先週も本ブログでお伝えしましたが、今週から、サンフランシスコで開催されているUX WEEK 2016 というイベントに参加しています。
会場となっているハイアットリージェンシーホテルは、サンフランシスコの「ファイナンシャルディストリクト」、日本でいうと、丸の内のような金融街の中心にあります。今のサンフランシスコの気温は、日中でも17℃前後で、夜はレザージャケットが無いと寒いくらいですが、猛暑の東京を逃れ、ちょっとした避暑気分で、快適に過ごしています。
<UX WEEK 2016の会場:Hyatt Regency San Francisco>
初日には、4日間のイベントの方向性を参加者に示す、本当の意味での「基調講演」が行われますが、いくつかの講演を通して発信されたメッセージは、
“You are not your users.”
つまり、『あなた自身は、あなたが提供しようとする製品やサービス・技術を必要とするユーザーではないのだ』ということを認識することから始めよう、ということに集約できそうです。
“利用者のニーズや感情を顧みることができない人たちによって、製品・サービスあるいは技術が設計・開発されるとき、そこに最悪のUXが生み出される”
そうならないようにするためには、作り手(Producer)は、常に、使い手(User)の視点を忘れないことが大切です。
これは、一見、簡単なように聞こえますが、多くの企業は、目先の売上や利益を追いたいという「誘惑」に負けて、いつのまにか、「一人よがり」な製品やサービス・技術が、次々と生み出されることになります。
その結果、中長期的にみれば、そうした企業の多くは、顧客を失っていくことになる訳ですが、そうした企業があまりに多いために、私たちは、ひどいUXデザインに囲まれて暮らすことが避けられない、という訳です。(苦笑)
このような状況に警鐘を鳴らしたのが、初日の最後に登壇したアラン・クーパー氏。彼は、Visual Basicの生みの親としても知られる一方、「ペルソナ」という考え方を生み出したUXデザインの先駆者でもあります。
<登壇したアラン・クーパー氏>
クーパー氏は、小さな牧場を経営していますが、大規模経営の農家も、大手のIT/ソフトウェア会社も、売上を追うあまり、創業の理念や顧客を忘れているという点では、共通することが多いと言います。
今日、多くのソフトウェアは、金儲けのために、工場で大量に生産される「工業製品」のようになってしまっている。ただ、その背景には、たとえば、株式投資で一儲けしたいと考える「私たち」にも責任の一端があると、クーパー氏は指摘します。
一方で、クーパー氏は、人々が金銭的に豊かになることを否定している訳ではありません。ただ、今後、ソフトウェアの開発に携わる人たちは、お金のためではなく、本当に人のためになるツールやサービスを開発しようじゃないか。
クーパー氏が、こう結んで講演を終えると、参加者は、スタンディングオベーションで大きな拍手を送っていました。
ちょっと感動的な幕開けとなったUX WEEK 2016ですが、その他の講演やワークショップの内容についても、本ブログで、順次、ご紹介をしていきますので、どうぞ、お楽しみに。
ところで、先日もご紹介しましたが、ルグランでは、来たる8/23(火)に、UXをテーマにしたセミナーを開催します。
当日は、弊社代表 泉とパナソニック株式会社 東京オリンピック・パラリンピック推進本部・原口氏による、2020年に向けた空港のUX改善をテーマに、キーノートディスカッションを行います。UX WEEK 2016からの最新情報もご紹介できる予定ですので、よろしければ、ぜひ、ご参加下さい。
<セミナーの詳細やお申込みは、こちらから。>
CNET Japan Marketers’ Conference 2016『あらゆる接点で通用するユーザーエクスペリエンス創造手法』
主 催:朝日インタラクティブ株式会社(CNET Japan)
日 時:2016年8月23日(火)14:30開場・15:00開演
参加費:無料
定 員:50名
場 所:dots.(渋谷区宇田川町20-17)
URL: http://japan.cnet.com/info/event/customer-experience/201608/