2020.01.23 | コラム

Spotifyなどのストリーミングサービスが浸透しているのと同時に、レコードやカセットがリバイバルし、多様化している音楽視聴の方法。日本では浸透が遅かったストリーミングサービスですが今では大勢の人が利用しています。そんな中、海外では人気アーティストのジャスティン・ビーバーが、ファンが作った「ジャスティンの曲の(ストリーミングサービス上のヒットチャートの)ランキングを上げるために寝ている間に曲をリピート再生しよう!」という趣旨の画像をシェアしたことで話題になっています。

ランキングを操作しようとすることをファンに推奨するのがアーティストとしてどうかという話は難しいところですが、実はストリーミングがまだ浸透していない頃に似たような方法を使って約2万ドルの資金を集めたバンドがいます。日本でも時々ラジオで耳にする「Vulfpeck」というバンドは、ストリーミングサービスが台頭してきた頃に1曲あたり30秒ほどの無音のトラックをアルバムとして公開し、それによって得た収益で入場料無料の全国ツアーを行うことを約束しファンに寝ている間にアルバムをリピート再生することをお願いしました。再生回数1回あたりアーティストに入る収益は微々たるものですが、集まった資金はなんと$19,655.56。Spotify側がアルバムの配信を取りやめるまで、ファンもバンドも1円も払うことなく活動のための資金を集めました。

これに触発されたのがフランスのNGO団体「INJS Paris(Institut National de Jeunes Sourds de Paris)」。彼らは聴覚障害を持つ人にも音楽を楽しんでもらいたいという目的のために、会話だけではなく音楽の周波数も感知し増幅できる補聴器の開発を進めています。そのための資金を集めるため(=聴覚障害を持つ人々への寄付を集めるため)、Spotify上で「The D.E.A.F.」という無音のトラックで構成されたアルバムを配信しています。それぞれのトラックのタイトルは「Play this Album(このアルバムを再生して)」、「Play it Over and Over Again(何度も繰り返し再生して)」、「You’ve Already Made a Donation(あなたは既に寄付をしているんです)」、「To Enable Young Deaf People(聴覚障害を持つ若者たちが)」、「To Hear Live Music for the Fist Time(初めて音楽を体験できるようにするために)」。総再生数は30万回を超え、再生するだけで寄付に貢献できるとして話題になっています。

実はVulfpeckが公開した無音のアルバムは前述の通りSpotify側が配信を停止しており、その理由ははっきりとは説明されていません。目的がなんであれ再生回数に対する収益を支払うのはSpotifyなので、こうした見方によってはシステムの悪用ともとれる方法はしかるべき対処がなされて当然と言えます。ただ、INJSの取り組みは障害を持つ人々のための活動、所謂ソーシャルグッドです。ともすれば不用意に配信を停止するのではなく、Spotify側が取り組みを公認し宣伝することで自社のイメージ向上のためのブランディング施策に転用することも出来るかもしれませんね。そうすればどのみちINJSに支払うことになるお金も自分達の貢献としてアピール出来ますし、色んな境遇の人に音楽を楽しんで欲しいというのはSpotify側のメッセージとしても相性がいいです。

新しいサービスが登場すると、必ずと言っていいほどそれに付随・関連するマーケティングの施策が出てきます。加えてオンライン・オフラインを問わず既存のサービスの中でも広告のためのスペースが増え、ターゲットにリーチする手段も増え続けています。こうした手法が多様化する中、広告・マーケティングでお悩みの方はルグランに是非ご相談ください。



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