毎年恒例のルグラン主催のカンヌセミナーを今年も8/8(木)に開催しました。
タイトルは「今年もやります!カンヌライオンズ報告会:カンヌウォッチャーがどこよりも早く包括的に解説」、当日は猛暑であったにも関わらず80名以上の皆さまにご参加いただきました。
元カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員で多摩美術大学教授の佐藤達郎さん、株式会社DECEM 取締役CCO 小川丈人さんのご講演、ならびに弊社共同代表 泉のショートプレゼンと登壇者3名によるパネルディスカッションを行いました。
今回は、まず、小川さんのセッションについてレポートしていきたいと思います。
■変化するカンヌライオンズ
カンヌライオンズは、シネアド(映画広告)業界のプロモーション式典から、今や世界最大の広告祭に成長しましたが、ここ数年は大きな変革を迫られていると感じたとのこと。
というのも、2017年の会期中に世界第2位の広告企業体であるPublicis Groupは、翌年のカンヌライオンズへの不参加を発表。また、世界第1位の広告企業体であるWPPは、参加人数を1,000人(2016年)から500人(2017年)に削減。これらの影響を受け、カンヌライオンズ側が大きな変革をすると発表し、2018年のカンヌでは会期の縮小や部門の統廃合などが行われたのです。
さらにM&Aや業界のトップの入れ替わりなど、業界全体が様々なニュースで揺れる中で、2019年のカンヌライオンズが幕を開けることになります。
昨年からの流れとしてあるSDGsやダイバーシティ(LGBTQ)などに加え、2019年では、障害者の課題解決につながるようなインクルージョン(多様性を活かし合う)の要素を持つ作品が受賞するなど、カンヌで評価されるためには、社会的な背景にも考慮する必要があるようです。
■ブランドによる社会課題の解決への挑戦
今年の重要な発見の一つとして挙げていただいたのは、ユニリーバのCEOが現地のセミナーで語った「We are ALL IN on Purpose」。この意味としては、ブランドの存在意義、またはブランドが社会課題を解決するためにどう動いていくか、とのこと。そこで、この領域の事例のひとつとして、今年を代表する作品と言われている、New York Timesの「The truth is worth it」をご紹介。
事例:「The truth is worth it」|New York Times
概要:ニューヨークタイムスが真実を追い求める過程を描く、技術の高い上質なフィルムシリーズ。ロヒンギャ難民に対するミャンマー政府の対応を追った「RESOLVE」を始め、5つのムービーからなる作品です。フェイクではないジャーナリズムの姿勢をアピールしながら、記者たちが常に危険に晒された状態であることも触れられています。この作品はフィルム部門、フィルムクラフト部門でグランプリを受賞しました。
ユニリーバのCEOによるとブランドがPurpose(社会課題解決への挑戦)に真摯に取り組むことでクリエティビティの制約を解放し、業界に対する信頼を回復、そして、ブランドを成長させることができるとのこと。また、業界紙によると、今年のカンヌで受賞したグランプリ21作品のうち、16作品はPurposeを示したものであったといいます。
■枠外へ飛び出す創造性
次に、小川さんの発見としてご紹介いただいたのは、P&GのCBOが語った「Merge the ad world with other creative worlds」。つまり、規定の広告やクリエイティブの枠の外に飛び出し、他のクリエイティブと融合する創造性が重要とのこと。
このOut of the box(枠に囚われない)した事例として、まずは、バーガーキングの「Whopper Detour」をご紹介。
事例①:「Whopper Detour」|BURGERKING
概要:バーガーキングのアプリをインストールし、マクドナルドの店舗の近くに行くことで、1セントでワッパーを食べられるクーポンを手に入れることが出来るキャンペーンを展開。これによりアプリのダウンロード数が、9日間で150万を超え、今年のカンヌでは、チタニウム部門・ダイレクト部門・モバイル部門の三冠を達成しました。
2つ目に、小川さんが今年最も好きな事例と語る、スキットルズの「BROADWAY THE RAINBOW」をご紹介。
事例②:「BROADWAY THE RAINBOW」|Skittles
概要:放映費用が6億円といわれるスーパーボウルの30秒CMにおいて毎年常連のスキットルズが、今年はCMの放映を取りやめ、スーパーボウル当日に行ったのは、なんとニューヨークのブロードウェイにて1回きりのミュージカル。結果的にスーパーボウル期間中に様々なメディアに取り上げられ話題に。アウトドア部門・ラジオ&オーディオ部門でゴールドを受賞しました。
Out of the boxした作品は、とても斬新でクリエイティビティ溢れるものばかりですね。このような事例は、皆さまの明日からのヒントとなるのではないでしょうか。
さて、次回は佐藤達郎さんのセッションをレポートします。お楽しみにお待ちください!