2019.12.25 | UX

毎年、メルマガ購読者のみなさんにクリスマスメールをお送りするこのタイミングで、来年の展望的なブログを書いています。そこで、今年は「UXなきDXなど〇ソ食らえ」というテーマにしようと思ったのですが、メルマガ担当者から「クリスマスに”〇ソ食らえ”などというタイトルのメールは送れません!」と注意され、改めて考え直してみたのですが、

データの活用は目的ではなく、優れた利用体験・購入体験を創造・提供するための手段であるべきだ

といった話については、既に色々な方が書かれているようなので、このブログでは、なぜデータの利活用(あるいは一般的によく言われるところの「デジタルトランスフォーメーション/DX」)が、目的化してしまうのか?について、少し考えてみることにしました。

今年一年「ビジネスやマーケティングにデータを活用したいのだけれど」というご相談をたくさん頂きましたが、その全てがすぐに具体的なアクションにつなげられる訳では無く、実際には、色々とお話をさせて頂いた結果「いま考えるべきこと、やるべきことは、他にありそうですね」という結論になるケースも少なくありませんでした。

すぐに具体的なアクションに進展するものと、そうでないものの違いを一言で表現するなら「課題の設定力」みたいところにあるのではないかと感じています。 

課題設定ができていない(あるいは不充分)と思われる代表的な例としては、以下のようなものがあります。

・トップが「DXを推進せよ」という方針を策定し、社長直轄の「DX推進部門」に配属されたので、今後何をすべきか相談に乗って欲しい。

・かなりの費用をかけて〇〇社のツールを導入したものの、その活用が不充分で、マーケティング部門で何とかするよう言われたので相談に乗って欲しい。

・このデータとこのデータを連携させて、アプリのプッシュ機能を使って、こんなメッセージを発信できる仕組を作って欲しい、などなど。

そして、こうしたご相談が持ち込まれる背景には以下のような事情や理由がありそうだと感じています。

1. 期待される役割と経験やスキルがマッチしていない

特に日本の企業では、本人の経験やスキルとは無関係にローテーションで配属先が決まることも多く、適切なトレーニングやスキルアップのための体制も無い場合、「何をやるべきかを提案して欲しい」という相談から始めざるを得ない、というのも無理はありません。

実際「データドリブンマーケティング」「UXデザイン」「DX戦略」といったテーマについて学べる場所・機会も限られていますので、必要な経験やスキルを持った人材を、短期間で採用・育成することが難しい場合には、課題の設定から一緒に考え、適切な戦略や方針を提示してくれる企業(もしくは人)を探して相談する、というのが現実的な解決策となります。 

2. 相談する相手を間違えている

弊社でも、このようなご相談を頂いた場合には、具体的な戦略や施策を検討する前に、まずは、解決すべき(できる)課題の探索からお手伝いをさせて頂くことになりますが、中には、様々な相談先を転々とし、かなりの時間と費用を使ってしまったために、弊社にご相談に来られた段階では、殆ど予算も時間も残っていない、というケースもあります。

よくあるのは、「何をやるべきか」という相談を、営業に来たツールベンダーなどにしてしまうというケースで、当然のことながら、相談を受けた側としては、自社のツールやソリューションを中心に「御社がやるべきこと」を提案することになります。ただ「そのツールを使って解決すべき課題」が明確化されていない場合には、導入したツールが充分に活用されず放置されることになってしまいます。

また、最近は、大手のコンサルティング会社に相談をして、確かに課題の設定フェイズからサポートはしてもらえたが、社内関係者へのヒアリングなどの工数も積み上がり、相当の費用がかかったが、出てきた提案には具体性や実効性が欠けていたり、戦略や施策の実施まではサポートできないと言われたりして、結局、また別のパートナーを探すことになったというお悩みを聞くことも増えています。

3. 課題の設定ではなく細かな施策レベルの相談をしている

企業あるいは担当者側に充分なスキルや経験があれば、まずは自社が解決すべき課題を社内できちんと整理した上で、その解決に必要な施策について、社外に相談をしたり、提案を求めたりすることができますし、それ自体は理想的な姿でもあります。

一方で、必要なスキルや経験が不足している場合でも、特に担当者ご本人の責任感が強かったりすると「課題も設定せずに社外に相談などすべきではない」ということで、自ら、何らかの課題を設定した上で、その解決につながる施策レベルでの提案を求められる、というケースも散見されます。

「課題の設定が全ての起点」という考え方はまさにその通りである一方、課題設定が適切でない場合、その解決につながる施策がどんなに正しくても、その会社が抱えている根本的な課題は解決されないという不幸な状態が続くことになってしまいます。

かの坂本竜馬は、西郷隆盛について「大きく打てば大きく響くが、小さく打てば小さく響く」と評したと言われていますが、ビジネス・マーケティングにおけるデータの利活用やDXについても同じことが言えると感じます。

私たちルグランスタッフ一同、2020年も、引き続き「大きく打って、大きな成果を引き出す」ためのお手伝いができるよう努力と工夫を重ねていきたいと思います!



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