空港体験が旅を変える
3連休も終わり、次はいよいよゴールデンウィーク。JTBの予測によると、昨年に比べ訪日外国人数は前年比12.0%増の推計2,700万人、日本人の総旅行のべ人数は前年比0.4%増の推計3億1,500万人、そのうち国内旅行人数は0.4%増の2億9,800万人、海外旅行者数は2016年並みの1,700万人となるようです。
旅行者の多くが旅の始まりと終わりに時間を過ごす場所が空港です。海外旅行・出張をする度に感じることは、空港で過ごす時間によってその旅・国に対する思いが変わるということ。なので、空港での体験はバケーションであれ、仕事であれ、重要になってきます。空港に少し早めにいってショッピングをしようとか、あのカフェでゆっくり過ごそうと思える空港だと、旅の楽しみも増えますし、また、安心感にも繋がります。
世界空港ランキングで上位にランキングされる理由
イギリスに拠点を置く航空サービスリサーチ会社スカイトラックス(Skytrax)は毎年世界の空港や航空会社の評価を行っており、キャビンアテンダント、ラウンジ、機内エンターテイメント設備、機体メンテナンスなど多岐に渡る評価項目と乗客からの満足度調査結果等から、各国の国際空港や航空会社の評価を発表しています。先日発表された2017年の国際空港ランキングでは、シンガポールのチャンギ国際空港が、5年連続の1位となっています。
画像1:チャンギ国際空港ウェブサイト
トップに居続けるチャンギ国際空港の強さはどこにあるのでしょうか?
以前、チャンギを利用した際に驚いたことは、ショップの多さと清潔さ、そしてチェックインの時間です。多くの空港がチェックイン時間を出発時刻の2時間前としている中、チャンギは24時間前からチェックインが出来るのです。旅の最終日、出発時間まで時間がある場合、有効に時間を過ごすためには工夫が必要になります。あまりギリギリまで街にいて、最後に慌ただしい思いをしたくない一方で、空港で退屈な時間を過ごしたくない、と考える旅行者にとってチャンギは便利な場所です。早めに空港に到着し、最後の買い物をしたり、もう一度行きたかったローカルレストランで食事を楽しみながら、ゆっくり旅を振り返ることができれば旅行者にとって「また訪れたい国」になるのではないでしょうか?また、空港にとっても旅行者が買い物や食事をしてくれることで、売り上げアップにも繋がり、双方にとってハッピーな体験になります。
旅行者ファーストを実現しているチャンギ
旅行者にとって、空港とは、旅の最初と最後にワクワク・ドキドキ、時にはセンチメンタルな時間を過ごす重要な通過地点です。それと同時に、慣れない空間であり、また、限られた時間内でいくつかの関門を通過しなければならず、ストレスを感じる人も多いはず。チャンギのウェブサイトを見ると、そのストレスを理解し軽減するための工夫をしている、という印象を受けます。
画像2:地点間の時間が記載されているチャンギ国際空港のMap
例えば、限られた時間内で効率良く動くためには、まず、空港の全体像を把握することが重要になります。チャンギでは、サイトのメニューの見つけやすいところに「Maps」があり、ターミナル毎に全体像とターミナル中央からゲートまでの時間が細かに記載されています。出発前にショッピングをして、いざ、搭乗ゲートに向かおうとしたら、想像以上にゲートが遠く、最後は小走りになりクタクタになってしまったという経験をしたことはありませんか?このマップがあれば、時間に余裕をもって行動ができますね。
では、我が国の国際空港、成田のウェブサイトはどうでしょうか?マップはメインのメニューには含まれず、「Shop&Fine, Service」というメニューの中に隠されているため、ユーザーは想像しながら、必要な情報を探さなければなりません。
画像3:成田国際空港のウェブサイト
Mapはターミナル毎に分かれていて、フローアー全体を見せているものの、ゲートまでの距離やかかる時間等、旅行者が知りたい情報は記載されておらず、旅行者のニーズを理解することなく、情報設計されているという印象を受けます。
チャンギのCEOは、先日のランキングで1位になった際に以下のようなコメントをしています。
「This recognition affirms our service belief which we have held steadfast all these years – putting passengers at the heart of all we do. While we expand our facilities to serve more passengers in the coming years, we will continue to work closely with all our airport partners to further enhance the Changi Experience.」
空港を利用する人達のエクスペリエンスに重点を置き、空港やサイトの情報設計を行い、更なる進化を目指し、空港関係者がパッションを持って努力し続けるチャンギ国際空港。このコメントを読んで、彼らの根底にあるユーザーのエクスペリエンスファーストという考え方が、強さの理由なのだと感じました。
画像4:旅行者が必要とする情報が記載されていない成田国際空港のFloor Map
本当のおもてなしを実現するために
旅行者は増加傾向にあり、また2020年の東京オリンピックに向けて、「おもてなし」という言葉が頻繁に使われている日本。空港をはじめサービス提供者は「おもてなし」という言葉だけに任せるのではなく、ユーザーエクスペリエンスとは何かを真剣に考える必要があるのではないでしょうか?
ルグランでは、UXを起点としたサービスを実現していくために、「エクスペリエンスマップ」を使ったワークショップを行っています。ご興味がある方は是非!