2020.12.04 | イベント

 先週11/26(木)に『コロナ禍での観光デジタルマーケティングの推進』というテーマで開催した、オンラインセミナーのレポートをお届けします。

本セミナーは、弊社のCTOでもある佐藤が代表を務める調査会社、株式会社アンド・ディの主催によるもので、11/19には、佐藤から『オルタナティブデータの活用・位置情報・クローリングデータを利用したデジタル系観光リサーチ』というテーマでお話をさせて頂きましたが、今回はその続編ということで、弊社代表の泉より、データを活用した観光マーケティングのあり方や、弊社が独自に開発したマーケティングオートメーション(MA)ツール『スマートUX』の導入事例などについてお話をさせて頂きました。

コロナで変わる旅行者意識の変化

まずは新型コロナウィルス感染拡大によって旅行者の意識の変化について。

株式会社JTBの調査によると、外出自粛や渡航制限が解除されたらやりたい事として、国内旅行や外食という意見が多い一方で、そうした旅行や外食にかける費用については、「支出を減らしたい」と考える人が1年前の調査に比べて大きく増えています。Go Toキャンペーンが実施されると、多くの人が旅行や外食に出かけ始めた背景にも、こうした意識の変化があると考えられます。

気温の低下と共に、国内でも感染者数が増え始め、経済活動にもブレーキがかかるなど、まだまだ先行きが不透明である中、本当に行きたい場所はどこか、そこに行ってどのような経験が出来るのかをしっかり吟味して旅行先を選ぶ人が多くなるだろう、ということが想像できます。このことから、旅行者に選んでもらえる観光地・観光スポットになるためには、旅行者が求める情報/コンテンツを理解した上で、きちんと提供することが重要なポイントになります。

観光需要の回復時期については、色々な予測・意見が出されていますが、今のところ、本格的な観光需要の回復は、2021年の秋頃になるだろうという見方が多いようです。その場合、多くの人が秋以降の旅行の計画を始めるであろう来年の夏くらいまでには、観光情報サイトを整備しておく必要がある訳ですが、基本戦略の策定や設計〜デザイン・開発・構築に要する期間を考えると、そろそろプランニングをスタートしておく必要があるでしょう

観光デジタルマーケティングにおける重要な要素

観光情報デジタルマーケティングを考える上で、大切な要素は以下の3つになりますが、中で最も重要なのはコンテンツであるといいます。

1.コンテンツ

2.データ

3.プラットフォーム

ここからは、ルグランが設計〜デザイン・構築のお手伝いをさせて頂いた奈良県の吉野ビジターズビューロー様の多言語観光情報サイト『よしのーと!』の事例も交えてご紹介します。

デジタルマーケティングに携わる方であれば、「CONTENT IS KING」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。コンテンツが重視される理由は色々ありますが、特に、以下のような観点から、コンテンツは重要な役割を果たすと考えられています。

・トラフィックの獲得 (SEO)

・ファンの獲得 (エンゲージメント)

・顧客・ユーザーの獲得 (コンバージョン)

観光情報サイトを構築する場合、「私たちの地域にはこんなに魅力のある場所がたくさんありますよ!」ということをアピールしたいがために、たくさんのコンテンツが用意されます。そうしたコンテンツを見た人は、その観光地のファンになったり、実際に旅行に行ってみたいと思ったりするかもしれません。

一方で、忘れられがちなのが、「良質なトラフィックを獲得するための手段」としてのコンテンツの役割です。

多くの旅行者が観光情報を収集する際、検索エンジンは重要な起点となります。しかし、検索結果の上位に観光情報サイトが表示されるかどうかは、検索されたキーワードに合致した良質かつオリジナルなコンテンツがどのくらいあるかで決まると考えられています。そこで重要になるのは、

・誰をターゲットにして情報を提供するのか?

・そのターゲットが興味・関心を持って探していることは何なのか?

という2つをきちんと調査・理解した上で、旅行者の興味・関心に即したコンテンツを創るということです。

しかし、現実には「観光地をアピールしたい」という「作り手」側の都合だけでコンテンツが創られてしまうことも多く、その結果、旅行者が探したい情報が乏しいため、検索結果の上位に表示されることもなく、閑古鳥が鳴いている観光情報サイトが生まれて続けています。実際、観光情報サイトの検索エンジン対策は、他の業種・業界と比べても、非常に遅れている印象があります。

例えば「温泉」や「キャンプ」で検索すると、検索結果の上位にWikipediaの情報ページが出てきます。これは、検索エンジンが、そうしたキーワードに関連する情報が充実しているサイトが少ないため、(仕方なく)Wikipediaを上位に持ってきていると考えられています。見方を変えれば、そうしたキーワードに対し、良いコンテンツをあてて行けば、観光情報サイトが検索結果の上位に表示される可能性も高まります。

一例を挙げると、「グランピング」で検索すると検索結果の上位に星野リゾートさんのコンテンツが表示されています。これは、「グランピング」というキーワードで探している人を呼び込むためのコンテンツづくりが出来ているということであり、実際に見てみると、星野リゾートさんのサイトには、自社の宣伝だけでなく、グランピングの楽しみ方というような、旅行者が求める情報も掲載されています。

『よしのーと!』の構築にあたっては、プロジェクトを始めるにあたり、クライアントである吉野ビジターズビューロー様との間で、「旅行者が求める情報は何か」を基準に考える「旅行者ファースト」を基本方針にするという合意を行いました。また、「旅行者ファースト」を実現するためには、旅行者の興味・関心がどこにあるのかを理解する必要があるということで、アンド・ディ社が日本や欧米・アジアで日本への旅行に興味・関心のある消費者を対象に、定量・定性調査を行いました。

その調査結果から洗い出された旅行者の興味・関心をコンテンツ制作者と共有することで、「旅行者ファースト」のコンテンツを創ることが可能となり、この結果、サイトの公開からまだ半年間でありますが、「吉野」という地名からの検索だけでなく、地名検索以外からのキーワードでも、『よしのーと!』は検索結果の上位に表示され、まだ吉野を知らない、あるいは興味を持っていない人にも吉野の魅力を伝えるという目的が果たされています。

コロナ時代のコンテンツプランニング

さらに、このポストコロナ時代に求められるコンテンツ戦略として大切なのは、コロナ対策であると言います。これは、本年6月に行ったモーニングセミナー『コロナ時代のSEO & コンテンツマーケティング〜米国からの最新報告〜』でも触れていますが、Googleの検索アルゴリズムも、コロナ時代のニューノーマルに対応しており、例えば飲食店を検索すると、イートインやテイクアウトの可否も検索結果の一部として表示されるようになりました。感染症対策に関する情報が求められるいま、観光情報サイトにおいても、そうした情報をきちんと盛り込んでいくことは、コロナ時代の「旅行者ファースト」を実現する上で、とても大切なことです。

なお、ルグランでも、取り組みとして、店舗や施設に二酸化炭素濃度を測定できるIoTセンサーを設置し、データにもとづいて適切なタイミングで換気を促すサービス「seeO2now」を開発し、東京都と愛媛で実施している実証実験に続き、12月初めからは、全国の店舗・施設で利用できるようサービスの提供を開始する予定です。本サービスの詳細・設置店舗/施設の申込はこちら

「旅行者ファースト」を実現するプラットフォームについて

最後は制作したコンテンツを効果的に表示するために必要となるプラットフォームについて。

『よしのーと!』プロジェクトの冒頭で実施した調査結果をみると「吉野でやってみたいこと」や「訪れたい場所」は、実は、国によってバラバラであることが分かりました。こうなると、単にコンテンツを翻訳するだけでは不充分であり、来訪者の国籍・言語によって、それぞれ興味・関心の高いコンテンツを優先的に表示される仕組み=プラットフォームが必要になります。

とはいえ、本プロジェクトにおいて、高額なマーケティングオートメーションツールを実装することは難しく、また、仮にそうしたツールを導入したとしても、『よしのーと!』は新たに作られるサイトで、パーソナライズに使えるデータも限られることから、弊社が独自に開発したマーケティングオートメーションツール「スマートUX」を実装することとにしました。

「スマートUX」は「シナリオ設計・データ連携も不要で、ユーザーファーストが簡単に実現できるMAツール」というコンセプトで開発された、特許も取得している新しいマーケティングオートメーションツールとなりますが、その特長は以下の通りです。

1.Google Analyticsのデータを自動集計

・GAのデータを活用するので外部DBなどとのデータ連携が不要

・ページビューや滞在時間・離脱率・売上貢献など、GAで取得可能なデータによる最適化が可能

2.面倒なシナリオ設計が不要

・来訪・閲覧したユーザーの「投票結果」を自動的にサイトに反映させるというコンセプト

・コンテンツの表示順やレイアウトの最適化に特化したシンプルな機能

3.WordPressのプラグイン+テンプレートで簡単実装

・全世界のサイトの38%(CMSシェアは64%)に採用されているWordPressに対応

・人気の集中度(ジニ係数)に応じて自動的にレイアウトが変わるテンプレートも提供

4.小規模サイトでも導入しやすい価格設定

・初期費用なし、月々19,800円から(消費税別)

・お試しキャンペーン実施中!(実装から2ヶ月間は無料)

『よしのーと!』では、来訪者が使用する言語によって、人気のコンテンツを上位に表示したり、大きく表示されるよう自動的にレイアウトを変更したりするためにスマートUXを活用しています。ブログサイトにおいては、離脱が少ないコンテンツ順に並び替えをしたり、ECサイトであれば、売上貢献の多いコンテンツを上部に表示させるといったことも可能になります。

スマートUXの詳細はこちら

なお、今回のセミナーに参加できなかった方のために、12/17(木)に、改めて、オンラインセミナーを開催します。ご興味のある方はぜひご参加ください。

<開催概要>

開催日:2020年12月17日(木)8:00~8:50

参加費:無料

視聴方法:Zoomでのオンライン配信

お申込はこちら



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