2021.02.26 | セミナー

先週、『どうなる?2021年のソーシャルメディアマーケティング戦略 〜ホットリンクCEO 桧野さんに聞いてみよう〜』 というテーマで、第8回ルグランモーニングセミナーを開催。今回は、ソーシャルデータの解析やソーシャルメディアを活用したマーケティング支援などの事業を展開する、株式会社ホットリンク執行役員CEO桧野安弘さんをゲストにお招きしました。

当日は、参加者の皆さまから事前に頂いた質問に対し、桧野さんと弊社代表の泉がQ&A形式で答えていくという形で、ソーシャルメディアマーケティングの「今」と「これから」について、お話を進めていきました。

桧野さんは、個人で書いたブログが上位にランキングされるほどのブロガーでもあり、そうした経験も通して、ソーシャルメディアには永年、興味と関心をもって関わってこられたとのこと。それがお仕事にも活かされる形で、株式会社オプトのソーシャルメディア事業部の立ち上げに参画。その後、ソーシャルメディア事業本部本部長を経て、2015年に株式会社ホットリンクに移られ、2017年からは同社の執行役員CEOとして、同社の国内事業を統括されています。

ソーシャルメディアへの造詣が深い桧野さんが来られるということで、参加者のみなさんからも、様々な質問が寄せられました。スペースの関係上、その全てをご紹介することはできませんが、参加者の方々の関心が高かったと思われる質問について、いくつかご紹介したいと思います。

Q1:色々なソーシャルメディアがある中で、目的・ターゲット毎に適しているソーシャルメディアをどうやって選べばよいのか?また、ソーシャルメディアの運用にはどのくらいの時間・労力をかけるべきなのか?

このような質問が来るということは、もしかすると、担当者が自分一人でFacebookやInstagram、Twitter、YouTubeといったソーシャルメディアを通じて流すコンテンツを「作る」つもりなのかもしれませんが、それは時間的にも能力的にも不可能だと思った方が良いです。

「自社のビジネスのためにソーシャルメディアマーケティングを行うこと」と、「自社のソーシャルメディアを運用すること」は同じではありません。

最近注目を集めるClubhouseをはじめ、ソーシャルメディアの種類や数は増加しており、担当者一人が、全てのソーシャルメディアを使いこなして、自社の情報を発信し続けることは不可能です。もちろん、運用担当者がすごくセンスのある方で、人気の企業アカウントになるといったケースもありますが、そうしたセンスは極めて属人的なものです。もし、転勤や転職などで、その方が担当を離れてしまった場合、後任の方が、そうした「センス」をノウハウ化して引き継ぐことは難しいでしょう。

限られた時間・リソースの中で、「ソーシャルメディアマーケティング」を継続的に実施していくために大切なことは、「担当者がコンテンツを発信し続けること」よりも「UGC(User Generated Content)の活用」、つまり、ソーシャルメディアを使っている人たちが、自分達の商品やサービスについて発信してくれる情報をいかに上手に活用するのかを考えた方が良い、ということになります。

Q2:ソーシャルメディアマーケティングの担当者が、各ソーシャルメディアで自社の商品・サービスに関する情報を発信しようとする場合、どのようなことを考えるべきなのか?

「ソーシャルメディア」を一括りにして考えることは間違いのもとです。まずは、ソーシャルメディアを「オウンドメディア」として活用するのか、「ペイドメディア」あるいは「アーンドメディア」として活用するのかを、きちんと整理した上で、それぞれの目的に応じた施策を考えることが大切です。

もし、ソーシャルメディアを「ペイドメディア」として活用し、商品やサービスの売上を上げたいと考えるのであれば、Facebook広告を使うのが良いでしょう。また、YouTubeでも、コンバージョンの獲得を目的とした広告の配信が可能です。

YouTubeでは、YouTuberに対価を払って、自社の商品やサービスを宣伝してもらう「インフルエンサーマーケティング」という方法もあり、これをすることで、一定の売上を実現することはできます。ただ、インフルエンサーとしては、自分のフォロワーが離れてしまうリスクも考えると、同じ商品やサービスを何度も宣伝することは避ける傾向があるので、いくら効果があるからといっても、同じインフルエンサーに何度も依頼することはできない、という点は理解しておく必要があるでしょう。

次に、ソーシャルメディアを「オウンドメディア」として活用する場合を考えてみましょう。先の質問でも触れましたが、「ソーシャルメディアマーケティング」というと、「ソーシャルメディアを通じて、自ら情報やコンテンツを発信する」という「オウンドメディア」としての活用をイメージされる方が多いのではないかと思います。

まずFacebookですが、Facebook上に自社のページを開設し、そこから発信する情報やコンテンツ作りにご苦労されている担当者の方も多いのではないでしょうか。ただ、Facebookには投稿された情報を、どのユーザーに、どのくらい表示されるのかを決める「エッジランク」と呼ばれるアルゴリズムがあり、昨今、Facebookページへの投稿がフォロワーに届く割合は、平均4%程度と言われています。

これを踏まえると、ソーシャルメディアを「オウンドメディア」として活用するなら、TwitterやInstagramに注力する方が効率は良く、Facebookは、広告を使った「ペイドメディア」としての活用を考えた方が良いでしょう。

一般的に、商品やサービスに関する情報を発信し、クチコミを広めながら認知を高めていくといった目的に向いているのは、Twitterと考えられていますが、アパレルや美容に関する商品・サービスであればInstagramに力を入れるなど、各プラットフォームの性質を理解した上で優先順位を考えることが大切です。

ちなみに、Instagramでは検索機能の強化を進めており、アカウントやハッシュタグだけでなく、今後は検索キーワードに関連する「投稿」もヒットするようになるので、Instagramの利用者も、Instagramを第2・第3の検索エンジン的な位置付けで利用するようになる可能性があります。

かつて、GoogleやYahoo!の検索結果に表示されなければ、インターネット上では存在しないのと同じと言われたように、今後は、Instagram検索にヒットする自社コンテンツを置いておくことも重要になるでしょう。

最後に、最も大切な「アーンドメディア」としての活用について。

TwitterやInstagramを「オウンドメディア」として活用する場合、先にお話した通り、担当者自身が、「バズる投稿」をし続けることは難しい、というか企業の発信した情報が「バズる」ことはほとんど無い、と考えておいた方が良いでしょう。

そこで重要になるのが、UGC、つまり、自社の商品やサービスに関する投稿・クチコミの活用です。

たとえば、Twitterの企業アカウントにフォロワーが10万人いて、担当者の方が、その人たちに向けて、毎日、一生懸命、情報を発信しても、基本的に企業発の情報がどんどんリツイートされて広まっていく、といったことは少ないので、担当者の方々が頑張って流した情報は、最大でも10万人のフォロワーのタイムラインに表示されて終わりです。しかし、一般の人が、自社の商品やサービスについて書いた投稿やクチコミなら、内容が面白ければ広まっていく可能性があります。

ソーシャルメディアを「アーンドメディア」として活用するための第一歩は、自社の商品やサービスに関するクチコミを探し、それをリツイートし、10万人のフォロワーに見てもらうことになります。企業が自社の商品を持ち上げても、それが拡散する可能性は低いですが、第三者の評価・コメントであれば、ユーザーの興味・関心を集め、内容によっては、リツイートなど拡散につながる行動を取ってもらえる可能性が高くなります。

10万人のフォロワーに発信して終わらせるのではなく、第三者が発信した情報を10万人のフォロワーに伝え、それを拡散してもらうことができれば、ソーシャルメディアを「アーンドメディア」として活用できる可能性を高められることになります。

ちなみに、企業のTwitterアカウントでは、フォロワーを集めることが大事という一方で、一般の人たちの投稿をリツイートすることはNGというポリシーを設けていることも少なくありません。ただ、これでは「10万人のフォロワーに発信して終わり」になってしまう可能性が高いので、もし「アーンドメディア」としての可能性を広げたいのであれば、そうしたポリシーも再考すべきでしょう。

また、ソーシャルメディアを「アーンドメディア」として活用する大前提として、まずは、自社の商品・サービスの質を高めて、利用者を増やしてくことが重要であることは言うまでもありません。当たり前ですが、100個しか売れていない商品に1億の口コミが出てくることはありませんから。

Q3:インフルエンサーマーケティングの今後はどうなるのか

先にお話をした通り、インフルエンサーマーケティングとは、基本的に、ソーシャルメディアを「ペイドメディア」として活用する場合の代表的な手法の一つであり、今後とも有用であるのは間違いありません。

優秀なインフルエンサーを使うことで、認知度を高めたり、商品・サービスの売上を増やしたりすることもできますが、一方で、優秀なインフルエンサーほど、同じ商品やサービスを何度も宣伝はしてくれません。これを踏まえ、インフルエンサーマーケティングについては、たとえば新商品の発売といった、企業として勝負をかけたい「ここぞ」というタイミングを選んで実施することが効果的ではないでしょうか。

最後に、最近注目Clubhouseについて。

基本的には、他のソーシャルメディアと同様、Clubhouseにおいても、企業あるいは企業の担当者が「人気者」になるのは極めてハードルが高いと考えるべきでしょう。また、コンテンツについても、「〇〇のノウハウ」や「中の人の話」といったテーマで多くの参加者を集めているルームもありますが、いつまでも同じ話を続けていくことはできず、いずれ「摩耗」していってしまうでしょう。

Clubhouseを継続的に続けていこうとするなら、様々なテーマについて話ができる第三者を巻き込みながら、モデレーション能力を使って会話をまとめていくという力が求められるのではないかと思います。

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ソーシャルメディア自体も日々進化し、新たなサービスも増えておりますので、今回のお話は、既にソーシャルメディアマーケティング担当者になられている方や、ソーシャルメディアを活用したいと思っている方にとって、大変学びになるお話だったのではないのでしょうか。

ルグランモーニングセミナーでは、今後も、「様々なテーマについてお話ができる方々」をゲストにお迎えし、皆様のビジネスに役立つセミナーを開催して参りますので、どうぞ次回もお楽しみに。



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