2015.05.18 | コラム
全国的にも注目を集めた大阪都構想を巡る住民投票は、反対が賛成を上回るという結果となりました。

一方で、テレビ局が実施した年代別・男女別の出口調査の結果を見ると、20代〜60代までは、賛成が反対を上回っていたことから、ネット上では「現状を変えたくない老人たちに潰された。」「老害だ。」といった意見も多く見られますが、本当のところはどうだったのかを、データで検証してみたくなりました。

下図はよみうりテレビが行った出口調査の結果ですが、これを見ると、確かに、大阪都構想への反対が多いのは、男性では70代以上だけ、女性でも70代以上と50代だけ、となっています。

<大阪住民投票に関する出口調査(よみうりテレビ)>

本ブログの執筆時点で、年代別・男女別の投票率や投票行動について、市役所や選管などから正式な数値は公表されていませんので、以下はあくまでも、入手可能なデータにもとづく推計ですが、「20代-60代においても、大阪都構想に対する賛成率は、出口調査で示されたほど高くなかったのでは?」ということが疑われる結論となりました。
ここでは、大阪市のウェブサイトに掲載されている平成26年12月時点の人口を、有権者の近似値として用い、ケース1では、仮に全年代の投票率が100%だった場合、各年代が、出口調査通りの割合で賛否を表明した場合に、最終的な得票結果がどうなるかをシミュレーションしています。

<大阪住民投票の年代別投票結果に関するシミュレーション>

もし、全員が投票に行き、かつ、出口調査の結果が正しいとすれば、大阪都構想は否決されなかったということになり、つまり、大阪都構想が否決されたのは、70代以上の反対が多かったというよりは、構想に賛成する60代以下の投票率が低かったためという可能性が高くなり、そうなると「老害」という指摘は必ずしも正しくないように思えます。

そこで、総務省が公表している昨年12月に行われた前回の衆議院選挙の年代別投票率を当てはめてみたのが、ケース2です。

ちなみに、前回の衆院選において、20代の投票率は約33%、30代は約42%であったのに対し、60代は68%、70代以上も59%と、年代別にかなりの開きがありますので、「若い世代が投票に行かなかったので、大阪都構想が否決されてしまった」という仮説は、一見、正しそうに思えます。

ところが、ケース2にある通り、20代〜30代の投票率が、前回衆院選と同様レベルであったとしても、出口調査の結果が正しいとすれば、大阪都構想は、やはり賛成多数で成立していたというシミュレーション結果になります。

更に極端な例として、20代〜30代は、誰一人投票にいかず、今回の住民投票が40代以上の有権者だけで行われたと仮定しても、出口調査の結果が正しいとすると、賛成票の割合が50.3%と、大変な僅差ではありますが、引き続き、賛成多数というシミュレーション結果になります。

しかし、全体の投票率が66%を超えたとされる今回の住民投票で、20代〜30代の有権者だけが、前回の衆院選と比較して、投票率が極端に低かったとは考えにくく、となると、そもそもの前提である、この出口調査は、本当に年代別の賛否の動向を正しく反映しているのかを疑う必要がありそうです。

若い世代ほど、大阪都構想に可能性を感じたという全体的な傾向は、出口調査で示された通りなのかもしれませんが、それでも、若い世代、特に男性において、実際には、出口調査で示されたほど賛成の割合は高くなかったと考えた方が、ツジツマが合いそうです。

最終的には、年代別の投票率や投票結果を見ないと分かりませんが、これらのデータの検証結果を見る限り、今回の住民投票の結果を「老人が変革の芽を摘み取った」という「老害論」で総括してしまうのは早計なのではないでしょうか。



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