こんにちは、ルグランでインターンをしている大学院生、篠崎巧真です。
今回は、大学でデザインの勉強をしていて考えたことをこの場を借りて発信いたします。
前提認識の共有
狭義のデザインと広義のデザイン
まず、前提としてデザインには狭義の意味と広義の意味があるという話をします。私は大学に入ってから、デザインには”狭義のデザイン”と”広義のデザイン”があると知りました。実際には大学で習ったのではないのかもしれません。誰かが言っていたのか、本に書いてあったのか、それすらあいまいです。ですが、”狭義のデザイン・広義のデザイン”の話はよく言われています。
「図案。意匠。」という見た目を美しくすることや意匠そのものを狭義の意味とされています。広義に捉えると「設計(図)」というような、なにか計算や計画をするようなことという一般的には使われない意味も含めます。新明解国語辞典では広義・狭義という説明はなかったですが、大体このような意味合いで説明されます。
実体験と推測
デザインの意味を勘違いしてしまっている?
私は、狭義のデザインと広義のデザインに対してある勘違いをしている人が多いのではないかと考えます。私もその中の一人でした。
デザインを学んだばかりの頃の私は、”狭義のデザイン”を少しバカにするような考え方になっていたなと振り返ります。「見た目をただ美しくしようとしているやつはデザインをわかっていない」というように、”広義の意味でのデザイン”を習った私はまるで”真のデザイン”をわかったかのような、なんともご機嫌な考え方をしていました。
簡単に言うと「狭義のデザインは稚拙」で「広義のデザインは高尚」というような間違った解釈をしていました。これには2つの要因が考えられます。
1.大学でデザインの意味を新しく知る
1つ目に”広義のデザイン”は大学に入ってから習ったことだからです。やはり、大学で習う情報に対して、必要以上に価値を見いだしてしまうのだろうと考えます。何かしらの認知バイアスがかかっているのだろうと思います。
2.「狭義」「広義」の意味は習わない
2つ目に「狭義・広義」の意味をちゃんと理解できていないことです。デザインの意味以前に「狭義・広義」の意味を知らなければなりません。狭義とは「ある言葉の意味のうち、指す範囲の狭い方」であり、広義とは「その言葉のうち、指す範囲の広い方」だそうです。つまり、意味の範囲の広さであり、決して2つの意味があるわけではないのです。
例えば「兄弟」です。狭義では「同じ親から生まれた間柄」であり、広義では「義兄弟。親近感を持って接している間柄にある人を呼ぶ名称。」も指すことができます。狭義・広義の意味があるのはデザインだけではありません。「鍵」や「光」、「科学」もそうです。これによって、“デザインだけが特別な存在”というわけではないことも分かると思います。
言われてみれば当たり前な話です。しかし、「広義の意味があります」のように聞くと、以下の図のように図式化できず、あたかも新しい意味かのように捉えてしまうのではないでしょうか。
参考文献:新明解国語辞典第八版
どっちの”デザイン”も同じくらい大切
「デザインとは現象をつくること」これは芝浦工業大学の蘆澤雄亮先生が仰っていて、私もとてもしっくりきた表現です。デザインはその先に人を想定するものです。何のためにいろいろなことを考えてデザインするのかというと、人に意図した行動をとってもらい、目的を達成するためです。
例えば、目的が「社員の生産性を上げる」だとします。解決方法はいろいろあると思います。社員の椅子を買い替えるだとか、休憩室をリノベーションするだとか、週休3日制にするだとか。様々な制約を考慮し、目的を達成できるように工夫すること全体の行為が”デザイン”と言えます。目的の設定もその解決方法の選択もとても大切で、そこを間違えてしまうと良い結果が出ません。
そして、休憩室のリノベーションをすることになったとします。その休憩室がヘンテコな色彩や椅子や机、空間設計だったらどうなるでしょうか?「社員の生産性を上げる」という目的は達成できないと思います。つまり、意匠もかなり重要なのです。
違う見方の提案
“名詞的デザイン”と”動詞的デザイン”
意味的に狭義・広義があるのは分かりますが、デザインを学ぶ上では適切な表現・区分ではないのだろうと思います。私は”名詞的デザイン”と”動詞的デザイン”という考え方を提案します。 デザインは英語です。「design」です。これは名詞としても動詞としても使われることがあります。なら、そのままそのように捉えようということです。
名詞的デザインは「デザイン」、動詞的デザインとは「デザインする」です。”動詞的デザイン”によるアウトプット・成果物が”名詞的デザイン”という風に捉えます。
少し回りくどく話してしまいましたが、これは何も新しいわけではないです。辞書の意味はそのまま覚えてもらってOK。広義・狭義の意味あると聞いても特別だとは思わず、「そうなんだね」くらいで捉えてほしいということです。重要なのは「デザインって見た目だけじゃないんだよね」ということと「やっぱり見た目も重要」ということです。
これとほぼ同じようなことをわかりやすく説明してくれているサイトがあります。
”「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」この一連のプロセスが我々の考えるデザインであり、その結果、実現化されたものを我々は「ひとつのデザイン解」と考えます。”
デザインとは?, 公益財団法人デザイン振興会, (参照日2022/11/24)
私は「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」これが動詞的デザインであり、「ひとつのデザイン解」が名詞的デザインだと捉えています。一般に「デザインがいいよね」というのはこの“名詞的デザイン”であり、“ひとつのデザイン解”に対して言及しているのだと思います。しかし、その裏には様々なことを考えてデザインを行っているのです。見た目だけが良くても使い勝手が悪かったり、その商品に求められる基準に満たしていなかったりするものは「よいデザイン」とは言えないです。それはデザインを学んでいないユーザーにも感覚的にわかるのではないでしょうか。そして、もちろん見た目が良くないと生活者はその商品を選んでくれません。見た目が良くないと上手く形状を理解できず、適切に使用もしてくれません。
「デザインとエンジニアリングとの違い」という話が上記記事内にありますが、それもとても分かりやすく、その考え方を使うとアートとの違いも分かってくると思います。上記サイトのこのページの内容は芝浦工業大学の蘆澤雄亮先生が書いたそうです。ちなみに私も芝浦工業大学の学生ですので、先生の影響を大きく受けているのだと思います。
まとめ
私は、デザインって何だろう?デザインの本質は何だ?などいろいろ考え、悩んでいました。しかし、以上のように考えるとすごくフラットにデザインを捉えられるようになりました。デザインには物事を考える能力も重要ですし、もちろん、具現化する能力も重要だと考えます。
ルグランでも常にユーザーを中心に物事を設計し、デザインを行っています。UI/UXなどにお困りの際にはぜひご相談ください。