2019.11.07 | UX

ペルソナとUXデザインについて書いた前回のブログでは、 

自動化を必要とするくらい細分化していくシナリオを考える入口で、そもそも「誰(どんな人)のニーズや課題に応えようとするのか?」を考えるための道具、それがペルソナだ 

ということを書きました。 

今回はその続編ということで、ペルソナ像を作るための代表的な手法について、お話をしたいと思います。

例えば、クライアントからウェブサイトやアプリの設計・デザインを依頼された場合、私たちが真っ先に考えるのは、「そのウェブサイトやアプリは、誰(どんな人)のニーズや課題に応えるためのものなのか?」ということであり、この時に「誰?」「どんな人?」を洗い出すための作業がペルソナ作り、ということになります。

私たちは、これまでの経験から、ペルソナ作りのための手法は、以下の3つに大別できると考えています。(ここでは弊社がクライアント向けにウェブサイトやアプリのUXデザインを支援する場合の進め方を想定していますが、読者のみなさんご自身で自社の商品やサービスを必要とするであろう人達のペルソナを考える場合も、進め方は基本的に一緒です。)


 1.クライアントからのヒアリング

 2.既存顧客やユーザーのデータ分析

 3.市場調査や消費者調査

 

1.クライアントからのヒアリング

既存の商品やサービスの提供を通じて、顧客やユーザーのプロフィールや、既存の商品・サービスが必要とされた理由、購入・利用後の反応などについて、既に、クライアント(あるいはみなさん自身)が理解・把握している場合には、その知識や経験にもとづいてペルソナ像を作り上げることも可能です。

もし、ウェブサイトやアプリの制作・開発プロジェクトを主導しているチームの人達が、顧客やユーザーとは直接の接点を持っていないといった場合には、営業やカスタマーサポート部門の方々にもお話を伺いながら、ペルソナ作りを進めていきます。

2.既存顧客やユーザーのデータ分析

既にウェブサイトやアプリが存在し、更に顧客やユーザーの過去の行動を把握できるデータが存在する場合には、それらのデータも合わせて解析することで、より客観的な事実・情報にもとづくペルソナ作りが可能になります。ペルソナ作りに活用できるデータには、以下のようなものがあります。

・顧客リスト・ユーザーリスト(年齢・性別・居住地など)

・購入・利用データ(利用頻度や金額、購入・利用した商品・サービスなど)

・行動履歴データ(アクセス解析データや来店データなど)

・その他のデータ(カスタマーサポートへの問い合わせ記録やメール・SNSでの商品やサービスに関する評価やクレーム・質問など)

もし、UXデザインにある程度の期間や予算をかけられる場合には、こうしたデータ分析を行いつつ、関係者へのヒアリングも並行して行うことで、より正確で具体的なペルソナ像が作れる可能性が高まります。

3.市場調査や消費者調査

一方で、これから新たにウェブサイト・アプリを作るとか、これまでにない新しい商品やサービスを開発・デザインするという場合、過去の知見やデータは存在しないので、そういう場合には、市場調査や消費者調査によって、ターゲットになりそうなペルソナ像のイメージを固めていくことになります。

弊社では現在、桜で有名な奈良県・吉野町にある吉野ビジターズビューローさんと一緒に、吉野の魅力を世界に発信し、年間を通して国内外から来訪者を増やすための多言語サイトの構築プロジェクトに取り組んでいます。

こうした取組は今回が初めてということもあり、まずは国内外の消費者に対する調査を行い「どういう国や地域の、どういうタイプの人なら、吉野町を旅行先に選んでもらえる可能性が高いのか」を明らかにすることで、サイトやコンテンツの設計・開発を進めることにしました。

本プロジェクトでは、日本はもとよりアジアや欧米の消費者も対象に、幅広く調査を行いましたが、例えば、アメリカでは「有名な観光地・名所旧跡には必ずしもこだわらず、その土地ならではの体験ができる新しい場所に行ってみたい」という人が相当数いる一方で、日本では「評価や評判が確立している観光地への訪問を中心に旅行を計画したい」という意向を持つ人が非常に多い、といった違いがあることも分かりました。

<日本人旅行者のペルソナ(イメージ)>

この結果を踏まえ、特に日本語サイトにおいては、まずは、少数派ではありますが、いわゆる「アーリーアダプター」的な人達に向けて、「桜の季節以外にも吉野町を楽しむためのヒントや魅力」を中心にしたコンテンツ作りや情報発信を行い、そうした人達の吉野町での体験が広まることで、徐々に他の多くの日本人も、年間を通して吉野町への旅を計画してもらえるような戦略を取ることになりました。

このようにしてペルソナ像が固まると、それぞれのペルソナが抱えるニーズや課題、不安や不満を理解・把握した上で、それらの解決・解消につながるウェブサイトやアプリ、サービスの機能や仕様・要件を、ユーザー視点で具体的に検討することができるようになります。

次回は、「エクスペリエンスマップ」というフレームワークを使って、ペルソナのニーズや課題、不安や不満を把握するためのプロセスについて、再び、吉野町での取り組みにも触れながら、ご紹介していきたいと思います。



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