2015.12.24 | UX
日本でも、『ユーザーエクスペリエンス(UX)』という言葉を耳にする機会が増えてきました。

ウェブサイトやモバイルアプリなどを制作・開発する際に、ユーザー目線で考えようという流れが生まれつつあることは、決して悪いことではありません。

しかし、制作・開発の現場を見ていると、まだまだ、見た目のデザインなど、いわゆる『ユーザーインターフェイス(UI)』に関心が集中しており、『エクスペリエンスデザイン(XD)』という域には達していないケースが多いように感じています。

もちろん、使いやすいサイトやアプリを作るには、ユーザーとのタッチポイントをつかさどるUIの設計は非常に重要です。しかし、UXとは「そのサイトやアプリを使って、何かのタスクを行おうとする際の、一連の行為から得られる体験」を指します。従って、よく考えられたUIは、最良のUXを提供するための必要条件ではありますが、充分条件とは言えません。

最近、成田空港を利用する機会がありましたので、試しに空港が提供しているアプリの案内機能を使ってみました。

日本に来た観光客が、ちょっとお腹が空いたので、バゲージクレームで荷物を待つ間に、空港内で食事のできるレストランを探しているという想定で、行き先を指定し、ナビ機能を選択したところ、このような画面が。

<成田空港アプリのナビ画面>

この矢印に従って歩けば、目的のレストランに辿りつけるということなのですが、片手でスーツケースを乗せたカートを押しながら、もう一つの手で、税関で見せるパスポートと一緒に持ったスマートフォンをかざして歩くのは、力のある男性でもちょっと大変です。そもそも、混雑した空港の中での「ながらスマホ」は、かなり危なっかしい感じです。

しかも、現在地を特定するには、成田空港のFree WiFiに接続しないといけないのですが、接続するには、利用規約を読んで同意ボタンを押すというプロセスが必要です。そして、苦労の末に、ようやく行きついた「レストラン」は、実はスタンド形式の売店で、座って食事をすることはできないという有様です。

もうおわかりになったと思いますが、UIを工夫することで「ナビゲーションの画面をどう分かりやすく見せるか」という問題は解決できます。しかし、「成田に着いた外国人観光客が、食事のできるレストランを探し、そこまで簡単に行けるようにするためには何が必要か」という視点から、全体のエクスペリエンスをデザインしない限り、いくらUIばかりを考えても、このアプリで最良のUXを提供することはできないのです。

2020年の東京オリンピックをひかえ、ルグランにも、訪日旅行客をターゲットにしたウェブサイトやアプリ、サービスの設計に関するご相談が増えています。

ただ、お話を聞いていると、ウェブやアプリの表示を多言語化する、といった見た目にばかり関心が向いていることも少なくありません。ルグランでは、クライアントさんと一緒に「エクスペリエンスマップ」を作成し、まずは、文化も常識も違う人たちが、どういう状況で、何を期待して、ウェブやアプリを利用するのかを深く掘り下げてみる、という作業から始めることをお薦めしています。

年が明ければ、オリンピックまであと4年。ルグランでは、2016年を「エクスペリエンスデザイン(XD)元年」と位置付け、最良のエクスペリエンスを提供するウェブサイトやアプリ、サービスを、1つでも多く、世に送り出すお手伝いができるよう、来年も全速で走り続けたいと思います!



Back to Blog Top