果としてお店全体のUXが悪いものとなり、お客さんを満足させることは難しくなります。

同様に、多くの日本企業においても、製品の機能や性能を高めることには熱心ですが、そうした製品が実際に利用される「ユースケース」を想定しながら、製品の利用体験を高めるといったことが蔑ろにされているケースは少なくありません。

ユーザーから求められる、愛される製品やサービスを提供するには、UX、つまり製品やサービスの利用体験全体を最適化するための努力や工夫が不可欠であると、改めて、深く理解できたセミナーでした。

最後にお知らせです。

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