2016.07.14 | UX

米国の投資・調査会社のコーエン&カンパニーがAmazonが2017年にMacy’sを抜いて全米トップのファッション小売企業になるとの予測を発表したのが2015年

アメリカのMacy’sと言えば、中間層をターゲットにした取扱アイテムが多く、そこそこおしゃれな庶民派百貨店。私のMacy’sの思い出と言えば、クリスマスの翌日に実施されるビッグセール。前日まで販売していた商品がいきなり半額以下になるため、26日はセールを狙う、あるいは、クリスマスギフトが気に入らず返品する人達で早朝から大行列ができます。当時、貧しい学生だった私も、通常手が届かない商品を狙い、サンフランシスコMacy’sの正面入り口の長蛇の列に早朝から並んだものです。因みに、メーシーズの隣のNeiman Marcus(ニーマンマーカス)という高級百貨店では、そのような光景は見られません。

どうするMacy’s?
今年の5月の米国ブルームバーグの記事によると、コーエン&カンパニーの予測がかなり現実的なものになりつつあるとのこと。昨年比65%株価がアップしているAmazonに対して、50%以上値を下げているMacy’s。もちろん、Macy’s側は売上がオンラインにシフトをしていること、百貨店モデルを変えていかなければならないことは認識済み。Macy’sのCFOであるKaren Hoguetは5月の業績発表で「モバイルは引き続き優先順位が高く、今後も投資し続ける」と発表。また、株価は下げているものの、Macy’sのオンラインの売上は成長し続けているとコメントしています。

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2016年以降、Amzonの売り上げがMacy’sをはじめ、TJ Max、Walmart、Nordstrom等のアメリカ大手小売企業を上回ると予測。

買いたいキモチにさせるしくみ
Amazonがファッション領域にビジネスを拡大した当時、ブランドの多くは他の販路と競合する、ブランドイメージを損なう、などを理由にAmazonでの販売に躊躇したとのこと。その一方で成長し続けているAmazon。海外のカンファレンスに参加すると毎回必ずといっていいほどAmazonの成功事例をテーマにしたセッションがあります。その中で言われていることは、Amazonの成長の裏には「継続的なテスト」があるということ。マイナーなテストを含めると毎月200近いユーザー視点に立ったテストを実施。そこからのデータを分析し、改善し続けるといった地道なテストを20年近く実施してきた企業に、今から追いつくことは果たして出来るのでしょうか?

ここでは、出来るかもしれないと思えるアプリをご紹介します。

ファッション好きに必見アプリ「PS Dept」
アメリカのファッション雑誌『ハーパーズ バザー』のデジタル版をはじめ、ファッション好きの間で「史上最高のショッピングアプリ」「すぐにダウンロードすべきファッションアプリ」として高く評価されているのが「PS Dept」というアプリ。24時間いつでもスタイリストがショッピングをサポートしてくれることが、このアプリの特徴。例えば、「結婚式に参加するためのドレスが必要」「膝が少しかくれる高さのブーツが欲しい」といった希望をスタイリストに伝えると、希望に合うと思われるアイテムを探し、提案してくれるという仕組みです。私も実際に「白いティーシャツを探しています」とスタイリストに相談すると、私が指定したブランドとそれ以外のいくつかのブランドを加えたいい感じの5アイテムを提案してくれました。購入しない場合は、さりげなく「リマインダー」が届き、しつこく同じメッセージが届くことはありません。「PS Dept」の創始者は、人ごみに揉まれてショップに行かずに買い物を楽しむために、このアプリを開発したとのこと。

「買い物をする時間がない」とストレスを感じている人達のストレスを楽しさに変えてくれるとも言われているこのアプリは、パーティやギフトを贈る機会が多いアメリカで高く評価されているのも納得できます。

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①「+Ask a Personal Shopper」をタップすると、スタイリストに探しているアイテムは何かを伝えることができる仕組み。
②白いティーシャツを探して欲しいという私のリクエストに対して、アイテムを5つ提示してくれました。的確なコミニュケーションも、かつ、しつこく薦めてこないところにも好感が持てます。

Macy’s復活の鍵はユーザーエクスペリエンス
クローゼットに既に充分な洋服があったとしても、新しいアイテムが欲しくなるものです。多分、多くの女性はファッションに関して、もう充分と感じることはなく、また、ショッピングをする時には、ドキドキしたいものではないでしょうか?これは、店舗でもオンラインでも同じこと。「PS Dept」が高く評価されている理由には、購入過程で、ユーザーにそのドキドキ感や楽しさを与えているからではないでしょうか?では、消費者はどんなことにドキドキし、楽しいと思うのでしょうか?

オンラインでショッピングをするユーザーがドキドキするエクスペリエンスは何かを徹底分析し、そこからヒントを得ることができればMacy’sにも明るい未来が開かれるかもしれません。頑張れMacy’s!

ルグランでは、クライアントさんと一緒に、ワークショップを通じて、『エクスペリエンスマップ』を作りながら、どうすれば、もっと優れた利用体験を提供できるのかを一緒に考え、最良のUXデザインにつなげるお手伝いをしています。ご興味がある方は是非、ご相談ください。



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