2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催まで、あと3年。今後、ますます増加が見込まれる訪日観光客への商機を拡大したい、あるいは、越境ECに取り組んで、ネット通販の商圏を海外に広げたい、といった理由から、ルグランにも、自社のウェブサイトやアプリを「多言語化」したいといったご相談が多く寄せられるようになっています。
しかし、日本語で作られたサイトやアプリを翻訳して「多言語化」すれば、それで、本当に、海外の人たちに使ってもらえるようになるのでしょうか?残念ながら、答えはNOです。
ルグランではこうしたプロジェクトをお手伝いする際、「言葉」よりも「文化」の違いを正しく理解した上で、日本語で用意された情報の見せ方を工夫・再構成することが大切である、ということをお伝えしています。
それは、具体的にどういうことなのか?筆者が最近体験した例をもとに、考えてみたいと思います。
仕事の関係で、8月にマレーシアに出張することになり、海外LCC(格安航空会社)のUX検証という目的も兼ねて、Air Asia便を予約することにしました。Air Asiaは日本にも就航していますので、当然、予約サイトも「多言語化」されていますが、使い始めるとすぐに、「文化の違い」に対する理解不足を実感することになります。
たとえば、住所の選択。
上図の通り、都道府県名はきちんと日本語に翻訳されていて、プルダウンで選べるようになっているのですが、問題は、その並び順がランダムなので、お目当ての都道府県を探すのが大変だ、ということです。
多くの日本のサイトでは、都道府県は、北から南に並んでいることが多いので、日本人であれば、地図を思い浮かべながら、東北ならリストの上の方、九州なら下の方、とあたりをつけて探すことができるのですが。。。
続いて、こちらはクレジットカードの登録画面。
カードの種類はプルダウンで選択できるようになっていますが、それとは別に「カード発行会社名」が必須項目とされています。
クレジットカードが発行されるシステムは、実は国によって、違いがあります。ある国・地域の人は、「カード発行会社名」と言われれば、何を書けばよいかが、すぐに判るかもしれませんが、おそらく、多くの日本人は、たとえば自分が持っているJCBカードの「発行会社」を書けと言われて、「それはJCBじゃダメなの」とか、「(カードを作ったデパートなどの)提携先のこと?」と迷う人もいるでしょう。
面白いことに、日本の企業の人たちも、海外のサイトやサービスを使う側に立っている時は、こういう問題には非常に敏感に反応します。なので、たとえ、どんなに機能的に優れているツールであっても「ローカライズが不充分」といった理由で採用を見送ったりします。
ところが、自分たちのサイトやサービスを海外に広める立場になると、なぜか「翻訳」「多言語化」すれば充分、と考えてしまうのは、なぜでしょうか?
これは、結局のところ、利用者の目線で物事を捉えるという、UX(ユーザーエクスペリエンス)視点が持てているかどうか、に尽きます。
少子高齢化・人口減少が進む日本において、商機・商圏を海外に広げていくことは、多くの企業にとって、重要な経営課題となっています。
しかし、「インバウンド対応」や「越境EC」で成功を収めるためには、単なる「翻訳」「多言語化」では不充分であり、文化の違いもきちんと理解した上で、さまざまな国・地域の人たちに対して、適切なUXを提供するための調査や設計・デザインが不可欠です。
ルグランでは、こうしたニーズに応えるため、海外の消費者・利用者を対象とした調査〜サイトやアプリの設計まで、UX視点で、クライアント様のインバウンド対応や越境EC戦略を支援しています。ご興味のある方は、ぜひ、ご相談下さい。